東日本大震災から一年が経過して
〜復興より先に、やるべきことはない
萬歳 章(JA全中会長)
東日本大震災の発生から一年が経過いたしますが、被災されました皆様に、あらためて心よりお見舞い申し上げます。
震災によりご家族や親しい方を亡くされた皆様、あるいは、現在も多くの方が行方不明となっておりますが、そのご家族・身内の皆様にとって、言葉ではいい尽くすことができない一年を過ごされてきたものと推察いたします。
東日本大震災は、地震・津波による未曾有の被害に加え、福島第一原子力発電所の事故災害により、原発周辺地域では、村や町ごと避難・退避を余儀なくされるなど、災害が幾重にも重なり、これまで誰も経験したことのない深刻な状況を発生させることとなりました。
被災地では、農地や農業施設の復旧のみならず、がれきの撤去も十分には進まず、被災された方々の働き口も確保されていないなど、被災者の焦りや疲労は、極めて深刻な状況になっています。
これまで何度も繰り返してきましたが、あらためて、我が国が最優先に取り組むべき課題は、原発事故の収束を含めた東日本大震災からの復旧・復興をおいてはほかにないことを、国民全体で共有する必要があることを強く訴えたいと思います。
JAグループでは、震災発生直後から、物的・人的な支援をはじめ、さまざまな支援活動を行ってきました。
震災発生直後は、地震・津波の被害の大きかった岩手県・宮城県・福島県の各JAグループに対し、それぞれ隣接する秋田県・山形県・新潟県のJAグループが一対一で積極的な支援を行ってきました。また、全国各地のJAグループからも、さまざまな物資の支援が行われました。
人的支援の取り組みとしては、津波被害の大きかった地域に、全国のJAグループ役職員を派遣し、農地や農業施設のがれき・ヘドロの撤去や復旧作業にあたったことは、被災農業者を力強く励ますものとして、被災地から大いに感謝をされてきたところです。
募金・義援金の取り組みも組織をあげて行われ、全国のJAグループ役職員から寄せられた募金15億、それとは別にJAグループで分担して拠出した義援金が100億円と、かつてない規模の取り組みとなりました。このほかにも、経済事業、共済事業、信用事業、厚生事業など、JAグループの各事業において、その特性を活かした継続的な支援を行ってきました。
このような多様な支援活動が全国のJAグループ組織をあげて行うことができたのは、これまで培ってきた「協同の力」を発揮し、「相互扶助」を実践できたからにほかなりません。
東日本大震災は、それまでの経済効率性偏重の考え方から、人と人のつながり、「絆」や「協同」の重要性、さらには「ふるさと」のかけがえのなさを見直す契機となりました。
いみじくも、今年2012年は、国連が定めた国際協同組合年にあたります。従来から、国連は協同組合の役割について、高く評価していましたが、リーマン・ショック以降の金融危機に際し、協同組合セクターが他の企業体等に比べ、早期に態勢の立て直しを図り回復に向かっていったことが、協同組合に対する国連の評価を一層高めることにつながったと言われています。
危機に際して発揮される協同の力という点で、東日本大震災においてJAグループはじめ我が国の協同組合が果たした役割も、同様に高く評価されるものと考えております。
このように、世界全体が効率性重視から人と人の「絆」、「協同の力」を再評価する機運が高まっている中で、そうした流れに真っ向から逆行するにも関わらず、昨年9月、野田総理はTPP(環太平洋連携協定)参加に向け、関係国との協議に入ることを表明しました。
TPPが掲げるのは、「例外なき関税撤廃」であり、市場原理の徹底にほかなりません。関税が撤廃された場合、我が国の農業は壊滅的な打撃を受け、現在39%と主要先進国中最低レベルの食料自給率は、さらに13%まで低下するとの試算がなされています。
被災地では、もし日本がTPPに参加するようなことになれば、農業経営が成り立たないことから、被災農業者が営農再開に向けた取り組みを躊躇しているとの話も聞かれます。
まさに、TPP交渉に向けた検討をすること自体が、被災地の復旧・復興の妨げとなっているのです。
昨年10月末には世界の人口が70億人を突破し、飢餓人口の増加や食料安全保障の問題が懸念されるなか、国民の命をつなぐ食料を、自国でまかなうことこそ主権国家としての責務であると考えます。「農は国の基」であることを、いま一度、国民各層に対し、愚直に訴えていくことが関係者に求められています。さらに、TPPへの参加は、農業の問題にとどまらず、我が国の経済・国民生活に取り返しの付かない禍根を残しかねないものです。
TPP交渉は、アメリカ合衆国が主導的役割を果たしていると見られていますが、先にアメリカと韓国との間で締結された米韓FTAは、韓国の経済や国民生活にとって、極めて深刻な影響を及ぼす可能性が高いことが、JA全中の委託研究により明らかとなっています。
すでに、日本医師会はじめ医療関係者は、TPPに参加した場合、国民皆保険制度など国民生活に直結する医療・社会保障制度が崩壊しかねないとの警鐘を鳴らしています。
TPP参加は、人と人の絆や協同、ふるさとのかけがえのなさに、真っ向から反するものといわざるをえません。JAグループは、引き続きTPP交渉参加阻止に向け、各界各層と連携し、広範な運動を展開してまいります。
そして、東日本大震災からの復旧・復興が何よりも優先されるべきであるとの思いを国民各層と共有し、被災地農業の復旧・復興、被災農業者の営農の再開や経営の立て直しに尽力していくことをお約束いたします。
平成24年3月
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