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国際農業・食料レター
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2002年2月(Y81)
全国農業協同組合中央会
〜新たな環境変化のもと、共通農業政策の見直しをめざすEU
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EU 域内15 カ国の共通農業政策(CAP)は、2000 年より実施された改革(アジェンダ
2000)により、これまでの国内価格支持の水準引き下げとこれに連動する輸出補助金の抑 制、生産調整を条件とする農家への直接支払(青の政策)へ、大きく政策を転換してきた。
その結果、10 年前の1991 年はCAP 予算のうち価格支持・輸出補助金など「価格関連支払」 が全体の91
%を占めていたが、2001 年現在、同割合が28 %と激減。 一方、「(価格と連動 しない)農家への直接支払」の割合が10
年前の同9 %から現在は62 %を占めるまでに至っ ている。
この現行CAP について、今後いっそうの変革をせまる要因がある。 一つは、2004 年に 第1 次統合(6
ヶ国)が予定される東欧諸国のEU 加盟、そしてもう一つはドイツを中心 に強まる「農業政策から地域政策へ」の抜本的な政策転換を求める動きである。
こうした なか、EU では本年中に「アジェンダ2000 」の中間レビュー(中間見直し)が行われるこ
とになっている。 「アジェンダ2000 」は、2006 年まで適用されることが決定済みであり、 中間レビューで抜本的な見直しが行われる可能性は、手続き面・予算面でも難しいと考え
られているが、一方で今回見直しが行われる部分は、将来のEU 農政を展望するうえで重 要である。 とくに、東欧諸国加盟や、ドイツ等の新たな農政改革の主張が、中間レビュー
のなかでどのように関連づけられ、影響を与えるかは要注目である。
<東欧諸国の加盟条件として、EU 政府は段階的な農家直接支払いを提案>
東欧諸国10 カ国のEU 加盟条件にあたり最も関心事項の高い農業分野について、1
月30 日、EU 委員会が第1 次提案を発表した。 同案は、加盟予定国が強く求めていた農家直接 支払いの「加盟後すみやかな100
%支払」ではなく、加盟初年度の2004 年は現加盟国水準 の25 %からスタートし、10 年間で段階的に増額しながら、2013
年に100 %水準にするとい うもの。 これは、初年度からCAP 政策を全面適用すれば、生産性の低い小規模農家が大
部分を占める東欧諸国の農業がそのまま残り、構造改革・生産性向上が妨げられるおそれがあるためである。
EU 委員会案は、こうした直接支払い(面積を基準とする支払)に加 え、「半自給自足農家」を商業農家へ転換するための追加支払プログラム、さらに「地域
振興」支払プログラムを用意している。 特に「地域振興」支援については、環境保全型農 業、生産者の組織化、早期離農、技術支援などの各種プログラムについてCAP
予算から 最大80 %を負担(残りは各国政府の負担)、現行加盟国と比べ5 割増の水準でこれを支援 するというものである。
直接支払いについては段階的な適用としつつ、東欧諸国のそれぞ れの実情に応じた構造改革を個別にすすめられるような選択的・追加的な支援を用意した
提案となっている。
ただし、このEU 委員会提案については、さっそくポーランド、ハンガリーなど東欧諸 国から「あまりに少ない水準、あまりに長い移行期間である」として反対が表明された。
また、現行EU 加盟15 カ国にとっても、EU 予算の過半、約400 億ユーロ(4 兆6 千億円)
にのぼる農業予算の将来方向を決める重要課題であり、最終的な加盟条件については予断 を許さない状況である。
ところで、EU 農業予算をめぐる議論については「誰が農業予算を多く受け取り、誰が
多く負担しているか」を見ると各国の利害がより明確になる。 (下図参照)
[ EU 予算をめぐる現行加盟国・新加盟国の負担・受益関係]
(単位:百万ユーロ。 ( )数値は現行EU 加盟15 ヶ国中の順位、○数値は拡大EU27
ヶ国中の順位)
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<1>EU 予算受取額
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うち農業予算受取額
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うち農業予算受取額
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<1>−<2>差引額
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ドイツ
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9,419(3)
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6,694(2)
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21,618(1)
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▲12,199(15)
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フランス
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10,993(1)
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9,642(1)
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14,594(2)
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▲3,601(12)
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スペイン
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9,753(2)
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4,790(3)
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5,852(5)
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3,901(1)
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イタリア
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7,665(4)
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4,485(4)
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11,967(4)
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▲4,302(13)
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英国
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5,900(5)
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4,307(5)
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14,088(3)
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▲8,188(14)
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ポーランド
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11,682 @
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5,603 B
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1,904 J
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9,778 @
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ハンガリー
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3,598 H
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1,780 I
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574 Q
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3,024 D
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ルーマニア
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5,111 F
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4,241 F
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588 P
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4,523 A
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数値は現行EU 政策が継続した場合の2007
年予測。 ドイツ経済調査研究所(DIW)資料をもとに作成。
EU 財政の構図は、基本的には「豊かな国から貧しい国への所得移転」「現行加盟国か
ら新規加盟国への所得移転」といえるが、EU 予算に占める農業の比重の大きさから、 「非農業国から農業国への所得移転」という見方もできる。
したがって、農業分野で持ち 出しの多い国、すなわちドイツや英国などに対し、農業分野で受取りが多いフランス、ス
ペイン等のCAP 改革に対する考え方は異なるであろうし、さらに、人口の18 %が農業従事者であり、拡大EU
で最大の受益国となるポーランドなど東欧諸国の意向も異なるのは 自然である。
<「地域振興の拡充」が改革の目玉となる可能性>
フィシュラーEU 農業担当委員の最近の発言や、東欧諸国の加盟にかかる農業計画から
推測すれば、中間レビューにおける改革の目玉の一つとなりそうなのが「地域振興」プロ グラムの拡充である。
具体的には、(価格や生産と関連しない)条件不利地域への補償、 環境保全・景観保全への支援、農村地域の基盤整備や雇用促進などへの支援などがこれに
あたり、現在もCAP 予算の10 %程度を占めている。
この「地域振興」の拡充をめぐり、注目されるのがドイツの動きである。 ドイツ政府は、 これまで伝統的に農業を重視し、生産や価格への直接関与を支持してきたが、98
年から社 会民主・「緑の党」による左派連合政権のもとで、その姿勢を転換してきている。 都市住 民を支持基盤とする「緑の党」の影響を強く受けた現ドイツ政権は、農政改革の方向とし
て「農業生産に関連する支持の引き下げ」「環境保全対策、地域振興政策への転換」「輸出 補助金の廃止」などを主張しており、これらが中間レビューにおけるドイツ提案となる可能性がある。
一方、フランスは、「地域振興」政策の重要性は認めつつも、「生産に関わる国内支持」 「市場への関与」「輸出補助金」など、基本的には現行CAP
政策の維持を支持している。 昨年11月のWTO ドーハ会議において、フランスが「輸出補助金の撤廃」という閣僚宣言
文に最後まで反対し、全体会議の失敗も辞さないとの強硬姿勢を貫いたのは記憶に新しい。
ドイツ・フランスは、EU 内で最も影響力をもつ加盟国であり、またアジェンダ2000 や ガット・ウルグアイラウンドなど農政改革の重要な節目には「ドイツ・フランス連合」と
して一致団結し意思決定を行ってきた。 その両国の主張が、最近は明らかに齟齬をきたし はじめており、これがCAP
改革へどう影響を与えるのか要注目である。
<10 月のドイツ議会選挙の結果がCAP 改革へ影響>
こうしたなか、本年4 月にフランス大統領選挙が、そして10 月にはドイツ議会選挙が行
われる。 フランス大統領選挙は、保守シラク現大統領と社会党内閣のジョスパン現首相の 一騎打ちが有力視されているが、関係者の多くは、農業政策については両者にさほど違いはなく、フランスの姿勢に大きな変更はないだろうと見ている。
むしろ、フランスよりも、 ドイツ議会選挙で「緑の党」がどの程度支持を集め、選挙後どれだけの影響力を持つかの
方が、よりCAP 中間レビューの方向を左右するとみられている。
なお、EU の「地域振興」政策は、ヨーロッパに多様な農業モデルが存在することに着
目し、それぞれの実態に応じた柔軟な対策を講じること、また「農業の多面的機能」を認 識し、これらを維持するためにかかる追加コストを支援するものといえる。
また、これら の国内支持政策は、WTO ルールにおける「緑の箱」を念頭に置いたものでもあり、貿易 わい曲型補助金を減らし、WTO
新交渉を有利にすすめたいというEU の思惑も読み取れ る。 「多面的機能グループ」の一員であるわが国にとっても、注目すべき動きである。
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