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若者がみつめる食・農

農・食の未来を拓く高校生・大学生の研究

先端技術で京都の酪農の未来を切り開く

~京都府立農芸高校 「スマート農業」と「ゲノム解析」の普及活動班の挑戦~
JA全中

「全国高校生 農業アクション大賞」について
 
 JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
 農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」を贈ります。

準大賞
京都府立農芸高校 「スマート農業」と「ゲノム解析」の普及活動班

 京都府の酪農家は、1970 年の1,249戸から50年で47戸に減りました。牛の生理機能を優先した不規則な生活や、重労働が敬遠されています。一方で、1戸当たりの飼育頭数は増え続けており、作業時間の増加を招く結果につながっています。「このままでは継ぐ人がますます減り、京都から酪農がなくなってしまう」。スタートは、生徒らが抱いたこの危機感でした。
 「スマート農業」の技法で牛の飼育管理情報をデータ化することが、酪農の未来を描く第一歩だと考えました。
 酪農経営のカギは、「発情」の見逃しを減らし、繁殖成績を上げることにあります。まず、経産牛の首にセンサーを取り付け、牛の行動をリアルタイムにデータ化。AI(人工知能)が発情を判断することで、適期に人工授精ができる態勢を整えました。生徒らは端末を使って常時、飼育中の40頭の行動を管理しています。
 乳量・乳成分・繁殖記録などを分析し、繁殖成績の改善につなぐ「牛群検定」にも効果を上げました。分娩ぶんべん時には予定日7日前に体温センサーを挿入、1次破水が起きた時には「駆けつけ通報」がスマホに届きます。いわば、「牛からメールが届く」感覚です。このシステムで、計69頭が生まれました。
 こうした「行動モニタリングシステム」の活用によって、人による観察では難しかった微弱な発情兆候や初回発情の発見率が向上し、分娩間隔と空体日数の短縮につながりました。
 もう一本の柱はゲノム(遺伝子情報)解析です。乳量・乳脂量・体形面で優れた遺伝子を導入することで、生涯生産性の高い牛の確保が実現します。指数上位25%の乳牛に後継ぎになる牛を産ませ、同時に、同50%の乳牛は借り腹で黒毛和牛を産ませました。子牛せり市場に4頭を出荷した際の販売合計価格は約318万円。4頭の生産費約160万円を引いた実収益は約158万円です。安定した収益が見込めます。
 地域の酪農経営の改善には、情報発信が必要です。畜産部の公式インスタグラムを開設したほか、NTTドコモとの提携で「牛のお尻と話すプロジェクト」をスタート。全国の約100人の生産者とのリモート会議を行いました。また、JA京都畜産酪農センターや京都府農林水産技術センターとの連携で、ハイゲノム受精卵を生産者に配布。京都の生産基盤強化に向けた動きも本格化しています。

タブレットで牛の状況を細かく確認

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