地域農業47色
第1回 食料供給基地「北海道」の持続的な発展に全力を注ぐ
JAグループ北海道の取り組み
①北海道農業・農畜産物ファンづくり
■取り組み概要
JAグループ北海道は道内の皆さんに食料・農業・農村やJAへの理解を深めてもらおうと細やかな情報発信に力を入れています。その一つが地元の民放で毎週土曜の夕方に放送している「あぐり王国北海道NEXT」です。俳優の大泉洋さんや安田顕さんらが所属する人気の演劇ユニット「チームナックス」でリーダーを務める森崎博之さんを起用し、局のアナウンサーと共に生産現場を訪れ、見て、聞いて、体験して北海道農業を楽しく学ぶ機会につなげています。農業という仕事だけでなく生き方を教えてくれるのも特徴です。JAグループ北海道が単独で提供する30分間の番組は全国的にも珍しく、今年7月に15周年を迎えました。
■JA北海道中央会の樽井功会長より
幅広い年代の皆さんに地元の農業を理解してもらおうと乗り出したきっかけが2006年に開いた「第25回JA北海道大会」でした。食料・農業・農村とJAの理解促進を一層図っていくことを決め、08年4月に本格的に始動、番組の提供を始めたのもその一環です。
番組は、テレビ局とJA北海道中央会がそれぞれアイデアを出し合って取材先を選定し、現地で生産者を追いかけます。印象に残っているのは、収穫前の土に生えているアスパラガスを、北海道農業の応援団長である森崎さんが圃場に顔を近づけて穂先から食べるシーンです。俳優ならではの見せ方だと感心しました。舞台でも農業をテーマに取り上げ、番組を超えた情報を発信してくれており心強いです。また「あぐりっこ」(番組の中で北海道農業について一緒に学ぶ小学生)の経験者が就職先としてJA・農業分野を選んでくれるケースも出始めています。
15周年の節目を迎えた番組はさらに進化、北海道農業の魅力を発信していくためにリニューアルし、テレビ番組の配信サービス「TVer(ティーバー)」でも視聴できます。全国の皆さんにもぜひご覧いただき、北海道の農業をあらためて知ってもらうのはもちろん、身近な農業に関心を高めてもらうきっかけになればと思います。
▼「TVer」はこちらから▼
②日本の食料供給基地としての機能発揮
■取り組み概要
国内の耕地面積の約4割を占める広大な農地を生かした北海道の農業は、稲作や畑作、酪農など土地利用型の農業を展開、家族経営を中心とした大規模農業を進め、安全・安心な農畜産物を安定供給し、国内の食料自給率や国土・環境の保全などに貢献しています。気象や立地条件などが地域によって異なることから特色ある農業経営の実現にも至っています。北海道の食料自給率は2019年度の時点で、カロリーベースで全国一となる216%(令和元年度確定値)、生産量を見ても小麦やジャガイモ、砂糖の原料となるテンサイ、生乳など多くの品目が全国トップを占めており、食料安全保障に果たす大きな役割を担っています。
日本の食料供給基地である北海道において、全国各地に農畜産物を届ける役割を担う中、今後、大きくのしかかってくるのが物流問題です。北海道はご存じの通り本州と陸路でつながっていないため、JR貨物やトラックなどを載せるカーフェリー、海上コンテナなどを使って出荷しており、物流の制約を受けているのが実態です。
物流問題は大きく2つの課題と懸念があります。一つが働き方改革の一環として2024年度に適用されるトラックドライバーの時間外労働の上限規制です。もう一つは北海道新幹線の札幌延伸に伴う貨物鉄道輸送の在り方です。目前に迫る来年度、深刻化するドライバー不足に加え、時間外労働の上限規制の適用により輸送が滞ってしまい出荷できない事態が各地で発生してしまったらどうなるのでしょうか。これは北海道にとどまらず全国の問題です。
輸送力の確保へ向けて、産地と消費地の協力を得て物流の効率化と改善に努めなければならないのは事実です。一方で、大動脈である鉄道の維持を基本とした流通体制の構築を軸に万全な物流体制を築いてもらわなければなりません。JAグループが進める「国消国産」を維持・継続させるためにも重要です。
■樽井会長より
食料生産を巡っては、温暖化による気候変動に加え、ロシアのウクライナ侵攻による生産資材の高騰など、世界的に不安定な状況が続いています。こうした状況を受けJAグループ北海道は昨年12月、国内外から需要が期待される食料に加え、自給飼料などを安定して生産・供給するとともに環境負荷を減らす取り組みを進めていくことをあらためて確認しました。日本の食料供給基地として持続可能な農業を進めていくためにはもともと、その土地が持つ特徴を変えずに生かしていくべきではないでしょうか。そこで品質を落とさずに収量を上げることで、よりもうかる仕組みとすることが重要です。機能性などの付加価値のある農畜産物を生産しデザインを含めた見せ方を工夫するなど北海道ブランドを一層確立していかなければならないと感じています。実現に向けては国などによる力強い生産支援は欠かせません。政策提案など農政運動にも引き続き力を入れていきます。
物流問題は、組合員にとどまらず消費者にも「自分事」として捉えてもらうべきです。広く理解を進め、賛同を得て進めるべき課題であり、対話の工夫が一層求められます。
全国のJAグループに伝えたいことについて樽井会長に伺いました
JAグループ北海道は、組合員との対話に熱心に取り組んできました。2021年開催の「第30回JA北海道大会」では、組合員の農業所得の増大とJA収支の安定・確保の実現に向けて組合員との対話を重ね、その成果を実践することを基本目標に掲げました。出身のJAひがしかわでは、持続可能な農業の実現を目指す「ひがしかわアグリ2050宣言」を昨年6月に打ち出すまでに、日常的な組合員とのつながりの中で意思疎通を図り、価値観と課題意識を共有することに努めました。宣言の考え方を組合員に説明した際に一部、戸惑いの声もあったのですが、地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)らを中心にした職員と組合員の日常的な対話を通じた信頼の積み重ねにより理解してもらいました。
JAと組合員の対話のみならず、消費者とも対話をしっかりと行い、食料安全保障、国消国産の必要性について理解を求め、消費者の行動変容を期待します。