地域農業47色
第21回 地産地消推進で地域農業を活性化/インフルエンサーの協力で理解促進
JAグループ広島の取り組み
① 地産地消推進で地域農業を活性化
■取り組み概要
広島県では、北部の高冷地から沿岸の島しょ部までに至る多様な自然条件を生かした農業生産に取り組んでいます。広島市や福山市といった大消費地を抱える中、地産池消の推進による地域農業の活性化を目指しています。
■JA広島中央会の吉川清二会長より
日本の縮図とも言われる広島県は中山間地が多く、生産者の高齢化や担い手不足も進み、圃(ほ)場整備した農地でさえ遊休化が進んでいる実態もあり、有害鳥獣の被害にも悩まされている地域です。条件の良い平場が少なく、少量多品目の生産が盛んである広島県の食料自給率は、直近10年では20%台で推移しています。こうした状況を踏まえ、県は2011年、地産地消を推進する条例を制定しました。県や生産者、事業者、県民の役割をそれぞれ定めてまずは県産農畜産物の県内消費を進め、地域の農林水産業を活性化するのが狙いです。
地産地消の核となるのが産直市です。生産者は、各JAやJA全農ひろしまが展開する産直市で豊かな自然条件の中で育まれた多彩な農産物や加工品を販売しています。農産物の中には、わけぎ、くわい、レモン、はっさくなど全国的に生産量が多いものもあり、かんきつ類の加工品では大ヒット商品も生まれています。販売にとどまらず、消費者へのPRや交流拠点としても欠かせない場所です。
行政と連携した取り組みも進めています。2007年には広島県、JA広島中央会、JA全農ひろしまで、「ひろしま地産地消推進協議会」を設立し、県産農畜産物のPRを通じて生産者を応援してもらう活動等を重ねています。今年度は「ひろしま地産地消ハンドブック2024」を作製し、県内すべての小・中学校や農業関係の教育機関などに配布するとともに、「地産地消ファンクラブ」のサイトに共有、だれでもダウンロードして見てもらえるようにするなど日ごろから地域農業や食への理解促進に努めています。
この他、県内で開かれる食のイベントへの出展も、PRの重要な機会です。そのひとつが毎秋恒例の「ひろしまフードフェスティバル」です。県内最大級の食のイベントで、今年は10月26、27日の両日に開かれました。JAグループ広島は「地産地消村」を展開し、広島県産の新鮮野菜を中心にそろえた産直市をはじめ、県内の農業関係高校や食農関連を学ぶ大学等にも参加してもらいブースでPR。JAグループ広島が進める「地産地消」や「国消国産」、農畜産物の適正な価格形成の重要性を広く知ってもらおうと参加型プログラムなども盛り込み、来場者に分かりやすく伝える工夫をしました。
② インフルエンサーの協力で理解促進も
■取り組み概要
JAグループ広島は、食料・農業、これらを支えるJAグループ広島への県民理解の醸成に向け、広島県にゆかりのある発信力の高い著名人(インフルエンサー)との連携による情報発信を進めています。また、YouTubeチャンネルやInstagramなどを開設し、次代を担う若者層の関心を高める工夫をしています。
■吉川清二会長より
SNSは情報発信に欠かせない時代です。栽培した農産物をSNSで発信して宣伝する生産者も増えました。JAグループ広島は、消費者理解を一層進めるためにインフルエンサーの協力を得た取り組みに力を入れています。
その1人が、広島県呉市の農家出身で声優・アーティストのMachicoさんです。食や農の大切さを若い世代を中心に伝えてもらうために、JAグループ広島の「地産地消」デリシャス大使としても活動、YouTubeのJAグループ広島公式チャンネルなどを通じて昨年から情報を発信してもらっています。昨年は、広島県で主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開催されたことに合わせて、広島県の農畜産物をD7(デリシャスセブン「野菜」「果物」「米」「肉・卵」「牛乳・ジュース」「酒」「花」)と名付け、紹介する動画を配信しました。分かりやすい内容で、特に女性からの支持が大きかったのではないかとみています。
今年も「国消国産の日」の10月16日から新たな動画の配信をスタート、国消国産月間の11月末までの期間中、適正価格に関する生産者へのインタビューや農業の多面的機能、広島県をはじめ国内の食が直面する課題などをテーマにした動画を配信中です。
YouTubeチャンネルのほかにも今年はInstagramを活用した動画企画も展開しています。連合会のテレビCM等に出演し広報活動をしてくれているタレントやアナウンサー、スポーツ選手の皆さんから、「広島県産・国産を食べると生まれる6つのよいこと」や「広島県や日本の“食”が直面している5つのリスク」に関するメッセージをリレー方式で発信しています。企画を通じてインフルエンサーの皆さんにもあらためて広島県の農業を知ってもらう機会にもつながり、農業の応援団が増えるものと期待しています。
今後もタイムリーな情報発信により、SNSのフォロワーを増やしていきたいと考えています。

全国のJAグループに伝えたいことについて、吉川会長に伺いました
地域農業をいかに大切にするかという機運を高めていくのが非常に重要です。地域の農業が廃れないように、地元の農畜産物をその地域でしっかりと消費していくのが当たり前の社会にしていかなければならない。少量多品目の産地の広島としては、農地や農業を大切に思い、生産された農畜産物をまずは県民が消費していくことを次代でも根付くようにしたいと考えています。農業に関心を持ち、買って食べてくれる消費者が増えれば、農業者の生産意欲が増して遊休農地が減り、食料自給率も向上するはずです。「地産地消」の積み重ねが「国消国産」につながり、平時から食料を確保できる国内農業が実現できるのはないでしょうか。
こうした観点からも食農教育は重要です。座学だけでなく、生産者との交流や農作業体験を通じて、農業への理解を深めてもらう機会をつくっていきたいと考えます。自治体によっては、農家民泊の受け入れに取り組んでおり、わが家でも子供たちを受け入れ、農作業等を体験してもらっています。現地で交流する価値は大きいはずで、こうした経験からも前向きに進めてもいい取り組みだと感じています。
農業の現場では気候変動の影響が大きくなってきました。広島でも2014年に広島市で、2018年には県内の広い範囲で大規模な災害が発生しましたが、災害はいつどこで起きるのか分かりません。災害による農業被害にとどまらず、生産者の暮らしにも大きな影響を与えます。生産者自らの万が一への備えや、農業共済をはじめ、公的救済の仕組みの充実を図っていかなければならないのではないでしょうか。また、農業現場の労働力不足への対応も喫緊の課題で、人的サポートの充実なども必要と考えています。
今月21日開催の第30回JA広島県大会では、JAグループ広島の存在意義として「協同活動と総合事業で食と農を支え、豊かなくらしと活力ある地域共生社会を実現する」ことを掲げ、「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力」を主題に、5つの取組戦略を柱とする大会議案を決議する予定です。JAグループ広島としてのめざす姿である「持続可能な農業の実現」「豊かでくらしやすい地域共生社会の実現」「協同組合としての役割発揮」に向け、持続可能な農業振興に向けた営農支援をはじめ、組合員のくらし・地域社会への貢献や「食」「農」「JA」に対する理解醸成、これらを実践するための健全・強固な組織基盤・経営基盤の強化に向けた事業活動に全力で取り組んでいきます。
