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地域農業47色

47都道府県JAグループの農業情勢とそれを支える取り組み等について、トップのインタビューも盛り込んで紹介いたします。

第25回 品質向上でブランド力押し上げ/「国消国産」運動の継続性を重視
JAグループ和歌山の取り組み

① 品質向上でブランド力押し上げ

■取り組み概要

 JAグループ和歌山は、品種改良や栽培方法などにこだわり価値を高めた農産物「和歌山ブランド」の生産拡大に取り組んでいます。品質の高い農産物づくりを目指した細やかな営農指導により、ブランド力の押し上げを図っています。

■JA和歌山中央会の坂東紀好会長より

 温暖な気候に加え、豊かな森林や河川など自然環境に恵まれた和歌山県では、ミカンや梅、柿などの果樹や、ウスイエンドウに新ショウガといった野菜、スターチスをはじめとする花きなど多種多様な品目を栽培できます。このうち、ミカンや梅、柿、ウスイエンドウなどの生産量は全国一を誇ります。
 先人たちが磨き上げた技術と地域の農家の強い絆により長く育んできた従来品種のうち、例えば、糖度基準で選別した「味一みかん」や樹上で渋を抜いた「紀の川柿」などのユニークな商品や、山土や水田土壌ではなく砂地で栽培する「新ショウガ」といった地域特産品の生産拡大にも一体となって取り組んでいます。厳しい栽培基準を設けて、糖度や食味にこだわったミニトマト「優糖星(ゆうとうせい)」も価値を高めて市場や消費者にアピールしています。
 これは単なるブランドづくりではありません。品目の一部でブランド化を図る、すなわち価値を高める取り組みこそが、その品目全体の栽培技術の引き上げにつながるのです。栽培技術を高めていくには、農家とJAがお互いに意見を交換し、目標に向かっていかなければなりません。相互信頼と理解があってこそ確実なモノづくりが実現すると考えます。
 和歌山県では令和7年4月に県内8JAが合併し1JAになります。合併に向け、組合員農家にアンケートを通じて要望を尋ねたところ、特に多かったのは営農指導体制への期待でした。営農指導員には品目別の他、地域を横断して指導できる広域で対応可能な人材が求められています。合併は、産地づくりを継続していく再スタートの機会と位置づけており、目的ではありません。組合員農家に「合併してよかった」と実感してもらえるように、チャレンジ精神が旺盛で熱意と情熱ある農家を支え、活躍してもらう応援体制を目指します。

市場関係者に向けた紀の川柿のトップセールス(令和6年9月下旬、都内で)

② 「国消国産」運動の継続性を重視

■取り組み概要

 JAグループ和歌山は、「国消国産」の推進にも力を入れています。県内にあるJAはアイデアを出し合って各地で農業の価値に目を向けてもらうさまざまな企画を展開、一過性ではない継続した取り組みにより「食」・「農」の大切さを訴えています。

■坂東紀好会長より

 消費者の理解なくして農業の成長はありません。お互いの理解や信頼なくして農業は成り立ちません。農業振興だけに力を入れていれば生き残れる訳ではないので、女性会や青年部、生産部会などJAグループならではの組織活動を活かして「国消国産」の運動を広げていくことが大事なのです。和歌山では昨年10月、県女性組織連絡会が中心になったイベントを和歌山市で開き、各JAの女性会が農産物や加工品などを持ち寄って販売し、売り場で買い物客に農業の大切さや食に対する情報などを伝えました。各JAでも地域の特徴を生かしたアイデアを出し合って取り組んでいます。
 「国消国産」と言えばフレッシュな農畜産物を意識する人が多いと思いますが、加工品にも着目するべきではないでしょうか。加工品の原料は国産なのか、輸入品なのか、といった意識を高めるべきだと考えており「国消国産月間」の初日となる令和7年10月1日、朝礼の時間を活用し菓子を含めた加工品の原料に関するクイズを出しました。正解率を競うのが目的ではなく、普段から意識してほしいとの思いがありました。
 振り返ると、令和7年の食品値上げは1万品目を突破し、農畜産物の価格も上がっていると報道などで伝えられました。インタビューを受けた消費者やスーパーマーケットなどの量販店の店長らが「食品の価格が高くなった」と口をそろえて話す姿を見ました。生産現場の実態や品目の価値への理解を深めたうえでの発言なのでしょうか。今、米の価格が高いと言われていますが、これまでの生産費もまかなえないような米価と比較した発言にとどまっていると思います。なぜ価格が上がったのか、価格は果たして本当に高い水準なのか、ということを立ち止まって考えてもらうためにも現場の状況を十分に理解してもらわなければなりません。「国消国産月間」だけでなく、年間を通じて消費者理解をすすめることが重要です。

「国消国産の日」には学習資材とミカンを配布(令和6年10月16日、和歌山駅前で)

全国のJAグループに伝えたいことについて、坂東会長に伺いました

 組織としての活動が特徴のJAグループとしては結集力を一層高めていかなければならないと実感しています。さまざまな場面で目的に向かって思いをこめて、ひとつになって盛り上げていく機運が求められます。「国消国産」運動は、国民全体で食を支えてもらえるようにグループが一丸となって共に歩むことができる取り組みのひとつです。さらにはJAグループだけでなく、さまざまな組織を巻き込んで日本の食や農業を守る取り組みを広げることができます。こうした積み重ね一つ一つが他のさまざまな機会でも生かせる結集力につながるはずです。
 営農事業などは北海道から沖縄県まで全国一律で足並みをそろえて取り組むのは難しいのが現実です。地域に合った対策をあきらめずに続けていかなければ地域農業の維持・発展は厳しくなります。生産資材の価格高騰など現場では大変な状況が続いていますが、現場の農家の多くは「消費者にいい農畜産物を食べてほしい」「いいモノづくりをしたい」との純粋な思いで生産し続けています。生活のための「なりわい」として農業を成り立たせるために所得向上への手立てを考えることも必要ですが、一方で、工業製品ではない命ある農畜産物をわが子のように一生懸命に育てているのが農家なのです。強い思いを持った農家をわれわれがどのようにサポートしていくのか、原点に立ち返って考えていかなければならないのではないでしょうか。
 JAグループとして事業をする目的とは何か。それは組合員農家から「ありがとう」「おおきに」という言葉をいただくことに尽きると思います。自己満足ではなく、組合員農家に喜んでもらえることを常に意識するべきです。現場の声に耳を傾け続けて、地域農業そして日本の農業を守り続けるためにJAグループが一丸となって進みたいものです。

「JAグループは組合員からの『ありがとう』のために事業をしなければならない」と話す坂東会長
JAありだミカン選果場に出向く坂東会長
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