地域農業47色
第27回 生産部会強化で産地再生へ/パーパス共有で存在意義を確認
JAグループ大分の取り組み
① 生産部会強化で産地再生へ
■取り組み概要
JAグループ大分は地域農業の維持へ、生産部会の活動強化による産地再生に取り組んでいます。将来を見据えた部会運営により確実な産地形成と次代を担う生産者の育成を目指しています。
■JA大分中央会の壁村雄吉会長より
問題意識を持った大きなきっかけは、大分県が2021年3月に「農業非常事態宣言」を出したことでした。農業産出額の減少が続き、農林業センサス2020では農業経営体数の減少率が5年前に比べて20%を超える事態となったことから危機感を強めたのです。危機的状況から脱け出すために、県と農業団体で「大分県農業総合戦略会議」を組織して議論を重ねて対策に乗り出しました。水稲に依存する割合が高い大分県では園芸へのシフトが進んでいない傾向にあります。園芸産地の育成へ、まずは短期集中して県域で支援する品目として白ネギや小ネギといったネギや、県の育成品種のイチゴ「ベリーツ」、高糖度かんしょの「甘太くん」、ピーマンの生産拡大に取り組みました。マーケットのニーズがあり、地域の特性を生かして栽培できる品目でもあります。確実に進めるには栽培農家を増やさなければなりません。JAグループは栽培や販売など営農活動の根幹となる生産部会の活性化に向けて動き出しました。生産者個人が突出する産地づくりではなく、生産部会が面的に広がっていくことを目指し2022年度から取り組みを本格化させました。
開始から3年になりますが、ネギは産出額を100億円の大台に乗せるというプロジェクトを打ち出して生産を後押しした結果、目標を達成しました。異常気象の影響を受けながらもピーマンや「ベリーツ」を栽培する生産者や面積も増えていることから順調に進んでいると受け止めています。
生産拡大と併せて将来を見据えた部会運営の体制づくりもしています。活動強化に取り組む15品目43部会を選び、計画的に運営管理する手法の整理と実践、産地の維持へ部会員の生産量の底上げと次代を担う新規就農者の確保と育成に向けた問題点や課題の整理、さらには部会員の生産技術レベルに応じた指導方法の検討や現場での実践に向けた手法の整理などを進めています。特に生産部会で後進に指導できる生産者のリーダーを育成していくことは大事です。栽培技術が進化する中、複数品目を担当し経営面に目を配るJAの営農指導員にとっても非常にありがたく、お互いに連携して産地を盛り上げていく関係を構築できればと願っています。

② パーパス共有で存在意義を確認
■取り組み概要(パーパスの共有・理解促進)
地域の農業とくらしを支え続けようと、JAグループ大分はパーパス(社会的存在意義)を定めて取り組みを進めています。パーパスの理解促進へ、昨秋開いた「国消国産」イベントをはじめメディアなどを通じて発信し続けています。
■壁村雄吉会長より
農業を取り巻く環境や情勢が変化する中、JAグループが果たすべき役割や在り方、存在意義をあらためて確認する必要があるとして若手職員にも加わってもらい検討を進めました。県民に伝えたいメッセージの複数案から役職員を対象にしたアンケート投票で絞り込み、パーパスのキーメッセージを「地域を耕し、笑顔を収穫」にしました。組合員農家が多様化する中、JAグループ大分としては活性化に向けて共に地域を耕す、そして笑顔になっていく農家・地域の皆さんを見たい、との思いを込めました。パーパスは昨年11月に開いたJA大分県大会に諮り正式に決定、2025年が「国際協同組合年」であることも策定するきっかけになりました。
パーパスを出すことは、対外的な発信だけでなく、われわれ役職員一人ひとりが、存在意義について考えることにもつながります。さまざまな事業と活動を通じて食と農を支え、地域の課題・ニーズを満たし、心身ともに豊かなくらしの実現により笑顔あふれる活力ある大分の持続的発展に貢献していくために動き出しています。生産部会の活動強化の取り組みにもつながっています。
パーパスの認知度や理解を高めてもらうために大会を終えた昨年11月末、企画した消費者向け「国消国産」イベントで「パーパス・テイクオフセレモニー」を開き、次代を担う県民の代表として高校生にパーパスを伝達、これを受けて書道部に所属する高校生がパーパスを題材にした作品を仕上げてくれました。農業会館内に飾り、職員だけでなく来館者への周知を図っていく予定です。JAグループ大分のラジオ番組では若手職員が出演し、趣旨説明を含めてパーパスを紹介しました。今後も例えば名刺へのロゴ掲載をはじめ、さまざまな機会をとらえてアピールしていきたいと計画しています。最終的には、組合員農家が「大分の農業は面白いな、やっていけるぞ」と意欲を持ち、後継者ら担い手がどんどん生まれていく環境づくりにつながることを期待しています。
全国のJAグループに伝えたいことについて、壁村会長に伺いました
農業産出額の落ち込みや、生産者人口の減少といった課題は大分県だけでなく全国各地で抱えていると思います。地域農業の維持・継続へ、国内で食料を生産する大切さを広く知ってもらう「国消国産」をはじめ、消費者理解の醸成へ機会をとらえて愚直に一生懸命に進めなければならないと感じています。
一方で、国内では少子高齢化による人口減少が確実に進んでおり、将来を見据えた農畜産物の販路の在り方を考えなければなりません。対策のひとつとして注目しているのが輸出です。全国的には米の輸出が伸びていると聞いていますが、実際のところ、輸出を手掛けているのは特定の産地や県域に限られている印象があります。今後は将来を見据えて、さまざまな品目でジャパンブランドを確立して海外に売り込んでいく体制を構築する必要があるのではないでしょうか。産地間競争とは別に、積極的に売りたい農畜産物を海外市場のニーズに合わせて生産し、連携した取り組みで周年供給を実現、確実な売り先を開拓・確保していくのが地域農業を維持・継続させるために欠かせない手法のひとつになるのではないかとみています。
地域の中には輸出を視野に一生懸命取り組んでいる生産者も既にいます。産地の意向などのとりまとめや輸出の際の規格、商流、物流、マーケティングなど解決しなければならない課題が多いのも事実です。しかし地域農業が抱える危機的状況を乗り越えるための手法のひとつとして、海外で売る仕組みを行政も含めて検討し全国の産地間連携で進める仕組みをつくってほしいと考えています。
