地域農業47色
第33回 潮流つかみ県民理解を促進/2027年国際園芸博覧会への期待高める
JAグループ神奈川の取り組み
① 潮流つかみ、県民理解を促進
■取り組み概要
JAグループ神奈川は、地域農業の振興と農業経営の継続を目指し、食や農業への県民理解を深める活動に力を注いでいます。時代の潮流やターゲット層の特徴に合わせた新しい仕組みを構築するとともに、従来の方法も併用し、幅広い年代にアプローチしています
■JA神奈川県中央会の平本光男会長より
スマートフォン(スマホ)やSNSで情報を得る世代が増える中、県民の皆さんに、食や農への関心を高めてもらうため、JAグループ神奈川の特設サイトへ誘導する、二次元コード付きのポスターを作成しました。
生成AIで作成した農産物をデザインした二次元コードによりアクセスすると、特設サイト「くらしを、つなごう」のページにつながります。このサイトは、食の未来を考えてもらう内容になっています。ポスターは、地元紙の全面広告として3月下旬に掲載したところ、趣向を凝らしたデザインが読者の目を引き、関心をもってもらう面白いアプローチになりました。
こうした取り組みの起点となったのが2月に開いた「かながわ農業振興フォーラム」でした。消費者である県民への理解促進にあたり、まずはJAの関係者が伝えるべき内容を再確認・再認識する必要があると考え、大学の研究者らの講演を聴き、持続可能な農業経営に向けた「自助・共助・公助」の関係性や農政運動の意義や目的などを再確認し、消費者理解活動への支援ツールの考案につながりました。地域住民の中でも子育て世代や若年層をターゲットに食や農への価値を感じてもらう工夫をしました。
また、JAグループ神奈川が提供するテレビ番組は1972年の開始以来、50年以上続いています。視聴率を維持し一定の評価を得ている一方で、テレビを見ない、スマホしか見ないという世代も増えています。時代の流れを踏まえて4月から、さらなる視聴者の拡大へ、放送中の番組「かながわ旬菜ナビ」の見逃し配信をYouTubeで開始し幅広い世代へのアプローチを図っています。長年継続してきたテレビ番組と、SNSが中心の世代をどのようにつなげていくか、という意識からの対応です。消費者理解の促進へ、今後も一層大きなテーマになっていくとみています。
② 2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)への期待高める
■取り組み概要
2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)が2027年3月から、横浜市を会場に開かれます。世界的なイベントの開催に、神奈川県内からは、食や農をはじめとする魅力を発信できる機会として期待の声が寄せられており、今後、詳細を詰めて準備を加速させる予定です。
■JA神奈川県中央会の平本光男会長より
「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」は、1990年に開かれた大阪花の万博以来、A1クラス(最上位)の国際園芸博覧会として約半年間、開かれます。JAグループ神奈川としては、国内外にアピールできるまたとないチャンスです。生産者である農家組合員の皆さんの期待も大きいと受け止めています。
「幸せを創る明日の風景」をテーマとする博覧会で具体的にどのようにアピールしていくのか。テーマを展開・具現化するために設けられている「自然との調和」「緑や農による共存」など4つのサブテーマをふまえ、博覧会のテーマを来場者に感じ取ってもらうためにどのようにするのか。都市部で未来につながるものをどのように作り上げていくのか。温暖化の影響に直面し地域農業を残すのも大変な現状にある中、テーマとサブテーマをどの程度協調させて折り合いをつけていくのか。本格的な議論はこれからです。
一方で、国際的な博覧会だからこそ開催地の神奈川県だけにとどまらず、全国のJAグループとしてもエシカル(倫理的)消費や食育などをテーマとした独自の飲食や物販などが提供される予定です。その中でJAグループ神奈川として求められる役割をしっかりと果たしていきます。併せて、県や市など行政側からも協力要請があると想定しており、農家組合員をはじめ地域住民にとって有意義なものになるよう進めていかなければならないと考えています。
詳細は現時点で具体的に決まっていませんが、テーマに掲げられた「幸せを創る」という視点で注目しているのは農福連携です。少子化により担い手や後継者がいないのは、約920万人が暮らす神奈川県の農業現場でも同じ状況です。農家の労働力支援だけでなく、障害者が社会参加する観点から農福連携を進めることは双方の幸せにつながるのではないでしょうか。農業を閉ざさない、やめさせない、壊さないための幸せの実現に向けた取り組みになるのではないかと思っています。

全国のみなさんに伝えたいこと
大消費地に近い神奈川県は山も海もある地域で肥沃な大地に恵まれており、米をはじめ野菜、果樹はもちろん、畜産・酪農など量は少ないながらも何でも生産できるのが特徴です。
観光客をはじめ「人が来てくれる、集まってくる」という地域性を生かし、神奈川県産の農畜産物に触れることを契機に特産品も含めて紹介するアンテナショップのような位置づけで情報を発信していきたいと思っています。
特に人口が多く、都市化が進む横浜や川崎に「農地はあるのか」「農業をやっているのか」との声をいまだに聞くことがあります。2015年施行の「都市農業振興基本法」では、都市に農地があって当たり前(あるべきもの)と定義されていますが、10年経過しても十分に浸透していない状況にあると感じています。都市部でも農地をしっかりと受け継ぎ、農畜産物を生産していることを知ってもらえれば都市農業に対する理解が深まり、見方も変わってくるのではないでしょうか。こうした観点からも「2027年国際園芸博覧会」の開催地が横浜であることや、情報を発信する機会を得られたのは大きな意義があります。
昨年改正された、農政の基本理念や政策の方向性を示す「食料・農業・農村基本法」では、食料安全保障を基本理念の柱に位置付けました。全国に届ける農畜産物の生産量を神奈川県で十分に確保するのは難しいですが、神奈川の地域性を生かした情報発信など別の形で貢献できるのではないかと考えています。全国のJAグループの皆さんの協力を得て発信力を一層高めて、まずは「2027年国際園芸博覧会」を成功させたいとの思いを強めています。

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