地域農業47色
第44回 欠かせない糖業・畜産振興/離島の生活を支える支店運営も
JA沖縄中央会の取り組み
① 欠かせない糖業・畜産振興
■取り組み概要
JAグループ沖縄では、主要品目であるサトウキビや肉用牛を中心とした生産の維持・拡大に力を入れています。経営安定に向け、農家組合員らの声に耳を傾け、ニーズに応じた取り組みを進めています。
■JA沖縄中央会の前田典男会長より
サトウキビは台風や干ばつに強く、沖縄の基幹作物として国の交付金による支援が行われている政策作物です。生産の大半は離島で行われ、刈り取られたサトウキビを加工する製糖工場も離島にあります。離島では、傷みやすい作物等、出荷に不向きな品目も多い中、サトウキビは輸送に強く、生活や地域経済を支える上で欠かせない産業です。また、広大な領海と排他的経済水域を有する沖縄は国防上も重要であり、農業は島の維持に直結しています。たとえば、沖縄本島と同程度の生産額を誇る南大東島の製糖工場には、煙突に「さとうきびは島を守り 島は国土を守る」と掲げられています。南大東島に限らず、離島の農家はこうした誇りを胸に生産に取り組んでおり、その思いを知ってほしいと考えています。
しかし、サトウキビ生産には課題もあります。年間生産量は平均70万トンほどですが、2024年産は約85万トンの豊作だった一方、気象条件や病害の影響で55万~57万トンに落ち込む年もあります。この不安定さを解消するため、県が主体となって品種改良を進め、JAグループ沖縄も実証栽培などで協力しています。
生産を維持・拡大するうえで重要なのは、「儲かる品目」であることです。手取りは交付金を含めて1トンあたり約2万4000円ですが、生産コストは依然として高い水準にあります。人口減少が進む中、農家数の増加は期待しにくいため、農地の面的集約による少人数での効率的な耕作や、スマート農業の導入による作業効率の向上が不可欠です。
また、サトウキビ産業を支える製糖工場は、離島の経済や暮らしにとって欠かせない存在で、JAグループ沖縄は分蜜糖(粗糖)工場¹を1カ所、含蜜糖(黒糖)工場²を5カ所運営しています。課題としては工場の維持や収穫期など限られた期間に必要な人手を確保することが難しく、外国人労働者が必要なのが現状です。
沖縄は全国4位の子牛生産地であり、畜産業が非常に盛んです。沖縄で生まれた子牛は県外の肥育農家に買われ、全国各地でブランド牛として育てられます。責任ある産地として何としても生産基盤を守っていかなければならないとの思いがあります。
JAグループ沖縄が関わる家畜市場は県内に6カ所ありますが、選ばれる産地であり続ける工夫が求められています。改良を重ねた種雄牛が好成績を上げるなど明るい材料もある一方で、飼料価格の高止まりが農家経営を圧迫しており、農家の自助努力だけでは厳しい状況です。子牛価格が下落し、特に苦しかった時期に離島の生産者から「明日が来なければいい」という言葉を聞き涙が出たことを今でも忘れられません。こうした現状を踏まえ、生産基盤を維持・強化するためにも、消費拡大に一層力を入れていく必要があると考えています。
1 分蜜糖(粗糖)工場:サトウキビの搾り汁を煮詰めて濃縮・結晶化し、遠心分離機で糖蜜と結晶を分けて粗糖を製造する工場。粗糖は白砂糖などの原料となる。
2 含蜜糖(黒糖)工場:サトウキビの搾り汁を煮詰めて濃縮し、蜜を分離せずそのまま固めて黒糖を製造する工場。黒糖はサトウキビ本来の風味やミネラルが残るのが特徴。
② 離島の生活を支える支店運営も
■取り組み概要
沖縄の農業の中心となる離島振興のため、JAは支店を置き、農家組合員をはじめ島民の生活拠点として運営を継続。農業資材や生活物資を確保・供給し、地域のインフラを守っています。
■JA沖縄中央会の前田典男会長より
離島の農業産出額は沖縄県全体の約4割を占めています。沖縄の農業を発展させるためには離島を守らなければなりません。島民の皆さんの暮らしを支えるため、離島に12店舗の支店を展開し、本島から約100人の職員を派遣しています。
陸続きではない離島の支店だからこそ、生活インフラとしての機能が求められています。島によっては郵便局以外の金融機関がJAのみというケースも複数あります。こうした支店は地域の拠点となる「ライフライン店舗」として位置づけ、「絶対に引き揚げない」という前提で運営しています。
ただ、離島の人口減少は深刻です。ここ15年間で住民が25%減少した島もあり、小規模な島ではさらに減少率が大きいと推測されます。利用者減により赤字経営が続く状況ですが、島民の生活を支えるため存続させています。しかし他事業の収益で補てんしても追いつかず、自助努力や共助にも限界がある現状を理解していただきたいところです。
観光立県の沖縄ですが、農業が観光資源になっているかといえば、現状はそうではありません。離島を訪れる観光客は、サトウキビ畑や牛舎を目当てに来ているわけではないからです。海だけでなく、離島の背景を理解してもらうためにも、農業を観光資源として組み込めないか、ブランド化を含めて今後の検討課題だと受け止めています。
全国のみなさんに伝えたいこと
離島の多い沖縄の農業は他の地域とは異なる面があることを、あらためて知っていただきたいと思います。単純に見れば、県内総生産(名目GDP)に占める農業産出額の割合は小さいかもしれません。しかし、離島が果たしている役割は極めて大きく、離島の農業を守らなければ沖縄全体の農業算出額は伸びません。
2025年11月17日、離島の経済に欠かせないサトウキビをめぐり、重要な動きがありました。サトウキビを原料とする「沖縄黒糖」が、地域の農林水産物や食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度に登録されたのです。サトウキビだけを原料にした純黒糖であり、その製糖法は400年以上の歴史を持つと言われています。沖縄では、ミネラル豊富な黒糖を熱中症対策としてそのまま食べる文化も根付いています。
しかし黒糖は、需要とのバランスが崩れ供給過多になる年もあります。JAグループ沖縄では、黒糖を使ったレシピの提案や新商品の開発に取り組んでいますが、まだ十分に浸透しているとは言えません。今回のGI登録をきっかけに、多くの方々に沖縄黒糖へ関心を持っていただき、実際に手に取って味わっていただければと思います。
温暖化の影響で亜熱帯作物の栽培適地が北上し、マンゴー、青パパイヤ、バナナなどが沖縄以外の各地で作られるようになりつつあります。一方、沖縄ではコーヒー豆やバニラ栽培に挑む農家も現れており、サトウキビを守りながら新たな作物づくりにも取り組む時代に入りました。JAグループ沖縄としても挑戦を応援して参ります。