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地域農業47色

47都道府県JAグループの農業情勢とそれを支える取り組み等について、トップのインタビューも盛り込んで紹介いたします。

第45回 JA出資型法人を軸に産地振興/持続可能な組織基盤強化へ協議継続
JAグループ山梨の取り組み

① JA出資型法人を軸に産地振興

■取り組み概要

 JAグループ山梨は、生産が盛んな果樹を中心とした地域農業の維持・発展に向け、 JA出資型法人を軸とした取り組みを推進しています。新規就農希望者を受け入れ、地域農業の担い手育成にも乗り出しています。

■JA山梨中央会の小池一夫会長より

 JAグループ山梨は、農家の高齢化や離農などで増加する耕作放棄地が大きな課題となる中、地域農業を守る担い手の育成に力を入れています。先駆けとなったのは、「大塚にんじん」で知られる旧JA西八代(現・JA山梨みらい)が2009年度に立ち上げた農業法人「アグリ甲斐」です。野菜を中心とした法人で、JAが合併した後も継続して事業を展開して成果を上げています。担い手育成の面では、受け入れた新規就農希望者のうち現在24人が独立し、このうち11人が管内で農業に従事しています。
 果樹地帯においても同様の課題解決が求められるようになり、2022年度にはJAフルーツ山梨がJA出資型法人「あぐりフルーツ」を設立しました。ブドウを中心とした果樹産地で、農業を手伝いたい、盛り立てたいという思いを持つ人材を受け入れ、一生懸命に育成しながら安定的な事業を展開しています。「あぐりフルーツ」は着実に実績を積み重ねていき、2025年秋には、地元の新聞社と放送局が主催する農業賞において、意欲的・先進的な取り組み団体として「チャレンジ賞」を受賞。うれしいニュースとなりました。
 JAふえふきでも2023年度に発足した「アグリコネクトふえふき」は県の研修機関として認定を受け、新規就農や担い手支援に取り組んでいます。JA南アルプス市も2024年度に「あぐりファームJA南アルプス市」を設立し、取り組みを開始しました。こうしたJA出資型法人の設立と展開は、県内6JAのうち4JAに広がっています。
 これらの取り組みは、JAが農業経営を行うというよりも、地域農業の基盤確立に向けた地域貢献の意味合いが強いと捉えています。例えば、育てた担い手が独立する際、農地の確保が大きな課題となります。その際、法人が借りている農地を引き継ぐことで、就農の機会につなげることができます。
 担い手の育成は決して容易ではありません。課題解決に向け、JAの営農指導経験者が定年後に法人で指導役として活躍する事例もあります。県の普及指導員や果樹試験場などの研究機関と連携した研修会を通じ、習得した技術や知識を生かしてもらっています。今後、第三者事業承継への対応が求められた際には、法人が受け皿となる可能性もあり、重要な役割を担う存在だと考えています。

各農業法人の写真

② 持続可能な組織基盤強化へ協議継続

■取り組み概要

 JAの果たすべき役割を十分に発揮するため、JAグループ山梨は持続可能な経営の確立に向け、組織基盤強化の在り方を検討しています。その選択肢のひとつとして「県1JA」に向けた協議を進めています。

■JA山梨中央会の小池一夫会長より

 農家の減少や高齢化による生産基盤の縮小、さらに組合員数の減少に伴うJA事業収益の低下などにより、山梨の地域農業やJA事業・経営を取り巻く環境は、今後さらに大きく変化すると見込まれています。実際、JAの正組合員数は約10年前と比べて約17%、20年前と比べると約24%減少しています。
 その一方で、JA出資型法人が新規就農希望者を受け入れ、育成していることからも分かるように、山梨で農業を始めたい、あるいは続けたいというニーズは確かに存在しています。現在も、地域農業の中心を担っているのは家族経営の農家です。しかし、生産から販売までのすべてを家族経営で担うことには限界があります。
 こうした農家の営農や暮らしを支え、地域農業が持続していくための「仲介役」としての役割を果たすのがJAではないでしょうか。農家の経営と地域農業を将来にわたって維持・継続していくためには、JA自身の経営基盤をしっかりと確立することが不可欠です。
 県内では、2025年8月に2つのJAを吸収した合併JAが誕生し、現在は6JA体制となっています。しかし、将来的にはさらに組合員を集約・維持しなければ、組合員の営農を守れないとの見方もあります。一方で、山梨県は畑地かんがい施設などの営農基盤が整備されており、年間の日照時間も長く、果樹栽培に必要な光と水の条件に恵まれています。知恵を出し合い、こうした基盤を有効に活用していくことで、地域農業は今後も維持・継続できると信じています。こうした将来を見すえながら、今後の在り方についての議論を進めて参ります。

各JA広報誌に掲載した1JA推進協議会による1JAに向けた協議開始の案内

全国のみなさんに伝えたいこと

 山梨県の面積は日本の総面積の約100分の1で、そのうち約8割を森林が占めています。限られた土地を活用して営農が行われています。平担地が少ない中、かつては傾斜地を活用して米作りや養蚕が中心でしたが、戦後は果樹栽培が盛んになりました。現在では、果樹をはじめ、米、野菜、畜産物などあらゆる農畜産物を食卓に届けようと、農家の皆さんが日々努力を重ねています。安心して食べてもらえること、味覚を裏切らないことを意識しながら営農に励んでいます。消費者の皆さんに食べていただけなければ、作り続ける価値はありません。
 甲州市と笛吹市、山梨市にまたがる狭東地域の果樹栽培が2022年7月に国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定されました。桃、ブドウ、スモモなど果樹の多様性に加え、剪定や袋掛けなど手作業による栽培技術、果樹が織りなすモザイク状の景観、その中で営まれる人々の暮らしも含めて評価されたものと受け止めています。さまざまな地域の特性を生かして生み出された山梨県産の農畜産物を手に取っていただければと思います。
 最近は各地で相次ぐ熊被害も気がかりです。県内でも目撃情報が寄せられていると聞きますが、頻発する理由のひとつに里山の荒廃があるのではないかと懸念しています。土地所有者の手が回らなくなり、里山の管理が十分に行われていないことに、一因があると思います。
 JAの営農指導員をしていた30代の頃、熊が出没したとの情報を受け、市の担当者らと、現地へ確認に行ったことを思い出します。最終的には専門家に来てもらい、麻酔の吹き矢で熊を眠らせたのですが、口を開けて眠る様子や長い爪などを見て、万が一、狙われた際にどうなるかを想像し恐怖を覚えました。里山を含む中山間地域の管理は、農地を守ることにもつながります。地域農業を維持・継続する重要性を、あらためて考える機会につなげたいです。

山梨県の農業の魅力を話し、地域と農地を将来にわたって守り続けたいと語る小池一夫会長
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