地域農業47色
第46回 ギガ団地・担い手育成に力/営農再開による復興へ歩み続く
JAグループ福島の取り組み
① ギガ団地・担い手育成に力
■取り組み概要
持続可能な農業の基盤強化に向け、JAグループ福島は、野菜や花きなど収益性の高い品目の生産拡大を狙う「ふくしま園芸ギガ団地」による産地形成を進めています。併せて、担い手育成を目的とした「福島型トレーニングファーム」構想を掲げ、次代に地域農業をつなぐ挑戦に乗り出しました。
■JA福島中央会の原喜代志会長より
JAグループ福島は、産地の集約化により規模拡大をめざす「ふくしま園芸ギガ団地」構想を打ち出して、管内全てのJAで生産団地の整備拡充を進めています。水田農業が中心の福島で営農を継続していくためには、今後も需要が見込まれ、かつ収益性の高い園芸品目の生産拡大が必要だと判断し、2021年に開催したJA福島大会での決議を受け、取り組みをスタートさせました。
すでに成果も着実に現れはじめています。キュウリは、2年連続して県内JAの販売高が100億円を突破しました(JA全農福島取扱実績として2024年度と2025年度に突破)。地理的表示(GI)保護制度の対象として登録されている「南郷トマト」や2024年度の農林水産祭で「天皇杯」を受賞した「昭和かすみ草」の生産部会でも、2024年度に過去最高の販売高を更新し、他産地をけん引するモデルになっています。その他の園芸品目も販売実績を伸ばしており、ギガ団地の取り組みの成果だと思っています。
一方で、産地での営農を確実に継続させるためには、担い手の育成が重要です。2023年に福島県と農業会議・農業振興公社・JAグループ福島がワンフロアーの組織として設置した「福島県農業経営・就農支援センター」では、就農希望者の相談・就農・定着や農業経営者の経営改善・法人化・労働力確保・経営継承等の支援を行っています(令和6年度の相談件数はサテライトを含めて年間1,352件)。活動の成果として令和7年度の新規就農者が391人となり、4年連続で300名を超え、過去最高となりました。また、今年度、JAグループ福島は、全5JAで「福島型トレーニングファーム」の展開を新たに始めました。即戦力として活躍する農業経営者を育てようと、新規就農者の募集から研修、定着までを一貫して支援するパッケージ構築に向けた取り組みを進めています。県農林事務所普及部・普及所や市町村などとも連携し、JAや生産部会が中心になって、ベテランの先輩生産者が一定期間、営農技術や農業経営を指導する仕組みです。産地を守りたいとの意識の強い生産者が多く、生産量を維持するための営農技術を惜しみなく伝えてくれています。中央会としても減少傾向にある農業者人口を維持したいとの思いから、一定の条件はありますが、各JAを支援する助成事業を創設しました。
② 営農再開による復興へ歩み続く
■取り組み概要
JAグループ福島は、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故からの復興を目指し、営農再開に向けた産地づくりにも力を入れています。影響が長引く中、課題を乗り越えようと、さらなる歩みを進めます。
■JA福島中央会の原喜代志会長より
3月で東日本大震災の発生から15年が経過しますが、避難地域となった12市町村の営農再開率は、震災前の5割程度(2025年3月末の時点で52.9%)にとどまっています。自治体によっては、営農再開率が数%台、あるいは1%に満たないところもあります。
復興に向けた避難地域の目標として、福島県とJAグループ福島が策定した「避難地域12市町村農業の復興・創生に向けたビジョン」では、令和12年度末までに営農休止面積のうち営農可能面積の75%(11,342ha)の再開と、震災前(平成22年)の産出額の75%(274億円)の二つの目標を掲げています。そして、浜通りを中心とした避難地域が広域的な産地形成を進め、面的な営農再開と多様な担い手による儲かる農業が実践されてこそ、真の復興と言えるのです。
生産者の高齢化が進み、新規就農者ら担い手が少ない中、どう対応していくのか。例えば、大区画化した圃場でスマート農業の導入を進めるには、行政と一体となって整備していく必要があります。一度地元を離れた生産者が戻ってきてくれるのかどうかも、引き続き大きな課題です。
避難地域でも、園芸ギガ団地による産地形成の動きはあります。南相馬市小高地区では、キュウリの一大産地を目指す取り組みが進んでいるほか、ふたば地区(双葉町)では養液栽培施設を活用したトマトによる営農再開に向けた基盤づくりを進めています。
また、避難地域の米や野菜は、風評払拭と販売流通の安定化のため、「高付加価値産地展開支援事業」を活用し設置した無菌パックごはん工場や、野菜加工施設と連携し、生産・加工・流通の一体的展開による「広域的な高付加価値産地」づくりを進めてまいります。
園芸ギガ団地とは別に、田村市都路地区では、酪農と和牛繁殖を展開する大規模な復興牧場を整備しています。JA全農福島の子会社が運営を担い、合計で2,650頭を導入する計画です。肥育基盤の再構築にとどまらず、最終的には圃場の土づくりに活用できるたい肥も供給する耕畜連携を目指します。
こうした営農再開への動きがある中でも、震災や原発事故の影響は長引いています。例えば、市場での取引価格をみると、遜色のない品質でありながら、競合産地との価格差が縮まらない状況が続いています。福島ではこの15年間、徹底して安全・安心な農畜産物づくりに力を入れてきました。全国的にみてもGAP(農業生産工程管理)に取り組む農場数はトップクラス(「お茶」を除き日本一)であり、安全・安心でおいしい農畜産物を皆さんに味わっていただきたいと思っています。
全国のみなさんに伝えたいこと
園芸品目を中心にした取り組みについて述べてきましたが、福島の農業といえば、何といっても米です。全国の皆さんから注目され続けている米ですが、消費者の皆さんにおいしく食べてほしいとの一心で、生産者は作り続けています。従来に比べて価格が高くなり「令和の米騒動」とも言われていますが、米づくりには一定の生産費がかかっていることを、あらためて理解していただきたいと考えています。生産者としては、米価が高ければいいというものではありません。消費者の皆さんに選んでもらい、来年も米作りができる価格で安定することを望んでいます。
畜産では、生産量がまだ少ないものの、酒粕を混ぜた飼料で育てた福島牛「福粕花」のほか、県内の指定農家が生産する「麓山高原豚」などがあります。
国の地理的表示(GI)へ登録された産品(※)を含め、産地との結びつきを強みに売り込んでいます。こうした特性やおいしさを備えた県産、そして国産の農畜産物を手に取ってもらい、多くの食卓で利用してもらえたらうれしい限りです。
※登録産品:昭和かすみ草、南郷トマト、伊達のあんぽ柿など県内で7産品(令和7年11月17日現在)
被災して15年が経過します。発災当初からJAグループをはじめ、多くの支援をいただき、何とか一歩一歩、進んできました。国は2026年度からの5年間を「第3期復興・創生期間」に位置付けました。福島の主要産業は農業です。浜通りを中心とした避難地域では、特に付加価値を高める取り組みを展開していくため、企業をはじめ、国や県、市町村と連携し、次の段階に向かって歩んでいきます。福島の農業を次代につなぐためにも引き続き応援していただきたいと思っています。