「アグリカルチャーコンペティション」について
「アグリカルチャーコンペティション」は大学生が「食」「農」「地域」「JA」等のテーマについて考え、発表する機会を創出することを目的とするコンペティション大会で、チームでも個人でも参加が可能です。平成29年度からスタートし、令和4年度(第6回)は14大学から50チームの参加がありました。
JA全中は「アグリカルチャーコンペティション」準備委員会が主催する本事業に協賛し、「食」「農」「地域」「JA」等に関心を持つ大学生たちの取り組みを応援します。
研究の背景と目的
このたびは、アグリカルチャーコンペティション第6回の実践的研究分野で最優秀賞をいただき、お礼申し上げます。表彰いただいた研究は、ゼミナールに立ち上げた学生主体の研究プロジェクトで実施されました。近年注目を浴びている食品ロスの問題をテーマとしたものです。
一般に、食品ロスの発生源として家庭や店舗がイメージされがちですが、意外と知られていない発生源として流通過程があります。加工食品の流通過程では、納品期限に過剰な制限(3分の1ルール)が設けられたり、欠品にペナルティーが科されたりされることで、納品業者が必要以上に在庫を積み上げてしまう傾向があります。その結果、販売消化のできない商品が廃棄されているのです。
こうした事実を一人でも多くの消費者に知ってもらいたく、後述の「減らせ!流通フードロスゲーム」の開発に至りました。

ゼミでの風景

日頃の研究の成果がゲームの開発につながった
なぜ食品ロスが発生するのかをゲームにしてみた
流通過程の食品ロスの発生にはさまざまな要因が影響しあっていますが、主に「3分の1ルール」「汚破損への過剰反応」「欠品ペナルティー」「新商品発売や特売による需要の不確実性」などがあります。
こうした要因が生まれる背景に「消費者の過剰反応」があります。消費者が品質や欠品に対して過剰に反応することが、「3分の1ルール」などの食品ロスを生む流通慣習を維持させているのです。そのため、そのような消費者反応が食品ロスに結び付いていることに気付いてもらい、考え方を改めてもらうことができれば、流通過程の食品ロス発生を抑制することができます。
そこで、体験学習用のボードゲーム「減らせ!流通フードロスゲーム」を開発しました。ボードゲームを利用した体験学習にすることで、複雑な流通過程を楽しく、主体的に学ぶことができます。2名の参加者にそれぞれ卸売業者と小売業者になってもらい、食品ロスを出さずに取引を続けてもらう協力型のゲームです。ゲームのルールとして「3分の1ルール」や「欠品ペナルティー」が存在するだけでなく、「新商品の発売による旧商品の廃棄」などのアクシデントカードもあって、食品ロス発生に関係するさまざまな流通上の体験ができるように工夫されています。こうした体験を通じて、消費者の過剰反応が商慣習を通して食品ロスの発生に結び付くという構造を学ぶことができるのです。

「減らせ!流通フードロスゲーム」

ゲームをすることで食品ロスが発生する仕組みが理解できる
実験と実践を繰り返しながら
ゲームに本当に効果があるかについての検証も行いました。卸売業者などの実務家の方々からは「実態と一致している」とのお墨付きをいただきました。さらに、動画による学習とわれわれのゲームによる学習の2つのグループの間で理解度を比較する検証も行いました。
その結果、ゲームによる学習の方が理解度が高いことを実証しました。さらに、体験学習後の学習者の追跡行動調査も実施し、学習者が店舗で「手前取り(棚の手前にある商品から取ること)」を意識的に行うようになったことも確認できました。
またボードゲーム体験学習を普及する活動も行いました。イベントでの体験会の開催や「ゲームマーケット2022秋」に出展したり、複数のマスメディアにゲームを紹介する記事を掲載していただきました。
今年度も引き続き、普及と効果検証のためのゲームの体験会の実施を予定しています。作成したボードゲームを、学習を希望する団体や個人に寄付することも計画しています。また、より気軽に体験学習ができるように、ゲームのデジタル化にチャレンジしています。タブレットやスマートフォンがあれば、誰でも学習可能な環境の開発を目指しています。
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