「全国高校生 農業アクション大賞」について
JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」、「奨励賞」を贈ります。
研究の背景と目的
東京都府中市。京王線府中駅前に立つと、ケヤキ並木の素晴らしい景観が見通せます。大國魂神社につながるこの馬場大門ケヤキ並木は、今から約970年前、東北地方を戦場にした「前九年の役」で源氏の名を高めた源頼義・義家父子が1,000本の苗を贈ったのが由来の一つとされています。
今は国の天然記念物に指定されていますが、最長樹齢600年の木々には弱ったものも見られます。東京都立農業高の生徒たちは、このケヤキの保護や更新活動を行うため、2018年から「ケヤキプロジェクト」に取り組み始めました。
馬場大門ケヤキ並木は、枝が広がり過ぎず真っすぐ伸びるのが特徴です。府中市の担当者から「景観を保つには、同じ並木の種から育てた苗木を植えるのが最適」と聞いた生徒たちは、落下したケヤキの種子を採取して苗木を育てる活動を開始。初めのうちは思うような結果が得られず「このままではプロジェクトが失敗に終わってしまう」と不安に襲われました。それでも諦めず、約5,000粒ものケヤキの種子の分析を続け、馬場大門ケヤキ並木周辺の環境調査も重ねた結果、なるべく自然界に近い状態で生育させることを重視し、ケヤキ並木周辺の土壌に近い土を用意することで、馬場大門における発芽の特性を導き出していきます。
学校の圃場で発芽した苗を定期的に調査し、2023年3月には、多くの市民や新聞社が見守る中、約6mに成長した木を馬場大門ケヤキ並木に植樹しました。
地域や地元小中学校と連携した取り組みも広がっています。府中市と同校は、2021年3月にケヤキ並木保護更新プロジェクトの連携協定を締結。これにより、地元の小中学校や府中市民と連携した活動ができるようになりました。地元の小中学生とともに種子の採取活動を行い、連携活動初年度に集めた種子と落ち葉は400袋(40Ⅼ入り)。大量の落ち葉の利用方法として、種子を除いた葉を腐葉土にする研究も進めました。地域の課題である、小学校から排出される芝刈りごみとケヤキの落ち葉を混ぜ、堆肥化することに成功。2023年6月には、この堆肥を馬場大門ケヤキ並木に還元しました。
府中観光協会と協力し、生徒たちが案内役を務める「ケヤキガイド」も展開中です。生徒たちが計画したプランに沿って、馬場大門ケヤキ並木について説明を行うガイドツアーを通じて、府中市の新たな観光資源化にもつなげています。
保護更新プロジェクトであっても、生徒たちはケヤキのことだけを考えているわけではありません。生徒たち自身が植えたケヤキが数百年、数千年と維持管理され、府中市のシンボルとして多くの人に長く愛されるために、地域ぐるみの「ケヤキネットワーク」を広げています。

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