地域農業47色
第24回 多角的な農業者支援を展開/学校給食を通じた地産地消に力
岐阜県JAグループの取り組み
① 多角的な農業者支援を展開
■取り組み概要
岐阜県JAグループは農業者支援を多角的に展開しています。生産資材の価格高騰対策は独自の特別融資を用意し、借り入れをした農業者の利子負担を軽減する取り組みを進めています。次代の人材育成も狙ったスマート農業支援事業は、JAと、県内の学校で農業を学ぶ生徒向けにそれぞれ実施、担い手らの要望に応えた農機具などの購入助成事業も継続しています。
■JA岐阜中央会の櫻井宏会長より
生産資材の価格高騰に対する「特別対策融資利子補給」は生産資材の価格高騰が続く中、国からの支援が十分とは言えず、その穴埋めをどうするかと検討し、次の支援段階を待つ余裕もなかったため独自で始めました。JAの組合長ら現場からの、資金繰りに困っている農家をどうにかしなければならないとの声にも後押しされました。
2022年8月から始めた利子補給は初年度、10億円の枠組みで開始。現場から継続してほしいとの要望もあり実施要領を若干変えて昨年8月から第2弾として5億円を追加しました。生産資材にとどまらず物価高などが続き、現場では本当に大変な状況が続いています。畜産・酪農業では毎日、牛に与える飼料の価格の上昇が経営を圧迫しています。ここでJAグループが踏ん張らなければ地域農業が破綻してしまうとの危機感を募らせています。
一方で、現場では資材を輸入などに頼らずに自ら、もしくは国産でまかなったり、コストを削減したりする工夫が求められています。地元のJAぎふでは2024年度から有機農業に関する圃(ほ)場での実証試験に乗り出しました。水田と畑地に区分けした取り組みで、農家にも加わってもらっています。価値を高めた価格での販売など今後の課題はありますが、環境負荷を軽減する取り組みとしても若手農家らを中心に有機農業への関心は高いようです。
情報通信技術(ICT)や人口知能(AI)を活用したスマート農業支援事業は農業関連学校とJA向けにそれぞれあります。農業関連の学科を置く高校や農業大学校、国際園芸アカデミーを対象にした事業は学校の授業に取り入れてもらう支援ができればとの思いがありました。就農形態も親元や新規だけでなく雇用という選択肢もあるので、学校で少しでもノウハウを身に付けてもらいたいとの期待もあります。組合員農家らを現場で支援するJAも機器やシステムなどを導入し効果を実証、スマート農業の現場普及への後押しを目指します。地域の中核となる担い手らを対象にした農機具などの購入助成事業は8年目になりました。助成限度額はありますが利用を待ち望む希望者がいる根強い需要のある事業です。こうした事業はグループ内で常にコミュニケーションを取り連携を強めているからこそ展開できます。
② 学校給食を通じた地産地消に力
■取り組み概要
学校給食を通じた地産地消の推進にも力を入れています。県産米の消費拡大から始まった取り組みは地元産農畜産物に広がり20年近くになります。児童・生徒に食を選択する力を養ってもらうとともに県産農畜産物のファンを増やし継続的な消費拡大を図る狙いがあり、地元産食材のPRの機会につながっています。
■櫻井宏会長より
学校給食での県産農畜産物の活用は、児童・生徒を含めた消費者に向けたPRの場になると考えています。特に学童期に、農家はもちろんJAを知ってもらう機会をつくることは食農教育の一環にもなります。こうした思いもあり、JAグループは行政と一体となり県学校給食会に対し学校給食で使う県産農畜産物の購入経費の一部を助成しています。2006年度から始まった現行の事業で岐阜県JAグループは毎年1300万円ほどを負担しています。
取り組みの始まりは米の消費拡大だったのですが、小麦の価格が上がった際には米の利用拡大への風を感じました。小麦アレルギーのある子どもへの対応としてもグルテンフリーの観点からもっとPRすべきですが、業界のバランスを考えると難しい部分はあります。
そんな中、スーパーの売り場から米がなくなる事態が2024年の夏に起こりました。価格も上がったと指摘を受けていますが、報道によると、茶わん1杯の価格はわずか40円といわれています。これに対しパンは1個100円を出しても買えません。ふだんはそこまで計算する人が少ないので、こうした事実を食農教育として学校給食を通じて児童・生徒に伝えていくべきだと考えます。
全国のJAグループに伝えたいことについて、櫻井会長に伺いました
農業振興は当然の業務として取り組みますが、農家が栽培・収穫した農畜産物の販売戦略もしっかりと立てていかなければなりません。地産地消の農畜産物を「作ったので食べてくださいよ」と言っても、消費者にそっぽをむかれてしまったら、にっちもさっちもいきません。消費者が望む農畜産物を生産するマーケットインの考え方を生かしてこそ、「国消国産」が実現できるのではないでしょうか。
マーケットインといえば、農家と消費者の交流拠点のひとつ、農産物直売所には期待をしています。作り手の顔が見える安全・安心の観点から人気がある傾向は続いており、定年帰農の人や畑で少し野菜づくりをしている多様な作り手が売り場に出荷し、多少なりとも売れる喜びを実感してもらう場になっています。消費者との対話や反応を通じて、求められている品目や品種の導入に挑戦する農家もいます。所得の大幅増とまでいかないとしても、農地の維持という面では効果があります。
一方で、農畜産物を生産する農家が再生産できる価格を形成する環境整備が重要です。JAグループとしてできることは何か。それは消費者に理解を求める運動を絶え間なく進めることです。人は食べなければ生きていけません。安全保障は武器よりも先に食料のはずですが、残念ながらこれまでは横に置かれてきた印象が強いです。
食料の安全保障を確保するために農業を継続していく必要性を地道にあらゆる方面に働き掛けを続けなければなりません。消費者との接点を持つ講演会やセミナーなどを引き続き企画し広く訴え続けていくことが重要です。
一方で、作り手である農家は、生産コストを下げる努力とともに栽培にかかっている経費などを消費者に説明し、理解醸成を図っていかなければならない時代に入りました。地域農業の維持・発展に向けて、農業所得を上げて再生産できる体制づくりが求められます。