地域農業47色
第31回 アンバサダー軸に食料安全保障訴え/協同組合間連携を生かし新たな価値を創出
JAグループ香川の取り組み
① アンバサダー軸に食料安全保障訴え
■取り組み概要
JAグループ香川は、食と農の重要性を発信してもらう「食料安全保障アンバサダー」を軸にした活動に力を入れています。適正な価格で食料を確保できる社会の実現を目指した独自の取り組みで、アンバサダーは活動の場を広げています。
■JA香川中央会の港義弘会長より
食や農を広く考えてもらうために目新しくて楽しいことができないか、という発想で考案し2022年度から始めました。時代が変わり、農業に触れる機会のない年代が増える中、関心を高めてもらう工夫が必要だったからです。アンバサダーはJA厚生連の理事長や香川大学で学長を務めた医師と、JA香川県の酪農部会長としても活躍し循環型農業に取り組む酪農家、JAの女性部長を務め過疎が進む地域で移住希望者の支援を含め多彩な取り組みを展開する農家の計3人に担ってもらっています。
農業現場の実態を知らない人が多いからこそ、経験に基づく事例を盛り込んだ講演は参加者の興味や関心を高めています。特に学生をはじめとした若年層の心に響いているようです。参加者と意見交換をしてみてはどうか、現地の見学を組み合わせて講座を開けないか、などの声も上がっており、実現の可能性を探っています。実現すれば、アンバサダーと参加者がともに楽しんだり、食や農に対する思いを深めたりできるのではないでしょうか。国内農業の大切さを理解し、食べて応援してくれる人が少しでも増えることに期待しており、各県でもぜひ取り組んでほしい、お勧めしたい活動です。
高齢になった生産者が農業を辞めてしまう傾向は香川県でも強まっており、担い手確保が最も大きな課題です。60歳で退職して農業を始める層に期待した時代もありましたが、定年延長により流れが変わりました。65歳や70歳になって仕事を辞めて就農する選択は難しくなりました。
一方で、国内需要が高まり輸入品との競争力が強いブロッコリーの安定供給による自給率向上を目指し「日本一」の産地になるのを目指す機運が高まっています。品質へのこだわりや早取りの徹底、契約栽培などを進めた産地づくりをしてきましたが、新規就農者でも栽培に取り組みやすい品目であり、あらためて多くの人に営農に関わってもらうきっかけにしたいと考えています。

② 協同組合間連携を生かし新たな価値を創出
■取り組み概要
協同組合の価値や役割を広く知ってもらおうと、香川県内の関係機関で構成する「かがわ協同組合連絡協議会」を設立して12年になります。連携を機にJAグループ香川は生活協同組合「コープかがわ」とタッグを組んで事業を展開するなど、新たな価値を生み出しています。
■JA香川中央会の港義弘会長より
協同組合が社会で果たす役割などを広く知ってもらおうと、JAグループ香川もさまざまな手法を考えて活動を進めてきました。協議会の活動を通じて挑戦のチャンスが生まれ、新たなつながりができたのは確かで、場合によっては包括連携協定を結んだりして事業を展開するようになりました。手を携えた取り組みによりJAの存在意義も高められたと思っています。
生活協同組合「コープかがわ」との連携は特に強まりました。お互いの特性を生かして実績を積み上げています。共同事業ではJAの施設の敷地に生協の共同購入商品の受け取り場所を設けたり、JAの農産物直売所の敷地に生協の店舗を開いたりしたほか、生協の店舗にJAの産直コーナーの設置や県産食材にこだわった商品の開発にも至っています。家庭で余っている食品などを持ち寄り寄付する「フードドライブ」活動もJAの女性部と生協が合同で実施するなどの交流を深めており、認知度が高まっているようです。生協とのこうした取り組みを続ける中で、協同組合への組合員の帰属意識の高さなどの気づきにもつながっています。
「国際協同組合年」を迎えた今年、あらためて訴えたいのは、協同組合は将来も存続していく組織であることです。ただ従来のやり方に固執していては駄目で、さまざまな協同組合と連携して取り組みを一層進めるべきだと思います。JAという組織の中の仕事をこなすだけではなく、将来の協同組合や地域をつくっていくイメージで連携して取り組むことができれば楽しくなるのではないでしょうか。もはやJAだけで自己完結できる時代ではありません。連携や交流により所属組織の足りない部分が分かるし、逆に面白い部分も分かります。協同組合間連携はこうした気づきにつながっていくような気がしています。

全国の皆様に伝えたいことについて、港会長に伺いました
JAは、地域の農業を守るとともに地域を活性化していく主役になるべき組織です。現場での日々の業務は、目の前の課題解決のためのものが多く、その実績の積み上げがJAの力になっているのは確かです。しかし果たしてこれでいいのでしょうか。大きな夢を持ち、組織全体として目標を持ってともに進むことができれば何か面白いことができると私は思います。組織内にとどまらず農業を含めて地域の活性化につながり、日本を元気にできるのではないかという思いを強めています。
大きな夢を持つにはどうするか。手法のひとつが、協同組合をはじめ他業種との連携などを含めた挑戦です。後継者対策など、共通の課題もあります。競合しない範囲内で協業できるところは協業する。そうすれば将来を見据えた形で進めていくことができるかもしれません。
世の中の流れが早く、従来のまま時代に対応せずに進んでいけば、組織は衰退していくことになるでしょう。逆に言えばこの環境だからこそ大きく変われるタイミングであるとも言えます。今こそJA全中を中心に再結束していかなければなりません。目先のことで精いっぱいになりがちですが、踏ん張って知恵を出し合い、夢を語り実現に向けた道筋を打ち出すべきです。難局を乗り切れれば、JAグループがワンランクアップできるはずです。
風を読んで情勢をうまくキャッチした発信が求められています。併せてJAグループが目指す将来のビジョンを語らなければなりません。夢に向かって踏み出そうとしても、検討や課題解決ばかりやっていては後れをとってしまうし、新しいアイデアは出てこない。課題を解決することはもちろん大事なのですが、新しい目標に向かっていくイメージが重要です。組織が変わるためには、例えば、民間の経営手法を参考にしたり、学んだりしたいものです。
