2025年は、国連が定めた「国際協同組合年」。「国際年」とは、1年間を通じて各国が共通のテーマについて呼びかけや対策を行うものであり、国連総会で決められる。協同組合がテーマに選ばれるのは、2012年に続き2度目であり、国際社会からの支持・関心を集めていることが伺える。
そのテーマである「協同組合」とは何か?
本書は、「協同組合」という言葉を耳にしたことはあるが、それが何であるかよく分からないという人を対象に、ゼロから優しく解説している。もちろん、協同組合に慣れ親しんだ人にとっても、最良のテキストになっている。
JA(農協)、生協、ワーカーズコープ(労協)など日本には様々な協同組合があり、組合員数は延べ1億820万人を誇る。協同組合が扱う共済に加入する人は約3,700万人と、日本国内人口の3分の1を占めるほど身近な存在である。本書では、それぞれの協同組合がどのような事業を行っているのか具体例を交えて解説している。
協同組合が結成された背景を解説し、協同組合の特徴について整理する。出資者であり、経営者であり、利用者である組合員が協同組合の主人公であること、協同組合は様々な人々の願いを実現する目的を持っていることを解説している。
協同組合は、単なる各組織の事業運営にとどまらず、環境問題や貧困・飢餓など社会問題に立ち向かい、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する取り組みを進めている。一方で、大規模化の進展により組合員との距離が離れてしまうといった様々な問題点を抱えている。本書は、協同組合が置かれているこうした現状を整理し、今後協同組合がすすむべき道を考える視座を与えている。
「国際協同組合年」である2025年。本書を手に取り、協同組合について知ることが、現代社会を考える新たな一歩になるであろう。

(評 JA全中広報部)