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若者がみつめる農・食

農・食の未来を拓く高校生・大学生の研究

第6回(2022年度)全国高校生 農業アクション大賞 奨励賞受賞
高オレイン酸ヒマワリ栽培で景観改善と飼料生産の両立
ーヒマワリで実現した、牛肉のおいしさと夏の美しい風景ー


~青森県立三本木農業恵拓高等学校 産業動物研究班~
JA全中

「全国高校生 農業アクション大賞」について
 
 JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
 農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」、「奨励賞」を贈ります。

 青森県十和田市は県内一の黒毛和種の飼育頭数を誇る畜産業のまちです。2019年の「和牛甲子園」に出場した青森県立三本木農業高等学校の生徒たちが、そこで感じた一つの疑問が、活動のきっかけになったそうです。
 自分たちが育てたA5等級の牛肉を食べた生徒たちは「脂のしつこさが強く、おいしいとは感じられなかった」と言います。「本当においしい牛肉をつくろう」――。青森県立三本木農業恵拓高校は2021年に旧三本木農業高校から生まれ変わった存在ですが、この目標は、産業動物研究班のメインテーマとして継承されました。
 生徒たちは、牛の脂肪に含まれるオレイン酸の働きに着目しました。融点が13℃と低いため口溶けがよく、甘味を感じやすい脂肪酸です。悪玉コレステロールを下げる健康効果もあります。鳥取、大分、石川県のブランド牛はオレイン酸の割合が55%を超していることを知り、このリストに「十和田牛(十和田市の黒毛和種)」を加えることを目標にしました。
 脂肪中のオレイン酸の割合を高めるには、オレイン酸の多い飼料を牛に与えれば可能です。そこで、寒冷地での栽培に成功している北海道名寄なよろ市の高オレイン酸ヒマワリに着目しました。栽培条件や管理方法を研究し、JA十和田おいらせに依頼して土壌を分析。食害対策として発芽2週間後に燻炭くんたんを散布し、中耕除草を兼ねた培土を実施することで、収量の確保と種子に含まれるオレイン酸の割合を高めることに成功しました。第6回和牛甲子園に出品した2頭の牛のうち1頭のオレイン酸割合は、55頭中1位となる60.7%で、歴代最高値をマークしました。
 ヒマワリ栽培のもう一つの狙いは、景観の改善です。もともと名寄市でも、美しく活気のあるヒマワリ畑を夏の観光資源にしていました。学校のある十和田市内に約430haある耕作放棄地をヒマワリ畑にすれば、新たな観光スポットになります。生徒たちは、卒業生が経営する農場や牧場にヒマワリ栽培に協力してもらい、夏場の観光地に花を添える景観改善活動に取り組みました。さらに、経営難で廃止された十和田観光電鉄の廃線跡と学校の牧草地にも植栽を広げ、「ヒマワリロード」を誕生させました。
 「食育」にも活動を広げています。ヒマワリの苗を地域の保育園に配って園児らにヒマワリを育ててもらいました。ヒマワリの種で育った黒毛和種の肉を給食に使ってもらい、この取り組みの意義を、紙芝居を使ってやさしい言葉で園児らに語りました。

肥育牛の餌を計量して準備する様子査

ヒマワリの前で

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