地域農業47色
第42回 連合会を含む合併で体制強化/農業振興積立金を活用し支援充実
JAみやざき
① 連合会を含む合併で体制強化
■取り組み概要
県内13JAを合併して発足したJAみやざきは、今年3月にグループ内の調整や経営相談などを担う中央会、販売・購買事業などを手掛ける経済連、金融事業を展開する信連を統合し、「1県1JA」になりました。JAグループ宮崎としての基盤を強化し、将来にわたって地域農業を支えていく体制整備を進めています。
■JAみやざきの栗原俊朗組合長より
中央会や経済連、信連など連合会を含めた合併の可能性について、7年ほど協議を重ねてきました。農業を取り巻く環境の厳しさが増す中、地域のJAだけでは対応しきれない課題も、連合会も含めてスクラムを組めば乗り越えられるのではないか、経営基盤の強化を図れるのではないかと考えたからです。業務面でもJAと連合会で重なる部分があるとみて、連合会を含めた合併を選択しました。人口減少が進む中で、将来的に農家組合員の減少が見込まれることから、JA自体も変わっていかなければならないと受け止めています。
合併のスケールメリットを生かした事業展開は、最も重要なテーマです。畜産と園芸を中心とした全国有数の産地の維持・継続に向け、県域一体で販売・仕入れ・営農相談などの機能を高める「高機能化」に取り組み、産地としての競争力強化を進めています。あわせて、地域の実情に寄り添う「地域密着」の観点から、旧JAを地区本部として運営し、説明会や座談会などを通じて合併前の意思反映の仕組みを生かしながら農家組合員の意見を反映させています。
農家組合員からは「合併メリットを早く出してほしい」という声が多く寄せられている中、県域では「繁殖牛部会長会」を発足させたほか、園芸品目を網羅した新たな生産者部会「JAみやざき野菜活性化協議会」も立ち上げました。ブランドの信頼性を高めるとともに、経営の安定化と、持続可能な産地づくりを進めるねらいがあります。
② 農業振興積立金を活用し支援充実
■取り組み概要
JAグループ宮崎は、合併を機に設けた「農業振興積立金」の活用をはじめ、組合員支援の充実を図っています。営農活動で困っている農家組合員をサポートする取り組みを展開し、合併によるスケールメリットを生かした対策を継続しています。
■JAみやざきの栗原俊朗組合長より
今回の合併に伴い、財政面での組合員やJA間の公平性を確保するために設けた「農業振興積立金」の活用は、2024年度から開始し一定の評価をいただいています。
農業振興積立金は、合併時に各JAの資産状況を丁寧に調整しながら、将来の農業振興や担い手支援を計画的に進めるために設けた財源です。2024年度には、本店と地区本部の双方でこの財源を活用し、肉牛消費拡大支援、肥料・農薬・資材高騰対策、営農用重油の価格高騰対策、茶の出荷奨励助成など現場の実情に応じた幅広い支援を行いました。
肉牛消費拡大支援を行ったのは、需要の伸び悩みなどから肥育農家の方々が不安を抱える場面が増えていたためです。少しでも安定して出荷を続けられるように、消費拡大につながる取り組みを応援したいという思いで実施しました。いずれの対策も、農家組合員の所得向上の一助につながったと考えています。
今年度は肉用牛肥育経営安定対策や自給粗飼料の補完対策、宮崎牛繁殖基盤維持導入支援などを実施しており、生産者を支える取り組みを幅広く進めており、年度末にかけてさらに支援を充実させていく見込みです。
来年度に向けても、厳しい農業経営の実情を踏まえた継続的な対策を計画しており、農業資金の借入負担を軽減する利子補給や、高騰が続く燃料価格の一部助成についても、要望が高まっていると受け止めています。
販売面では、スケールメリットを生かした体制づくりが極めて重要です。選果場や家畜市場の再編に向けても協議を進めており、県内には更新が必要な施設もあることから統合・集約して最新の設備を導入し、さらには輸送体制の効率化も図りたいと考えています。こうした取り組みは、地域農業を支える担い手のサポートにもつながると考えています。併せて、次代へつなぐ「みやざきブランド」の確立と、幅広いファンの開拓にも力を注ぎます。これまで築き上げた価値や品質の向上に加え、長年培ってきた異業種連携の実績を生かしながら進めていきます。
営農継続のためには、適正価格の実現も欠かせません。特に量販店や消費者への理解促進を重視しています。物価高が続く中、消費者の皆さまはできるだけ安い価格を求める傾向にありますが、生産コストの高止まりが続く現場の厳しさについてもご理解をいただけるよう、生産現場の情報発信に一層、努めて参ります。
全国のみなさんに伝えたいこと
JAみやざきは新たな一歩を踏み出したところですが、合併は目的ではなく、組合員の所得向上と生産基盤の維持・強化を次世代に確実に引き継ぐための手段だと考えています。地域ごとに蓄積された経験と知恵を結集し、県域が一体となった体制で課題解決に取り組みます。
農業を取り巻く環境は、資材高騰や気候変動、担い手減少など、多くの課題を抱え、かつてない厳しさに直面しています。今年度からは「食料・農業・農村基本法」に基づく新たな基本計画が始まり、農業の構造転換と経営体の強化が全国的にも進み、日本農業の転換点になるとも考えます。
JAの使命は、組合員の皆さんが安心して生産を継続し、安定した所得を確保できる仕組みを築くことにあります。農業は地域の基盤であると同時に、国民の食卓を守る重要な産業です。したがって、生産基盤を維持し、良質な農畜産物を安定的に供給していくことも、JAとして果たすべき大きな責務だと考えています。JAみやざきでは、合併によるスケールメリットを最大限に生かし、生産コストの低減と有利販売の実現を図り、「稼げる農業」「持続可能な農業」の両立を目指して、組合員の所得向上を着実に支える体制づくりに努めています。
ただ本格的な冬場を前に懸念していることがあります。ガソリン税の旧暫定税率が廃止される方向になりましたが、重油や軽油、灯油などの価格動向が気になります。例えば、重油を使わなければ施設園芸でキュウリやピーマンを育てることはできません。こうした産地の現状を改めて知っていただきたいのです。
農業は国の食料安全保障と地域経済を支える基盤産業です。生産現場の持続性が確保されてこそ、地域の雇用や環境、文化も守られます。消費者の皆さまには、国産農畜産物の価値、そして生産者の努力の背景を感じ取っていただけますと幸いです。
食と農、暮らしと未来を守るためにJAみやざきは協同の力で使命を果たし、組合員の皆さまと共に所得向上と経営の安定、豊かな地域社会の実現に向けて、力強く歩みを進めていきます。