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海外だより

グローバルな視点で日本農業やJAを見つめるために、全中ワシントン駐在員による現地からのタイムリーな情報を発信します。

アメリカ人のための食事ガイドラインについて

[April/vol.178]
田代誠吾(JA全中 農政部 農政課〈在ワシントン〉)

 「アメリカ人のための食事ガイドライン」は、連邦政府の栄養プログラムの基礎であり、健康の増進、食事に関連する慢性疾患リスクの低減、栄養必要量の充足に向けた食品ベースの推奨を示している。同ガイドラインは、1980年に初めて発表され、1990年に議会は関連する法律を可決し、アメリカ農務省(USDA)とアメリカ保健福祉省(HHS)が5年ごとに共同で発表することを義務付けた。
 2026年1月に最新版(2025-2030)が公開され、近年は政策担当者・専門職向けの性格が強かった同ガイドラインが今回は25年ぶりに消費者に直接アドバイスを提供する形を採っている。そしてそのメッセージを一言で言うならば、「Eat real food(本物の食品を食べましょう)」というシンプルなものである。
 さて、本号では、アメリカ人のための食事ガイドラインについて紹介したい。

最新版(2025-2030)の概要

 最新版では、たんぱく質、乳製品、野菜、果物、健康的脂肪、全粒穀物を優先し、高度加工食品、添加糖、精製炭水化物を大きく減らす、という方向を明示し、政府はこれを「連邦栄養政策の大きなリセット」と位置付けている。この背景には、本年1月号で紹介したアメリカにおける肥満等の慢性疾患の広がりが社会問題となっていることがある。最新版の概要は以下のとおりである。

1. 食事の基本構成
 最新版は、健康的な食事の中心に、たんぱく質/乳製品/野菜/果物/健康的脂肪/全粒穀物の6群を置いており、ここでは、「何を減らすか」より先に、「何をしっかり食べるか」を前面に出している。

2. たんぱく質:毎食で優先
 毎食で高品質・栄養密度の高いたんぱく質を優先。たんぱく源としては、動物性では卵、家禽かきん、魚介、赤肉、植物性では、各種の豆類(いんげん豆、レンズ豆、大豆など)、ナッツ、種子を挙げている。

3. 乳製品:無糖のフルファットを前面化
 乳製品は、「無糖のフルファット乳製品」を含めるよう勧めている。最新版の象徴的な特徴の一つで、政府発表でもその旨を主要メッセージとして前面に出されている。

4. 野菜・果物:丸ごとを重視
 野菜・果物は、多様で色のある、栄養密度の高いものを薦め、できるだけ丸ごとの形(whole form)で食べることを重視している。冷凍・乾燥・缶詰でも、添加糖がないかごく少ないものなら選択肢になる。

5. 脂質:全食品由来を重視しつつ、上限も維持
 脂質は、肉、魚介、卵、ナッツ、種子、フルファット乳製品、オリーブ、アボカドなど、全食品由来の脂肪を重視している。調理油としては、必須脂肪酸を含む油(例:オリーブ油)を優先しつつ、バターや牛脂も選択肢に挙げている。ただし同時に、飽和脂肪酸は総摂取カロリーの10%を超えないと明記。

6. 全粒穀物:重視しつつ、精製炭水化物を強く抑制
 穀物は、食物繊維の多い全粒穀物を優先し、白パン、包装済み朝食食品、クラッカーなどの高度加工された精製炭水化物を大きく減らすこととしている。

7. 加工食品・添加糖:かなり厳しく抑制
 最新版は、高度加工食品の抑制をかなり強く打ち出している。例として、チップス、クッキー、キャンディーのような、塩分や添加糖の多い食品を避けるよう求め、人工香料、石油由来色素、人工保存料、低カロリーの非栄養甘味料を含む食品・飲料も制限対象に挙げている。
 添加糖については、「推奨される量はない」としつつ、実務的には1食当たり10g以下という目安を置いている。

8. 水分、ナトリウム、アルコール
 水分補給では、水(炭酸水を含む)と無糖飲料を選ぶよう勧め、ナトリウムは、年齢別に目安を明記。アルコールは、前回の「男性2杯、女性1杯」というような形ではなく、「より少なく」と整理された。

 このほか最新版には、ライフステージの指針や慢性疾患およびベジタリアン等に向けた助言が盛り込まれている。

農業団体の受け止めと今後

 品目横断でアメリカ最大の農業団体である全米農業連盟(American Farm Bureau Federation)は、同ガイドラインについて、高品質たんぱく質、乳製品、生鮮果実・野菜の価値を認めたとして歓迎し、今後の食政策判断が科学に基づき、消費者に分かりやすいことを求めている。
 同ガイドラインは、連邦栄養政策の上位の基準文書として使われるため、今後、教材の改訂や、必要に応じた規則改正を通じて、学校給食等の制度運用への反映が検討されていくとみられる。

(アメリカ人のための食事ガイドライン表紙
出典:連邦政府の同ガイドライン公表ページより)
https://cdn.realfood.gov/DGA.pdf
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