「全国高校生 農業アクション大賞」について
JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」、「奨励賞」を贈ります。
日本はワインブーム。国内の生産量は、需要に追い付いていないと言われています。意外と知られていませんが、醸造用ブドウの栽培面積は北海道が全国1~2位を争い、全体の約3割を占めています。その中でも、降水量が安定している空知地方は新たな適地として注目されているのですが、課題があります。日本各地で栽培が広がっているため苗木の確保自体が難しく、さらに高額な苗木を数百本単位で購入しなくてはならないのです。
ならば自分たちで苗木の栽培技術を確立し、岩見沢農業高校が栽培拠点になって空知地方に安定供給していこう――。同校の生徒らは目標を定めました。化学肥料に頼りがちなブドウ栽培ですが、ここで環境保全型の栽培方法を目指せば、SDGs(持続可能な開発目標)や世界基準の農業認証である「グローバルGAP」に適う価値も発信できます。
挿し木や茎頂培養に取り組みました。JAや地元農家との連携でブドウ畑を造成し、ピノ・ノワール(赤)やシャルドネ(白)、ピノ・グリ(白)など流通量の多い5品種を栽培しました。発酵鶏ふんや魚かすなどの有機質肥料を使い、雪害や干ばつ対策のため、苗は45度の深植えにしました。針金に枝を誘引することで垣根のようにして育てます。細胞膜を硬化することで害虫を抑止する効果があるカルシウム施肥に取り組み、脱農薬栽培への道筋をつけました。
バイオ技術も駆使しました。品質と収量の低下を防ぐにはウイルスフリー苗の生産がカギです。「茎頂培養」は茎頂を無菌状態で抽出し、無菌培地で培養、植物体を再生する技法です。これとは別に、ウイルスフリー苗を、短期間に大量生産できる挿し木で増殖。北海道中央農業試験場の指導で、成功率90%以上を達成しました。この取り組みは日本土壌肥料学会の機関誌に取り上げられました。ウイルスフリー苗の大量栽培を達成することで、地域の課題である苗木不足の解消が視野に入りました。
2024年には念願の初収穫を果たしました。地域のワイナリーと協力して、25年秋には瓶詰ワインを販売する予定です。3年がかりで目標が形になりました。「何事にも挑戦するのが高校生だ」。生徒らは力を込めます。

醸造用ブドウの挿し木苗の定植

醸造用ブドウ「ピノ・ノワール」の収穫
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