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若者がみつめる農・食

農・食の未来を拓く高校生・大学生の研究

第6回(2022年度)全国高校生 農業アクション大賞 準大賞受賞
高校生がつなぐ持続的な河内晩柑かわちばんかん栽培
―河内晩柑低樹高化プロジェクト―


~愛媛県立南宇和高 河内晩柑救い隊「平山軍団」~
JA全中

「全国高校生 農業アクション大賞」について
 
 JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
 農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」、「奨励賞」を贈ります。

 柑橘かんきつ王国と呼ばれる愛媛県。南予地方に位置する愛南町の特産は、グレープフルーツに似た河内晩柑かわちばんかんです。半世紀前から、木を大きく育てることで収穫を増やすことを目指してきました。今は農家の高齢化と後継者不足の時代に入り、逆にこれが問題になっています。
 樹高は3~4mにもなり、農薬散布や収穫作業の負担が重くのしかかります。農薬がかかりにくいため病斑びょうはんの果実が増え、生産意欲の低下にもつながっています。町の高齢化率は45%を超えており、愛媛県立南宇和高の生徒たちは、持続可能な栽培環境をつくることが急務だと考えました。「『毎日行きたくなる果樹園』を目指そう」。意見は一致しました。
 栽培環境を改善するため、県南予地方局の協力で低樹高栽培に取り組みました。まず現状の確認です。学校の果樹園をドローン撮影した写真を画像アプリで分析し、高樹高や密植樹区の割合を算出。地上の実地調査と合わせて、剪定せんていや間伐の計画を決定しました。
 カギになったのは剪定技術の向上でした。剪定は、一気に落とせるのこぎりを中心に行い、はさみの使用は枯れ枝除去や込み枝、逆さ枝などの除去に限定。これにより作業時間を4分の1程度に短縮することができました。また園地を3D(3次元)画像にすることで一本一本の樹形や樹間を可視化し、栽培の正確化につなげました。
 こうして栽培された果実は、傷みのない正品の割合が約15%高まりました。剪定により樹体の内側に光が届くようになり、光合成の働きで養分を多く得ることができるようになったためだと考えられます。低樹高化により低い位置の枝が充実し、高い脚立での作業が要らなくなりました。高樹高・密植樹区の場合、100の果実を収穫するのにかかっていた時間は約600秒(コンテナ・脚立)でしたが、低樹高・独立樹区の場合は約400秒(接地)に減らすことができ、1時間当たりの収穫数は1.7倍に増えました。収入も396万円に落ち込んでいた2020年度から、2024年度実績で435万円に回復しました。
 地域農家への技術講習会の開催や経営モデルの調査研究にも取り組んでおり、低樹高栽培を地域全体に広げていくことがこれからの目標です。

樹高測定とドローンを活用した密植・樹形調査

樹高測定の様子

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