「全国高校生 農業アクション大賞」について
JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」「奨励賞」を贈ります。
進化論で知られるチャールズ・ダーウィンは、「ミミズと土」という本を著しています。キューバでは、ミミズを使った有機農業先進国への転換で、自国の危機を救ったという史実もあります。
日々、土壌環境について学んでいる、栃木県立栃木農業高校 植物科学科の生徒らは「ミミズは土の中のドラゴン」という言葉があることを知り、土壌改良に貢献するミミズのパワーに着目しました。
ミミズはそこら中にいる。これを有機農業に活用できれば、持続可能な農業の推進につながるのではないか――。慣行農業と有機農業の土壌に与える影響の違いについて実験や研究を重ねている生徒たちには、興味深いテーマでした。肥料など生産資材の高騰に直面する日本の農業にとって、自然由来の有機肥料の活用は新しい可能性にもつながります。
耕作にトラクターを使わない有機不耕起による圃場、有機緑肥による圃場、通常の慣行栽培による圃場。この3つの農地の形態ごとに、ミミズの生態を調査しました。土壌をサンプリングし、有機物や緑肥による土壌の保湿がミミズの生育を促していることを突き止めました。ミミズがいる残渣置き場や落ち葉からは、農作物の生育を促すカルシウムやリン酸などが検出されました。これは、ミミズのふんの効果だと考えられます。コマツナを使った生育試験では、化学肥料を使った栽培に負けない効果がみられました。自分たちのこうした研究で、有機農業につながる効用を実証しました。
実践活動にも取り組みました。家庭菜園での普及を目指し、「どこでも手軽にミミズ堆肥」をテーマに、ミミズ堆肥フロースルー型を製作。農地で廃棄される野菜くずや食品残渣などを堆肥化するもので、ミミズの量産飼育が可能になります。
校内や近隣の小学校でも活用しています。「ミミズ堆肥」の効用をアピールすることも大切だと考えた生徒たちは、小学6年生を対象に出前授業を実施。7割の児童が「ミミズの印象が変わった」と回答しました。
さらに地域のコミュニティーセンターで一般の人を対象に研究成果を発表。地元企業にも評判が広がり、キノコ生産会社の廃菌床培地や、モヤシ加工会社から廃棄緑豆の定期搬入が実現しました。ミミズを量産することが今後の課題です。


「土の中のドラゴン」と呼ばれるミミズの可能性を探る
RANKING
人気記事ランキング