UターンやⅠターンという言葉が一般化した今日、農村での関心をいだく人は多くいる。実際に、農業を職業として選択する新規就農者は、全国で約4万人を数える。しかし、就農から10年以内に、農業で生計を立てている人はそのうちの4割に満たないという。この結果からは、せっかく職業として農業を選択したにもかかわらず、想定していたほどの成果を得ることができない新規就農者が一定割合存在することが伺える。
本書は、農業経営コンサルタントとして多くの生産者の経営を分析してきた著者の経験に基づき、①農業生産、②販売、③お金と時間、④農業経営、⑤マインド等の5つの観点から、「金持ち農家」と「貧乏農家」の違いを比較している。こうした対比により、「金持ち農家」の行動や考え方の特徴を明らかにしている。
例えば、農作業の基本となる雑草管理。「金持ち農家」は、定期的な草刈りや細やかな耕運により常日頃から雑草を発生させないよう気を配っている。一方で、農業生産が下手な「貧乏農家」は、雑草の管理をできておらず、病害虫の発生による収量低下や農薬代の増加を招きさらに効率の悪い農業生産になってしまう。
本書で紹介されている「金持ち農家」の特徴は、いずれも特別な技術や知識が求められるものではなく、ちょっとしたポイントである。こうした先達の教えを真似て実践を続ける。その辛抱強さこそが「金持ち農家」への道なのではないか。

(評 JA全中広報部)