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食料安全保障と農政改革

荒川隆 著
JA全中

 四半世紀ぶりの改正となった食料・農業・農村基本法やそれに基づく基本計画の策定、昨夏以来続く「令和の米騒動」など、近年の農政は目まぐるしく情勢が変動している。
 本書は、農水省OBの筆者が、「日本農業新聞」と時事通信社「Agrio」に連載した、一般読者に対し農政課題を分かりやすく解説するコラムを再編したものである。

 本書では、食料・農業・農村が置かれている現状を改めて整理し、農業政策の基礎知識を解説する。次に、農協改革やJAの自己改革、米政策の変遷など、時の政局と合わせて事態とともに変化していく農業・農政の姿を解説する。また、食料安全保障の確保、適正な価格形成の実現、物価高騰といった近年の農政課題について、その基礎から解説している。

 また、37年間農政の中枢に身を置いていた筆者ならではの視点での解説記事も多い。例えば、食育基本法制定20年を前に「大人の食育」を考えるコラムでは、「牛乳を飲むと太る」という誤解を基に性年代別の牛乳消費量の差が生じていることを紹介し、正しい消費者理解につながる「大人の食育」を説いている。

 いまだ終息の気配がない「令和の米騒動」や石破政権による米増産の方針を聞き、農業・農政に興味を持たれた方も多いのではないか。今後の農政の在り方を射程に入れた、農業・農政の入門書として最良の書である。

(評 JA全中広報部)

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