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いま知りたいお米と農家の話

農山漁村文化協会 編
JA全中

 スーパーの棚が空っぽに―

 令和6年8月の「南海トラフ地震臨時情報」の発令を機に、全国のスーパーから姿を消した米。6年産米の出回りが本格化すると品薄状態は緩和されたが、店頭価格の高止まりは1年以上続いている。政府備蓄米の放出、カルローズ米の輸入、おこめ券の配布など、米への関心は値段そのものに留まらない。

 本書では、日本人とお米の関係性の深さを江戸時代から紐解き、米が社会問題として顕在化してきた歴史を振り返る。稲作に関する写真やイラストを随所に配置することで、初心者でも楽しみながら読み進められる工夫がなされている。同時に、歴史年表や「お米の歴史 ことば解説」なども収録されており、学びを深められる構成となっている。そして、現在の稲作経営状況を様々な数値をもとに分析し、米の生産量が不足していたこと、長年にわたる米価の低迷により離農が進んでいたことなど「令和の米騒動」の背景を探る。

 営農条件が異なる9人の稲作農家が考える、米の適正価格に関する寄稿を掲載し、生産者が納得のいく価格を考える。そのうえで、生産者が再生産可能な価格水準を探っていく。ある生産者は時給2,000円が望ましいと考え、別の生産者は田植え機や除草機などの生産機械の設備投資費を綿密に計算するなど、消費者が知りえない生産の「ウラ側」の数値を赤裸々に示している。消費者に対してあえて生産者が求める価格を提示することで、生産者・消費者双方が納得できる価格の実現を目指す試みは特筆に値する。

 また、農家が農業を続けられる仕組みを作るために、生産者・消費者が行うべき取り組みを提起する。消費者に対しては、都市と農村の血縁的な結びつきが弱まるなか、「かかりつけ農家」を探し新たな縁を結ぶことで、自ら農に触れる機会を創ることを提案する。「農家や田んぼとつながる方法&場所」を独自に掲載するなど、本書ならではの実践的なアプローチも見られる。一方の生産者は、「令和の百姓一揆」に代表されるように、農業現場の実態を自ら発信し、社会全体で農業に関心を持ってもらうことが重要ではないかとしている。生産者・消費者双方が、現状に甘んじることなく、自らアクションを起こすことが農業の将来に繋がっていくのである。

 「令和の米騒動」を機に、自明の存在とみなしていた食料や農業へ関心を抱いた消費者も多いのではないだろうか。一人ひとりの消費者が、農業の未来のためにできることは何かないか。本書はその小さな一歩を踏み出す勇気を与えてくれる。

(評 JA全中広報部)

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