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海外だより

グローバルな視点で日本農業やJAを見つめるために、全中ワシントン駐在員による現地からのタイムリーな情報を発信します。

DCで日本食を振る舞う

[September/vol.147]
菅野英志(JA全中 農政部 農政課〈在ワシントン〉)

 本年6月21日、アメリカの首都ワシントンDCにて、在米日本国大使館、農畜産業振興機構(alic)および本会の共催の下、「食と農を語る夕べ」レセプションが開催され、アメリカ政府・議会関係者、農業・貿易・食品関連団体、各国大使館関係者など約200名が参加した。
 本レセプションは、ワシントンDC在住の農業・食品分野の関係者に対し、日本の食や食文化、農業等に理解を深めてもらうことを目的とした歴史あるイベントで、2000年より開始された。新型コロナウイルスの影響による一時中断があったものの、昨年から再開し、今年で22回目を迎えた。アメリカ政治の中心地であるワシントンDCでの開催は、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市における一般消費者等向けのプロモーションとは異なる意義を持つ。

 レセプション冒頭のあいさつで在米日本国大使館の貞包さだかね隆司参事官(農林水産担当)は、日本食や日本の農畜産物の輸出拡大が近年の日本の重要なミッションの一つになっていること、DCエリアにおいても日本食が拡大していることに触れつつ、参加者へのお礼を述べた。
 レセプション会場では、定番の握りずし等はもちろんのこと、和牛肉の“串焼き”や、日本産米を使用したスライダー(軽く揚げたご飯をバンズの代わりに使用したミニライスバーガー)、輸出品目として近年注目度の高い冷凍焼き芋、日本酒を1合の缶にした株式会社Agnaviの“一合缶®”など、日本産農畜産物の輸出拡大を見据えた工夫を凝らした食事・飲み物が振る舞われた。

 参加者からの評判も上々で、食事や飲み物の品質の高さを称賛する声はもちろんのこと、和牛串のレストラン等での提供のしやすさ¹や日本酒缶のデザイン・手に取りやすさなど、味以外の部分に対する評価も得ることができたのは一つの収穫であり、レセプションは盛況のうちに幕を閉じた。

1 串状で商品が届くため解凍して焼くだけで提供可能。

お買い得な日本産米

 アメリカ産短・中粒種の昨年の生産量の減少や円安の影響により、アメリカ向けの日本産米の輸出は好調に推移しており、本年1~5月までの累計で、輸出数量は対前年同期比約2倍となっている。店頭価格もアメリカ産米と遜色のない水準で、“品質差”を考慮すれば日本産米は十分お買い得と言える状況となっている。他方、多くの日本人ならすぐ認識できるであろうこの“品質差”を、アメリカの消費者にどう浸透させていくかは、包装・表示等も含めて課題であるほか、本年秋以降、生産量が回復したアメリカ産短・中粒種が流通する見込みの中で、この間に日本産米をどの程度定着させることができるかは重要な課題となるだろう。なお、最近の実際の店頭価格の例は以下の通りである。

 

商品名

店頭価格(税抜き)

キロ単価

備考

日本産

北海道産ななつぼし

$34.99 / 5kg

$7.00

 

魚沼しおざわ産こしひかり

$25.99 / 5kg

$5.20

特売価格

(元値:$29.99 / 5kg)

新潟こしひかり

$21.99 / 5kg

$4.40

特売価格

(元値:$24.99 / 5kg)

アメリカ産

TAMAKI GOLD

$49.99 / 15LB

$7.35

 

玉錦 TAMANISHIKI

$49.99 / 15LB

$7.35

 

KOKUHO RICE ROSE

$30.99 / 15LB

$4.56

特売価格

(元値:$33.99 / 15LB)

NISHIKI PREMIUM RICE

$29.99 / 15LB

$4.41

 

雪花

$21.99 / 15LB

$3.23

 

※いずれも7月中旬、DC近郊の大手韓国系スーパー H Martにて筆者が調査したもの
※キロ単価は15LB=6.8kgで計算

「食と農を語る夕べ」レセプションにて日本食を楽しむ参加者(筆者撮影)
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