地域の元気を生み出すJA
合言葉は「取材即配信」!
2023年の11月、国連総会は2012年に続き、2025年を2度目の国際協同組合年にすることを宣言しました。
JAグループは、持続可能な地域社会をつくる日本の協同組合の取り組みについて、認知を高めていく絶好の機会として捉えてまいります。
今後、「協同組合」についての関心が高まることが想定される中、全国各地で「協同組合の力」を発揮しているJAの取り組みを紹介します。
1. 第38回JA広報大賞「総合の部」で大賞を受賞
JAふくしま未来は、JA全中が主催する全国のJAから優れた広報活動を表彰するJA広報大賞で毎年高い評価を受けている。受賞歴をみると令和3年度は「総合の部」準大賞を受賞、令和4年度・令和5年度は「審査委員特別賞」を受賞。令和7年1月には「取材即配信」を合言葉にした質の高い広報活動や組合長による組合員へのインタビュー動画などの取り組みが評価され、令和6年度JA広報大賞「総合の部」で大賞に輝いている。また、JA全中主催の令和6年度JAインスタコンテスト「写真の部」でもグランプリを受賞している。
2. 広報課の合言葉は「取材即配信」
JAふくしま未来が情報発信する広報媒体は、毎月発行の広報誌「みらいろ」と支店だより、コミュニティー誌「ぐーがる」、ホームページとSNS(公式YouTube「みらいろチャンネル」、Facebook、LINE、Instagram)である。マスメディア向けには日本農業新聞への記事投稿や地元紙やテレビ・ラジオ局へのプレスリリース・報道記者懇談会・記者会見などを実施している。
活用する広報媒体は多くのJAと同様だが、違いは情報発信のスピードの速さと量が圧倒的に多いことである。
これら広報課の取り組みを象徴的に表しているのが合言葉「取材即配信」である。
「取材即配信」の意味を企画部広報課の中野正博課長は「情報は鮮度が大切です。取材に協力いただいた組合員さんは報道されることを楽しみにされています。だからこそ広報活動のモットーは、すぐやる=『取材即配信』、『やる』か『やらない』かではない、『やらない』の選択肢はなし!『やる』か『すぐやる』かだ!」と話す。その言葉どおりInstagramなどは取材したその場で情報発信している。また、日本農業新聞への投稿も取材したその日のうちに行っている。もちろん「取材即配信」のための事前準備を行った上でのことだが、この一連の作業が広報課職員に徹底されている。
情報発信の量をみると、広報課職員は月10本以上の日本農業新聞への投稿目標を持っている。令和6年度の日本農業新聞への投稿本数は年間524本、このうち全国掲載は13本、東北トップ3段への記事掲載が95本と情報の量だけでなく質の面でも大きな成果を上げている。
また、福島県の日刊紙である福島民報と福島民友新聞の2社への記事掲載は年間312本である。この記事掲載を宣伝広告費に換算するとその効果は7,500百万円(1,741円/平方センチ:同JA調べ)に相当する。
その他、ホームページのトピックスは1日1件以上の更新を目標に毎日2本から3本の話題を更新し、年間で804本となっている。SNSの投稿数はFacebook・LINE・Instagramそれぞれ年間179回、57回、71回・ストーリーズ295回と原則取材した日に投稿している。
このように日々、多様な広報媒体を用いて広く内外に発信することで、組合員・利用者との関係強化と地域住民からの信頼と共感づくりを続けている。
3. 工夫を凝らした広報活動の取り組み
JAふくしま未来にはJA販売高日本一を誇る4品目がある。「桃・夏秋キュウリ・あんぽ柿・飼料用米」である。このうち「桃・夏秋キュウリ・あんぽ柿」について、ブランド力向上を目指し記念日を制定している(日本記念日協会に申請・登録認証)。各記念日は、ふくしま桃の日(7月13日、7月26日、8月8日)、ふくしま夏秋きゅうりの日(7月1日、8月1日、9月1日)、伊達のあんぽ柿の日(12月13日、1月13日、2月13日)である。これら記念日を起点とした、さまざまなイベントなどを通じてブランド価値向上に向けた広報活動を展開している。
動く広報誌「みらいろ」とは、デジタル媒体(SNS・YouTube)と連動した広報誌のことを指す。広報誌のページ内にあるQRコードをスマホで読み取ることで、公式YouTube「みらいろチャンネル」の動画コンテンツやInstagramで記事情報を視聴することができる。
例えば8月号では表紙を飾る佐藤さん家族の農作業風景、JAの農畜産物PR隊「J-FAP」のメンバーによる活動や女性部による「女性部のかぁちゃん直伝料理」をYouTubeで視聴できる。
既存の紙媒体とデジタル媒体(SNS・YouTube)の連携を戦略的に図ることで、紙媒体では伝えきれない臨場感や動的な情報をデジタルで補完できるため、紙媒体に慣れ親しんだ年齢層に加え、デジタル媒体を好む年齢層まで広報誌の読者は広がっている。
表紙
女性部のかぁちゃん直伝料理
コミュニティー誌「ぐーがる」は新聞折り込みとして年2回、7月と12月に12万部発行している。旬の特産品を特集することで買ってみたくなる誌面づくり、そして情報提供から販売につながる広報を意識し作成されている。
今年度の7月号は「ふくしま桃の日」に合わせ“桃”特集である。J-FAP(農畜産物PRチーム)による桃レシピ(桃とじゃがいもの冷製スープと桃のビネガージュース)や桃生産者へのインタビューなど色鮮やかな写真を多用した桃づくしの内容となっている。
ここでも桃レシピはQRコードからYouTubeへ誘導するメディアミックスが図られている。また、裏面のふくしま桃の日記念日プレゼントキャンペーンは公式Instagramでの応募となっている。「ふくしま未来農業協同組合」をフォローし、「ふくしま桃の日」投稿にいいね!を押せば応募が完了する。応募の簡便さもあり、このキャンペーンでInstagramのフォロワーは2,000人増加し4,000人超、いいね!は3,000人超まで伸びている。
若年層における高い利用率と特に女性ユーザーの割合が高いInstagramを利用することで、これまでJAに関心の薄かった年齢層との接点をつくり出している。
表紙
裏面 プレゼントキャンペーン
JAふくしま未来のホームページ(https://www.ja-f-mirai.or.jp)にアクセスすると、まず目にするのはページの最前面に配置された公式YouTube「みらいろチャンネル」の「令和7年度 組合長あいさつシリーズ」動画である。
このシリーズは毎月1日に更新される。組合長が自ら生産部会長をはじめとするJAの組合員を訪ね、圃場や牛舎において部会の取り組みや展望をインタビューする「トップ広報」である。経営トップが自ら広報活動の最前線に立つという強力なメッセージを発信するとともに、単に情報を流すだけでなく、人間味あふれるストーリーテリングを通じて、組合員や消費者に寄り添う姿勢を示している。
また、「みらいろチャンネル」では、管内農作物のPR動画やドローンによる空撮、営農指導員によるお役立ち情報など多岐にわたる動画を配信している。している。
これら取り組みにより、公式YouTube「みらいろチャンネル」の再生回数は毎年倍増している。令和6年は19.3万回超まで伸び、YouTubeは既に収益化している。
マスメディアに対しては記者懇談会を開催し、組合長が自ら農業のPRとマスメディアとの関係構築に努めている。記者懇談会は福島県のメディアを中心にNHK、民放テレビ局4社、地方紙2社、ラジオ局4社に加え全国紙などを対象に15社20人が参加している。昨年は7月に「もも果実共選場」で開催され、当日の夕方には桃の主力品種「あかつき」の出荷が各テレビで放送されている。
また、プレスリリースは週1回の定期的な実施目標を設定しているが、昨年度は目標を大きく上回る年間91回実施している。広報課はメディアへの露出を増やすため、報道記者が見ただけで記事や原稿が書ける内容で作成すること、報道が取り上げたくなるキーワード(例:新たな取り組み、日本一など)を使用することや魅力ある写真を心がけることなど工夫を凝らしている。
このように継続的かつ積極的なパブリシティーなどを背景に、JAふくしま未来はマスメディアと良好な関係を構築しているのである。また、「JAは話題が豊富である」とメディアが注目するようになっていることが宣伝広告としても有効に機能している。
4. 情報提供と協力体制を構築した広報体制
JAふくしま未来の広報課は戦略的広報の重要性から中期経営計画を進める企画部に設置されている。体制は広報課7年目の中野課長を含め4人で、担当者の広報経験年数は4年目(男性)、2年目(女性)、1年目(女性)と比較的経験年数の浅い若手職員である。
次に広報通信員として11人の広報担当者を設け情報提供と協力体制を構築している。本店から一番遠い支店まで片道約1時間30分かかる広い管内の情報を、より効率的に収集するため、広報担当者は合併前の旧4JA単位に4つの地区本部から各1人(地域支援係と兼務)、それ以外に営農経済部、金融部、共済部から選ばれている。
意思決定と企画・検討は広報担当者会議(編集委員)と広報委員会で行い、広報担当者会議は常務、部長、各部署広報担当者、J-FAP(農畜産物PRチーム)、広報課をメンバーとし年2回、広報活動方針、計画立案、各種広報誌企画・検討を行っている。また、意思決定機関の広報委員会は組合長、専務、常務、部長、本部長、広報課をメンバーとし年2回、広報活動方針、計画協議・決定、重点実施事項の協議・決定を行っている。以上が広報体制である。
ここで広い管内の情報提供を担う広報担当者の体制を機能させる方法と、広報担当者の人材育成について広報課の中野課長にお聞きした。中野課長は「重要なのは広報担当者の役割を情報提供のみにしないことです。広報誌の人選や撮影時のアシスタントなどを担っていただくこと、つまり制作に参加いただくことが大切です。これにより完成した広報誌や動画などに当事者として、より関心を持つことになります。さらに広報担当者と出演する組合員との関係がさらに深まる効果があります」と話す。続けて「令和6年度の日本農業新聞への記事投稿本数524本のうち広報担当者による情報提供は124件と広域合併JAの広報活動に欠かせない存在です」と、毎日数多くの情報を発信し続けるためにはJA内の協力体制が不可欠であることを強調する。
人材育成については「広報の基礎的な知識は中央会主催のSNS・YouTube研修会や日本農業新聞主催の新人通信員研修会などに参加し学んでいます」と話す。ここまでは多くのJAと同様である。「その後は日本農業新聞への投稿数にみられるように皆が数多くの記事を書くことで学びます。また広報媒体ごとに担当者を固定せず、取材、撮影、編集、配信など誰もがすべてをこなせるよう指導しています」と話す。数をこなすことの大切さと属人化しないよう人材育成を図っている。また、重点実施事項と具体的な取り組み目標を設定、さらに実行するための行動管理や業績評価の見える化を徹底していることにも触れておきたい。
5. おわりに
JAのイメージは、「地域・社会への貢献」といった地域に根ざした組織としての評価が高い反面、「食料・農業への貢献」についてはさらなる理解醸成が必要とされている。第30回JA全国大会決議では組合員や地域社会から認知・評価される(=JAファンを増やす)には、広報・情報発信の継続・強化が必要とされ、農業・JAへの理解・共感の醸成を図る広報戦略が5つの取組戦略の1つに掲げられている。
JAふくしま未来においても、JA全国大会決議と整合性を取った中期経営計画書(令和7年度~令和9年度)第4期みらいろプランの中で、広報戦略を食料・農業戦略、地域くらし戦略、経営基盤強化戦略と並び4つの基本戦略の1つに掲げている。正准組合員比率が逆転(令和5年度)する中、アクティブメンバーシップを強化するには「JAの事業・活動を知ってもらうこと=広報活動が重要」と位置付けているのである。
広報は単なるコストセンターではなく、組織の成長を牽引する戦略的な役割を担っていることを内外に示している。これにより広報戦略の位置付けが明確になり広報活動の大きな後押しになっている。
これらを背景に経営トップが自ら広報活動の最前線に立つ公式YouTube「みらいろチャンネル」での「トップ広報」から、広報課とともに広報誌やYouTubeチャンネルのコンテンツ制作など中心的な役割を担っている広報担当者や若手職員で構成される「J-FAP(農畜産物PRチーム)」まで、組織のトップから若手職員まで、広範な層が広報活動に関与する体制が整っている。トップ広報での強力なメッセージを発信するとともに若手職員による若々しい視点や親しみやすいコンテンツを通じ、幅広い世代への訴求力を高めることができている。
まさに組織が一体となり広報活動を戦略的に展開することで、JA広報大賞の受賞など成果につながる好循環を生み出していることは刮目に値する。
おわりに、公式YouTube「みらいろチャンネル」は初期の動画と最新の動画を見比べると画角の違いや文字の挿入など、またクリック率に大きく影響するサムネイルの大きな変化に気づく。先に述べた好循環を支えているのは、より質の高い広報を目指し研鑽に努める広報課職員の日々の努力があることを改めて言及しておきたい。