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地域の元気を生み出すJA

第29回JA全国大会決議をふまえた全国各地の創意工夫ある取り組み

佐賀ん平野の二毛作と小麦は、がばいスゴか
- 二刀流(二毛作)で耕地利用率は日本一

JAグループ佐賀(佐賀県)の取り組み
新開賢也 一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA) 基礎研究部 主席研究員

 JAグループは一昨年開催の第29回JA全国大会において「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」を決議し、令和5年はその実践2年目となります。食と農の未来、国消国産運動の推進、地域の元気づくり、農福連携など、消費者の皆さまにも身近に感じられるテーマについて、全国各地のJAの取り組みを紹介します。

<佐賀県:JAさが>
2007年4月、佐賀県内の8JA(佐城・佐賀市・諸富町・富士町・さが東部・神埼郡・佐賀みどり・白石地区)が合併し、「JAさが」としてスタート。同年10月には、経済事業における二段階・組織二段階を実施するためにJA佐賀経済連の権利義務の一切を包括承継し全国でも有数規模のJAとなっている。
貯金期末残高:7,627億円
長期共済保有高:1兆7,554億円
販売品販売・取扱高:1,095億円
購買品供給・取扱高:511億円
(令和5〈2023〉年3月末現在)【JAさが Webサイトから抜粋】

黄金色に染まった佐賀平野の麦畑(大麦:5月中下旬)写真提供:JAさが

「二毛作」とはなにか?
- 代表的な二毛作地域の一つは「佐賀平野」なんです

 「『ニケサク』ってなんですか?」
 惜しいですね。「二毛作」は「ニモウサク」と、読むんですよ。
 同じ田や畑で、1年の間に2種類の異なる作物、例えば、米(春~秋)と麦(秋~春)、米(春~秋)とタマネギ(秋~春)などの組み合わせで、栽培する農法をいいます。
 似たものに「二期作(ニキサク)」がありますが、これは、1年の間に同じ作物、例えば、米を2回(春~夏、夏~秋)栽培する農法です。
 二毛作は、1つの農地で2種類の作物を育てるという「効率性」もスゴいですし、あるときは「田んぼ」、またあるときは「畑」に変わる、その「変身」もスゴくないですか? その謎を知りたいでしょう?
 二毛作は、主に関東以南の地域で行われます。
 その代表的な二毛作地域の中で、「佐賀平野」が筆頭として挙げられます。
 早速、JAさが 農産部 農産販売課 森田課長代理に、二毛作のスゴさを伺ってみましょう!

「佐賀平野」の「二毛作」は、がばいスゴか
- あるときは「田んぼ」、またあるときは「畑」に「変身」

 実は、佐賀県の「耕地利用率」(133.7% 2021年作物統計調査)は、日本一なんですよ。
 「二毛作」が盛んなのが、最も大きな理由です。
 少々、時代をさかのぼりますが、「集団的土地利用」による高い農業生産力については、「佐賀段階」「新佐賀段階」と称されるほど、全国的に注目を集めていました。
 1900年代より、多肥多収性品種(ふんだんに肥料を与えることで、たくさん収穫できる品種)の普及や、乾田化(田起こしや稲刈りのときの作業効率を高めるために、乾いた状態にできる田んぼに改良すること)の取り組みが進み、1930年代半ばには、クリーク(貯水池を兼ねた水路)や電気ポンプなどの灌漑かんがい設備や圃場ほじょう整備(農場の整備)が進むことで、米の生産力が飛躍的に向上し、「佐賀段階」として称されました。

JAさが 農産部 農産販売課の森田課長代理

 1960年代には、1956年に竣工しゅんこうした北山ほくざんダムによって、さらに灌漑設備や圃場整備が充実するとともに、集団田植えや集団防除などの、「集団的農作業」で「集団的土地利用」が図られ、さらに米の生産力がレベルアップし、「新佐賀段階」と呼ばれることとなりました。
 意外に思われると思いますが、佐賀平野で、本格的な「米と麦の二毛作」が始まったのは、1965(昭和40)年以降なんです。
 もちろん、その以前から、二毛作はあったのですが、「米と麦の二毛作」については、播種rt>はしゅ(米では田植え)時期と収穫(米では稲刈り)時期が重なり、なかなか難しいものがありました。
 そのような中、「佐賀段階」「新佐賀段階」を実現してきた、生産者、行政と農協の先人の方々が、三位一体となって、品種改良に取り組んで、克服こくふくしました。
 播種と収穫の間隔を短くできる、米と麦の品種づくりに成功したのです。
 その結果、田植え(6月中下旬) → 稲刈り(月下旬~10月下旬) → 麦播種(小麦11月中旬、大麦11月下旬~12月上旬) → 麦収穫(大麦5月中下旬、小麦5月下旬~6月中旬)と、スムーズに、米と麦との二毛作の生産サイクルを回すことができるようになりました。
 そのおかげで、佐賀平野を含め、九州の各所でも、米と麦の二毛作が実現、拡大、定着化し、佐賀県は日本一の耕地利用率を誇るまでに至りました。
 先人の方々の努力と実績には、頭が下がる思いです。感謝してもしきれません。
 先人の意志を受け継ぎ、新時代の「佐賀段階」を目指すべく、2022(令和4)年度まで、生産者、行政とJAグループ佐賀などが、手を携えて「佐賀段階 麦・大豆1トンどりプロジェクト」を進めてまいりました。
 当初の重点推進事項であった、①排水対策の徹底、②適期播種、③的確な栽培管理の実施、④土づくりについて、項立てで説明します。

①排水対策の徹底

「田んぼ」から「畑」に「変身」するための「コルゲート管」が、二毛作のカギの一つになります。
 農地の下に、コルゲート(波形)状のパイプ(集排水管、暗渠あんきょ管)が埋められており、出口はクリークに面しております。
 その出口を閉めれば湛水たんすい(水がたまる)し「田んぼ」になり、その出口を開けると排水して「畑」になります。
「コルゲート管」が詰まると、「変身」できなくなるので、高圧洗浄機などでの洗浄が欠かせません。
 湛水より排水のほうが難しく、「田んぼ」から「畑」に「変身」するためには、「コルゲート管」の出口を開けるだけでは、排水は十分ではありません。
 サブソイラーという機械を使って、「弾丸暗渠」(弾丸のような穴を開けて排水するもの)を作ることなどの対策が不可欠です。
 排水をしっかりしないと、麦の根が「窒息」してしまい、枯れてしまいます。「排水するのは基本の基で、簡単でしょ」と思われるかもしれませんが、実は難しいことで、「『田んぼ』だった農地が、いきなり『麦畑』になるという『マジック』の仕掛けは大変そうだ」と想像していただければ、その難しさがご理解いただけるのではないでしょうか。

現役活躍中のコルゲート管(の出口)。出口を閉めれば、農地に水がたまり「田んぼ」になり、
出口を開けば、農地から排水され「畑」になる

②適期播種

 これも、「適切なときに、種をまいたり、田植えするのは、当たり前でしょ」と思われると思いますが、なかなか、上手うまくいかないものです。
 特に、麦の種をまくタイミングで、長雨が続いたりすれば、いくら排水対策を講じたとしても、畑の水分量が過剰となり、麦の播種ができません。
 麦の播種が遅れれば、麦の根が定着せず、成長も遅れ、収量だけでなく、品質も劣ることとなり、おいしい小麦や大麦を、お届けすることができなくなります。
 アップカットロータリーという機械を使って、「耕うん同時畝立うねたて播種」(耕すと同時に、畝を作り、種をまく)を行うなどの工夫で、「適期播種」を実現できるよう、生産者の方々は苦労して、栽培されておられます。

③的確な栽培管理の実施

「小麦」、特にこれから紹介させていただく「パン用」の「強力粉きょうりきこ」のもととなる「パン用小麦」を栽培するときに、最も重要なのが、「追肥ついひ」です。
「強力粉」は「タンパク質」の割合が約11.5%以上の小麦粉で、ケーキなどに使う「薄力粉はくりきこ」は「タンパク質」の割合が約9.0%以下の小麦粉といわれております。
「白米」の「タンパク質」の割合が約6%ということを考えれば、「強力粉」の「タンパク質」が、いかに多く必要かが、お分かりになるでしょう。
 よく、「グルテン」という言葉をお聞きになると思いますが、「タンパク質の一種であるグルテニンとグリアジンが、水を加えこねることで、網目状につながったもの」なんです。
  その「タンパク質」を「小麦」に十分にたくわえてもらうには、「窒素」をふんだんに含んだ「追肥」を適時・適切に与えないと、おいしい「パン用小麦」を育てることができませんし、欠かせません。
「成長盛りの子どもの方や、重労働で筋肉を酷使している方に、肉、魚や乳製品などの栄養たっぷりの食物や、場合によってはアミノ酸などのサプリメントをっていただかないと、十分な成長や疲労回復ができないことと同じイメージ」と言えば、ご納得いただけるものと思います。
 続いて、「麦踏み」です。
「麦踏み」という言葉を、耳にされたことはあるとは思いますが、実際に、生産者の方が、足で「踏み踏み」しているわけではありません。
 機械の前後にローラーが付いた、いわば、道路工事でアスファルトを平らにする「ロードローラー」を、かなり簡単に軽くしたような「麦踏み機」で、栽培期間中3~4回、麦踏みを行います。
「麦踏み」することで、「倒伏とうふく防止」(風雨で麦が倒れることを防ぐ)や、「分げつ」(新しい茎が出て、株当たりの茎が増え、収量が増加する)を促すことができ、重要な栽培管理といえます。

生物の多様性も育む、ベテランのクリーク(水路)
米の高い生産力で「佐賀段階」と称されることとなった立役者の一つである

④土づくり

「麦わらのすき込み」(収穫後に出た麦わらを、田植えに備えて耕すときに、そのまま「すき込む」こと)を、推奨しております。
 2022年では、佐賀県の麦わらのうち79.6%が、「すき込み」されております。
 昔は、収穫後の麦わらを、農地の片隅で「焼却」することが一般的で、その煙が「佐賀の春の風物詩」ではあったのですが、その臭いなどを気にする方もおられたようです。
 1999年でも、佐賀県の麦わらの約7割が「焼却」されておりました。
「麦わらのすき込み」が進むことで、「焼却」による煙が生じることも少なくなりました。
 なにしろ、「麦わらのすき込み」により、土壌が「膨軟化ぼうなんか」(土がふんわりと柔らかくなる)し、「透水性」や「 保肥力ほひりょく」(肥料の持ちが良くなり、雨が降っても流出しにくい)が向上するなど、数多くの良い効果が表れます。
 面白いことに、「田んぼ」の雑草が生えづらくなるようで、米の収量も増加するとの結果もあるようです。
「麦わらのすき込み」は、いわゆる「エコ」でもありますし、当JAの組合長がJAのWebサイトで申しておりますように、「『SDGs』の目標達成」に向けた取り組みの一つであるものと考えております。
 もちろん、堆肥等の積極的な活用による土づくりにも、取り組み続けております。
 土壌の酸性化が進むと、麦の収量や品質にも悪影響があるので、石灰などの土壌改良剤も使用します。

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