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地域の元気を生み出すJA

〜第30回JA全国大会決議の実践〜

支店長を支え、“共想”し“協創”するJAを目指す

―JA東京中央の取り組み(後編)―
岩﨑真之介 一般社団法人 日本協同組合連携機構(JCA)基礎研究部 主任研究員

 2023年の11月、国連総会は2012年に続き、2025年を2度目の国際協同組合年にすることを宣言しました。
 JAグループは、持続可能な地域社会をつくる日本の協同組合の取り組みについて、認知を高めていく絶好の機会として捉えてまいります。
 今後、「協同組合」についての関心が高まることが想定される中、全国各地で「協同組合の力」を発揮しているJAの取り組みを紹介します。

 前編では、JA東京中央が進める、支店の改革と支店長へのバックアップの取り組みを紹介しました。この後編では、それを受けた支店の取り組みおよび支店長の声を紹介するとともに、2026年度から始まっている新たな動きを見ていきます。

5. 芦花ろか支店の取り組み―

 考えて行動する支店づくりのため、同JAの芦花支店では、組合理念を受けた支店の目指す姿を「地域に愛される店舗」と設定し、それを実現するための目標や行動に落とし込んでいくという過程を、支店会議等で意見を出してもらいながら進めています。渉外や窓口の職員にも「自分たちで考えて決めたこと」と実感してもらえれば、おのおのが責任を持って実行することにつながると考えられるためです。
 同支店の渡辺浩司支店長は、組合員や地域住民から困りごとを相談されるようになるために、まずは職員に対して親しみを感じてもらう必要があるとの考えから、組合員や地域住民のことをよく知るための会話や質問の切り口をまとめたシートを作成し、職員に提供しています。
 また、渡辺支店長は、同支店の副支店長であった2021年度から毎年、組合員や地域住民に親しみを感じてもらうこと、楽しんでもらうことをねらいとして、京王線「芦花公園駅」前のロータリーを借りて、地元商店街と連携したマルシェ「ロカマル」を開催し、同支店も地場農産物の直売市を出店しています。イベントを通じてJAや支店職員への親しみや信頼が醸成されたことで、結果として事業を利用してもらいお役に立てることにも着実につながっているといいます。
 それでは、渡辺支店長にとって支店長統括とはどのような存在なのでしょうか。「例え話になりますが、宝の地図を渡されたとして、今、自分がどの辺にいて、どの方角を向いているのか、そういうことが分からないと目的地にはたどり着けないですよね。支店長統括は、支店長がそういうことを見失ったときに、今こういう感じだぞと客観的な立場から教えてくれる、そんなコンパスみたいな役割だと感じています」(渡辺支店長)

画像③ 芦花支店 渡辺浩司 支店長

 加えて、「自分のときはこうしたよということや、失敗談なんかも教えてくれるので、とても参考になっています」(同上)とも。渡辺支店長のインタビューからは、浜田部長に対する厚い信頼感が伝わってきました。支店長統括という支店長の相談役が、その役割を十分に発揮するためには、一人一人の支店長と本音での対話を重ね信頼関係を築くことが、やはり何よりも重要であるのだと考えられます。

画像④ 腹を割って話し合えるという浜田部長と渡辺支店長 ※インタビューは個別に実施。

6. 支店を効果的にバックアップできる本店へ

 同JAでは、2025年度から経営理念を刷新しました。

画像⑤ 2025年度から新しくなった経営理念

 この経営理念と経営戦略を具体策に落とし込むため、2026年度から本店に新たに設置されたのが業務企画部です。
 同部は支店長統括担当の役割も引き継いでおり、部長の任には浜田さんが就きました。同部の体制は、浜田部長が課長を兼務するほか、分析担当1人、業績向上担当1人、地域貢献担当1人の計4人からなっています。
 分析担当は、これまでの活動やイベントが事業利用にどれだけ結びついているかなどを定量的に把握する役割を担います。そうしたデータ分析結果も踏まえつつ、業績向上担当は支店の渉外や窓口のアプローチ方法を検討し、地域貢献担当は活動やイベントの企画・改善を図ります。支店長への支援については、前年度から引き続き、浜田部長が対応に当たっています。
 同部が示す分析結果や具体策を踏まえつつ、実際に何をするかは基本的に各支店に委ねられています。自ら考え行動する支店として、同部の支援を受けつつ、各支店の状況に応じた個性ある対応を打ち出すことで、組合員や地域住民の課題解決に貢献していくことが期待されており、例えば、信用事業において支店独自のキャンペーンを企画するといったことも業務企画部は歓迎する考えです。
 こうした新たな対応を、限られた人員の中で実施していくには、DX推進等によって業務の効率化を着実に進めることが欠かせません。そうした重要な役割を担うのが、本店に新たに設置された業務管理部です。業務企画部と業務管理部は、これまでの信用共済部を改組して設置されています。ついの役割を担う両部が同じ方向を向いて連携していくことが、新体制がうまく機能するための条件となると考えられます。

7. 一人一人の職員の成長と働きがいにつなげる

 自ら考え行動する支店づくりのため、同JAでは職員の人事考課制度にも変更が加えられました。具体的には、経営理念(画像⑤)の「行動規範」に掲げられた「誠実」「共感」「挑戦」のそれぞれについて、それを実践する取り組みを各職員が考えて実行し、その達成状況が「情意考課」として反映されるように見直しが行われたのです。
 これによって、同JAの経営理念を実践することが職員の評価に直結することとなっています。画像⑤にあるように、行動規範の3項目にはすべて「組合員」が含まれており、協同組合職員として求められることの実践がストレートに自身の評価につながることで、職員の働きがいが高まることが期待されます。
 「支店が変わろうとしている中で、本店もまた、支店を強力にバックアップできるよう変わらなければなりません。そのために、支店長の会議やセミナーに本店も参加するようにしているほか、支店だけでなく本店にも実績数値に責任を持たせられるよう、仕組みの見直しを進めてもいます。一連の取り組みが効果を上げるためには、組合全体が同じ方向を向いて一緒に考えて行動に移していく必要があるんです」(浜田部長)
 同JAのこうした体制や取り組みは、それらがまだ途上にあることを考慮したとしても、示唆に富むものであると考えられます。その一つは、JAにおいて組合員との(あるいは組合員同士の)対話が不可欠であるのと同様に、事業組織の改革においても、職員同士が向き合って本音で話し合うことの積み重ねが欠かせないということでしょう。加えて、JAが組合員や地域住民から必要とされる組織となるために、支店(支所)のあり方が重要となるのは当然として、そのかじ取りを任されている支店長(支所長)を孤独にさせず、力強く支援できる本店(本所)が求められるということもまた、同JAの取り組みから学ぶべきことといえるのではないでしょうか。

岩﨑真之介 いわさき・しんのすけ

1987年長崎県生まれ。広島大学大学院生物圏科学研究科博士課程後期単位取得、博士(農学)。
2017年より一般社団法人JC総研(現・JCA)副主任研究員、2023年より現職。著書に『顧客を直視する農協共販 農業者と実需者との相互作用』(2023年)、『つながり志向のJA経営 組合員政策のすすめ』(2020年、共著)など

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