文字サイズ

食・農・地域の未来とJA

日本の食・農・地域の将来についての有識者メッセージ

園芸にも子育てにも深い愛情を
思いのチカラがつなぐ未来

ダイアモンド☆ユカイ シンガーソングライター 俳優

東ヨーロッパの農道で受けた衝撃

 若い頃はジャンクフードばかり食べる暴飲暴食の日々。健康にも無頓着だった僕が食や農に興味を持ったのは、妻と行った東ヨーロッパへの旅行でした。

 ハンガリーやスロバキアの農道をドライブしていたとき、景色が輝いて見えたんです。僕にとって、農道といえば親父おやじの墓参りに行くときに通るさびれた道のイメージ。でも、そのときには、どこを見渡してもさびれたところがなく、活気に満ちあふれていることに衝撃を受けました。
 そこから日本の現状に興味が湧いて帰国後に調べてみたら、フランスなどは食料自給率が100%を超えているのに、当時の日本はその40%以下だったんです。自国で国民の食糧をまかなうことができないのは大変なことじゃないか、と意識が変わりました。そんな経緯があって、公務員を退職した母がやっていた家庭菜園を手伝うようになり、土との付き合いが始まりました。

園芸に興味を持つきっかけとなった母との一枚

植物にも子どもにも愛を持って向き合う

 ここ数年はガーデニングを始め、バラとイチジクを育てています。僕の楽曲にはタイトルにバラが入ったナンバーもありますし、「花壇にきれいなバラが咲いたら素敵だな」とふと思い、園芸店で『レオナルド・ダ・ヴィンチ』という赤いバラの苗を買ったんです。なかなか花が咲かず、毎日愛情を込めて「咲いてくれ、咲いてくれ」と話しかけながら水やりをしていたら、ある日見事に満開の花を咲かせてくれて。それ以来、そのバラを「レオナ」と呼んで、毎年満開の花を楽しみにしています。

愛情込めて育てたバラ「レオナ」

 「いっぱい実がなるよ」と苗木をいただいたイチジクは、1、2年目は実がなる気配すらなく…。「来年こそは実をつけてくれよな」と木に語りかけながら手入れをしていたら、なんと3年目の今年、ついに小さな実がなったんです!おいしいところを鳥に持っていかれないように、これからはその対策を考えないといけないなと思っているところです。

3年目で実がなったイチジク

 植物を育てるようになって気づいたのは、園芸も子育ても過保護になりすぎるのもいけないということ。ツアーなどで家を長く空けてしまったときに、バラが枯れていないかハラハラしながら帰宅したら、なんと見事に満開を迎えていたんです。実は、少し放っておくくらいがちょうどいいのかも、と。それは、今ちょうど思春期を迎えている息子たちにも通じるような気がして。ただし、そこには愛が必要。朝起きたら必ず「おはよう」と声をかける。そんなコミュニケーションと深い愛が、園芸でも子育てでも大切なのだと思います。

 来年は「園芸博(国際園芸博覧会)」が開催されるそうですが、そういったイベントが、多くの人にとって園芸に興味を持つきっかけになるといいですよね。僕自身、花壇のバラや家に飾った花を見て気分が上がることを実感し、花や緑は幸せな気持ちにしてくれるものだと思っています。また、ライブである曲を演奏するとき、ファンがひとりずつバラを投げてくれて、ステージがバラでいっぱいになって素敵なんです。それを持ち帰って飾り、最後はバラ風呂に。ファンとのコミュニケーションにも花の存在がありますね。

ステージを彩ったバラ(写真左)とバラ風呂(写真右)

子どもたちへ伝える日本の食のすばらしさ

 母の畑の手伝いや、病気を経験したことをきっかけに自分の生活を見直し、たどり着いたのは子どもの頃に家で当たり前に食べていた和食のすばらしさでした。お味噌みそ汁、お豆腐、納豆といった日本の伝統的な食品を意識的に食べることで、体の調子がよくなったんです。そこで、野菜を毎日手軽においしく取り入れることができ、しかも発酵食品でもある「ぬか漬け」を始めて、「菌次郎」という名前をつけて世話をしています。ちょっとでもほったらかすと機嫌を損ねてカビが生えたり腐ったりしてしまうので、菌次郎のぬくもりを感じながら毎日混ぜ、少しの時間でもコミュニケーションを取っています。

発酵食品中心で自炊した朝食
 
味噌みそで漬けるフルーツトマト

 息子たちもラーメンくらいは自分で作って食べるようになりましたが、具も入れずに食べようとするので「ちょっと待て!今ネギを刻んでやるから、せめてこれで栄養を足せ!」とサポートするようにしています。それぞれの生活リズムがあるので、食事を一緒にとれない日もありますが、そんなときはおむすびを用意したりしてね。「おにぎり」ではなく「おむすび」にするのが僕のこだわり。一説によると、「おにぎり」はどんな形でもいいけれど、「おむすび」は三角形に握ることでそこにパワーが宿ると聞いたことがあります。

 思春期ですから素直に聞いてはくれませんが、「このお米や野菜は生産者さんや届けてくれた人たちのたくさんの愛が詰まっていて、その愛を僕たちはいただいているんだよ。日本の豊かな自然が育ててくれたものなんだから、感謝して食べなさい」と彼らにメッセージを伝え続けています。今は聞き流していても、親の言葉や食べ物のありがたみというものは年齢とともにわかるようになってくるものと信じて、今は種まきの時期でしょうか。

息子たちに食の大切さを伝え続ける

郷土料理や日本の家庭の味を世界へ発信したい

 僕は音楽も畑仕事や園芸も、すべて手探りの独学でやってきました。今は、スマートに野菜やお花を作る方法を配信動画などで簡単に知ることができます。でも、正解への最短ルートより、自分なりのやり方で続けてみてわかることも大いにあります。僕のやり方は誰かの参考になるものではないかもしれないけれど、楽しみながらやってみることは大事なんじゃないかな。まずは行動に移すこと。そこからすべてが始まると思います。
 僕ならではのアクションとしては、埼玉県深谷市で「ネギロック」という音楽イベントもプロデュースしました。アメリカでもボブ・ディランなどが農業や自然を支援する試みをやっていましたが、ロックと農業という一見つながりがないものを掛け合わせることによって、異なるフィールドにいる人に新たな興味関心を届けることができる。そんなシナジーも生まれていると思います。

ネギロックで演奏

 埼玉や栃木など、色々な土地での暮らしを経験してきた僕にとって、青々と美しい木々に囲まれた地域の風景は、ビルの谷間の喧騒けんそうから解放されて心が浄化されるものです。また、佐野ブランド大使も務める栃木で出会った、郷土料理の「しもつかれ」は僕の大好物になりました。さけの頭、大根、にんじん、油揚げ、大豆などを酒かすと一緒にグツグツ煮込んで冷やした料理で、ルックスはあまりよくないのですが(笑)、おいしくて栄養豊富なすばらしい料理です。ただ、若い世代の人たちはあまり食べないみたいで。こういった家庭の味を守り、日本のソウルフードとして世界中に広めていきたいですね。

栃木県の郷土料理「しもつかれ」

「なくなってからでは取り返しがつかない」まずは行動することから

 今、日本の農業は、まさに「戦い」の真っただ中にあると思います。偉そうなことは言えませんが、実際に土に触れ、すばらしい生産者の皆さんと出会った僕が確信しているのは、日本の土壌で育った日本のお米や野菜、果物はとびきりおいしくて、栄養にもなるということ。日本の農業が持続可能なものになるには、もっと制度などが整うことが理想ではありますが、農業に関してメディアが多くの人に届けていくことも必要だと思います。僕も、ブログなどを通じて和食のすばらしさや日本の米・農畜産物の魅力を発信し続けるなど、自分にできることをやっていきたいと思います。
 日本の米・農作物などのおいしい食がなくなってからでは取り返しがつきませんから、行動を起こして未来につないでいきたいですね。行動を起こしていくことによって、いろんな縁がつながったり、新しい何かが生まれたりするはず。人生は一期一会。限りある人生、出会いと縁を大切に、心を燃やしてロックに生きましょう!バーニング!

和食は元気の源

ダイアモンド☆ユカイ

ダイアモンド☆ユカイ だいあもんど・ゆかい

1962年、東京都出身。シンガーソングライター、俳優。ロックバンド「RED WARRIORS」のボーカルとして1986年にデビュー。1990年よりソロ活動をスタートする。俳優としては、映画「TOKYO POP」でハリウッドデビューしたのち、多数の映画・舞台・ドラマに出演、タレントや作家としても活動している。埼玉や栃木に移住し、地域の魅力や健康を意識したライフスタイルを発信。現在は、双子の息子と暮らす自宅で趣味の園芸を楽しみ、バラやイチジクの栽培を行っている。

記事一覧ページへ戻る