4. JA女性部改革で整備された、新たな結集軸
こうした実りある活動が実現しているのはなぜか。そこには、JA女性部の改革が寄与している。
JA小松市では、支店統廃合や町の婦人会の定年制に伴い、JA女性部員の減少に歯止めがかからないことが課題となっていた。そこで、2010年にJA女性部改革に取り組むこととして「女性部活性化委員会」が立ち上げられた。女性部活性化委員会では全部員に向けてアンケートを実施し、現状と課題の洗い出しを行った。4回の委員会開催を経て、翌2011年のJA理事会で、①目的別グループは本部活動に位置付ける、②支部活動を活性化させるために小グループづくりを勧める、③女性部員としての意識付けの定着を図る、の3点が付議された。言い換えれば、支部活動と目的別グループの並行により、JA女性部全体の活性化を目指す、という方向性が定められたのである。
現在同JA女性部には、10の支部と6つの目的別グループが共存している。支部と複数の目的別グループの両方に所属している人もいれば、目的別グループのみに所属している人もいるなど、選択は個人の自由としている(表)。
JA女性部長の中田さんは、「支部のしばりがあると、よい活動でもそれ以上には広がっていきません。支部にこだわらず、いろんな地域の人が集まることで仲間づくりが進み、みんなの知恵を結集すれば活動がさらに深まります。一方で、JA女性部全体の“数”で取り組んだ方がより成果が上がる活動もあります。その両方の良さを生かすことで、JA女性部の可能性が一回りも二回りも膨らんでいくのだと思います」と話す。
前述した2次避難所訪問では、炊き出しは目的別グループの一つである「加工部会」のメンバーが行い、物品の寄付ととりまとめは支部が中心に実施する、と役割分担したことで、避難者の現状に沿った支援活動が実現している。
各目的別グループでは、定期的にアンケートをとり、メンバーの意向を吸い上げた上で、それぞれのリーダーたちが年間計画を立てている。そのため、みんなが「やってみたい!」と思えるグループ活動が展開されている。また、例えば「こまとくらぶ」では、1年に1度、JA講座と題して、相続講座、冬タイヤ交換講座など、JAの総合事業とリンクした学びの時間を必ず設けていることも、好評を博す理由となっているそうだ。JAとの距離が近くなったことで「こまとくらぶ」の参加者からは、新たに准組合員になる女性も増えている。
一方で、目的別グループなどの個人会員制度を導入する多くのJA女性部で課題となっているのが、役員問題である。JA小松市の女性部では、目的別グループの代表者もJA女性部の役員となることが定められており、支部活動との公平性が保たれている。
5. 非農家の目線から立ち上がった「食農教育」グループ
目的別グループの一つである「食農教育」は、元JA女性部長で、現在JAの理事を務める今川浩美さんが、2014年に立ち上げた。
「JA小松市女性部は8割が非農家で、私も家族が営む会社で事務をしていました。軽い気持ちで女性部に加入しましたが、活動を重ねる中で輸入農産物の問題に直面し、農業が国全体の食を支えていることを実感したんです。女性部長を拝命したとき、農業の大切さを伝えたいと思い、食農教育に取り組むことにしました」
まず始めたのが小学生とその保護者を対象とした「わくわくキッズ農園」である。直売所「JAあぐり」横の圃場を組合員から借り受け、苗の定植から収穫まで、全ての工程を親子で体験するというものだ。農作業は年6回実施され、収穫した野菜はJAまつりで「お仕事体験」として実際に子どもが店頭に立って販売する。また、「食農教育」グループのメンバーが先生となり、料理教室も開催している。毎年10組30人を募集するが、評判はすこぶる良く、一度参加すると小学校を卒業するまで継続する家族がほとんどだ。
開始2年目には、現JA女性部長の中田さんもお孫さんを連れて参加した。実はそれが、中田さんとJA女性部の関わりの第一歩だったというから驚きだ。中田さんのお孫さんは、農業体験から自分たちが作った野菜への愛着が生まれ、これまでは気にも留めなかった巨大化したキュウリを「もったいないからなんとかして食べようよ」と、なますにして喜んで食べるようになった。今は大学生となり一人暮らしをしているお孫さんは、自分のアパートで、子どもの頃に教わったみそ玉づくりをするまでに育っている。中田さんはわが孫を見て「子どものうちに農業体験することの大切さ」を肌で感じている。わくわくキッズ農園の参加者の中には、畑づくりを始めた若いご夫婦などもいるそうだ。
わくわくキッズ農園の成功を受けて、2018年には、大人向けの農業体験教室「農加倶楽部」を立ち上げた。
きっかけは、「子どもや孫が大きくなると、保護者も農業体験の機会が格段に減る。大人が参加できる農業体験はないか」という声が複数の人から上がったことである。一方、管内では、高齢化により農家が逓減しているという課題もあった。そこで、農業に興味のある人にまずは体験してもらい、農業者を増やすきっかけづくりになればと、いわば農業への「入り口」として大人向けの農業体験教室を設けることとした。「農加」とは、「農業」と「加工」を組み合わせて命名したもので、その名のとおり、農業と加工の両方に取り組んでいる。
「農加倶楽部には、現在、男性2人を含む17人が登録し、ジャガイモ・ニンジン・トウモロコシなどを作っています。今年度初めて、直売所でのトウモロコシの販売に挑み、10万円近い収益を得ました。そのお金は、次年度の活動費とお楽しみの慰労会の費用に充てました」(今川さん)
農加倶楽部では、大豆を育て、枝豆として収穫するほか、自作の大豆を原料にみそや豆腐づくりまで行っている。参加者からは「農家組合員が先生になってくれるので、本格的に農業が学べる」「みんなでやるからとにかく楽しい」といった感想が寄せられている。満足度が高いため、暑さが厳しい真夏の作業日にも多くの参加者が集う。また、農加倶楽部がきっかけで、農家やJAとつながりができたと実感する参加者も多く、准組合員になったり、JAで小さな農機を買ったりする参加者も増えている。中には、自分で畑を持ち、生産物を道の駅に出荷し始めた参加者もいるそうだ。「目標は倶楽部としての市場出荷です。そこで、出荷するために必要な記録のとり方や、シールの貼り方なども、倶楽部で勉強し始めました。これからの時代、専業は難しいので、働きながら農業ができる環境づくりを、農加倶楽部でやっていきたいと思っています」(今川さん)
今川さんは、「食農教育」グループで農業に向き合う中から、自分自身も農業に本格的に挑戦したいと思うようになった。そこで、JA小松市が、新規就農者の育成を目指して展開する「アグリスクールこまつ」の第1期生として手を挙げた。アグリスクールこまつは、JAが管理するハウスで、トマトなどの園芸栽培を2年間みっちり学び、卒業後は就農し、JAが貸与するハウスや設備で作物の栽培・出荷に取り組む、というものである。今川さんは、2年の研修を経て、現在はハウス4棟をJAから借り受けて、トマトの栽培に挑んでいる。
食農教育活動や新規就農の実績が認められ、今川さんは2023年にJA小松市の理事に選出された。「このままでは地域の農業は廃れてしまいます。農業を維持するためには新規就農者を増やすことが必須です。そこで、農業をやめていく高年齢の組合員さんと、農業をやりたい若い人たちをつなぐお手伝いができればと思っています。新規就農者としての経験を生かして、どんな方法が効果的かをよく考えた上で、JAに提案していきたいと思っています」(今川さん)
6. おわりに~JA女性部は地域とJAを結ぶ「かすがい」
JA女性部の事務局を務めるのは、総務部組合員相談課の谷口早由里課長補佐だ。「女性部愛が強い」と自認するほど、JA女性部とJAとの連携に力を注ぐ。
「支部にも目的別グループにもそれぞれリーダーがおられます。メンバーの代行をするのではなく、皆さんの『こうしたい』という気持ちをフォローすることに重きを置くようにしています。そこからJA女性部の自主性が育まれていると思っています」と、事務局としてのJA女性部との向き合い方を話す。JA事務局のこうしたスタンスも、JA女性部の活性化の一因になっているといえる。
JAグループでは、第30回JA全国大会決議において、「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力」を主題に掲げ、JAグループの存在意義発揮に向けた、5つの取組戦略を示している。5つの戦略は独立しているのではなく、「有機的に連携」し、「好循環を生み出す」ことで、「JAグループの存在意義が発揮される」としている。では5つの戦略を結ぶものとは何か。「かすがい」の一つとしてJA女性組織活動が挙げられることは間違いない。その事実を、JA小松市の実践は私たちにあらためて教えてくれる。
右から、今川浩美理事、中田由利香女性部長、JA小松市総務部組合員相談課の谷口早由里課長補佐