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地域の元気を生み出すJA

〜第30回JA全国大会決議の実践〜

「女性部員増強運動」で新たな仲間づくりを実現

―JA福井県女性部福井支部(前編)―
小川理恵 一般社団法人 日本協同組合連携機構(JCA)基礎研究部 基礎研究部長 主席研究員

 JAグループは、令和6年開催の第30回JA全国大会において「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力~協同活動と総合事業の好循環~」を主題・副題とする大会決議を行いました。令和8年はその実践2年目となります。食と農の未来、国消国産運動の推進、地域の元気づくり、農福連携など、消費者の皆さまにも身近に感じられるテーマについて、全国各地のJAの取り組みを紹介します。

1. はじめに

 全国のJA女性組織では、メンバーの高齢化や若い世代のJA離れを要因とする部員の減少と組織力の低下、それに伴う活動のマンネリ化などが深刻な課題となっています。こうした問題にどう対処すればよいのか、頭を悩ませているJA女性組織リーダーや事務局の皆さんも多いのではないでしょうか。
 そのような中、JA福井県女性部福井支部では、9つあるエリアごとに地域性を生かした「女性部員増強運動」に取り組み、仲間の輪を広げています。開始から1年あまりで135名の新たな仲間づくりが実現したこの取り組みには、他府県等のJA女性組織でも生かせるヒントがあふれています。

2. メンバー減少に危機感!さあどうする?

 JA福井県(以後、同JA)は、令和2年4月に10のJAが合併して誕生しました。同JAの女性部には6つの支部がありますが、中でも一番規模の大きい福井支部(以後、女性部)では、高齢化やコロナによる活動停止等の影響により部員減少が進み、合併当時2,003名いたメンバーが、令和7年度には1,800名を切るまでに減ってしまいました。
 女性部の角野淑枝支部長と、この年から事務局を務めることとなった同JA福井営農経済センターの本夛ほんだ奈緒美係長は、こうした状況に危機感を募らせていました。女性部は、地域の特産である生姜しょうがをモチーフとした「ジンジャーガールズ」を筆頭に、地域活性化に寄与する数多くの活動に積極的に取り組んできた歴史があります。しかし、メンバー数の減少を鑑みるに、こうした意義ある活動も、今何か手を打たなければ先細りしかねないという不安定さを内包していました。そこで支部全体で「女性部員増強運動」に取り組もうという新たな方向性が打ち出されることとなったのです。

左が角野支部長、右が本夛係長

 女性部は、9つのエリアとその下に32の地区がある大所帯です。女性部で行う活動の方向性については、まずはエリア長会に、次に地区長会に諮る必要があります。角野支部長ら役員は各会において、「100名増員」という目標値を示し、メンバーの増員に本気で取り組もうとリーダーたちに呼びかけました。
 実はこれまでも、部員減少に対する漠然とした問題意識はありましたが、どうすれば部員増加に結び付くのか、実際の活動を見いだすには至らなかった経緯がありました。しかし、今回初めて具体的な数値を定めたことで、多くのエリア長・地区長からの賛同を得ることができ、「目標を実現するためには何をすればいいか?」という次のステップに進むきっかけになったといいます。

3. 「女性部員増強運動の日」を決めて集中的に活動を開始!

 女性部では、生姜の普及活動として、毎月1日を「生姜の日」に設定していました。そこでその延長線上で、毎月1日を「女性部員増強運動の日」と定めて、各エリアで活動に取り組むことが決定されました。同JAには生活指導員が13名いるのですが、そのうち4名を「部員増強担当」とし、活動の指揮を執ることにしました。
 第1弾として、まずは南部エリアが、JAの南部支店で部員増強運動の日を開催しました。当日は生活指導員が中心となり、支店の店頭に立って、女性の来店者に女性部加入を呼びかけました。その取り組みをお手本にして、他のエリアでも地域性を加味しながらアップデートを重ね、徐々に活動が定着していったのです。
 女性部員増強運動の日は、「1日」でスタートしましたが、今では、エリアごとに、より多くの女性に声が届きやすい日を設定しています。例えば、年金受給日「なごみの日(偶数月15日)」を運動の日にしているエリアもあります。

4. 「ワークショップ」を組み合わせて女性部の魅力を伝える

 女性部員増強運動の日の特徴は、単に女性部加入の声がけをするだけでなく、体験型のワークショップなどを組み合わせることで、女性部活動本来の楽しさが伝わるよう工夫していることです。筆者が取材に訪れた前日はちょうどなごみの日(15日)で、中央支店において、中央エリアによる古新聞を利用した防災スリッパ作りが行われました。ある女性は、施設に入っているおばあちゃんに代わり、年金を下ろしにきたところ、女性部員から声をかけられ参加したとのことでした。子どもが大きくなり、母親同士など人とのつながりが希薄になってしまったという女性は、「女性部の存在は知っていたが自分から積極的にアプローチすることは難しかった。今日は誘ってもらえてありがたかった」と話します。この方は後日女性部に加入されたということです。

今年度の重点活動の1つである「防災運動」の実践をかねて実施した、古新聞を利用した防災スリッパ作りのワーク

 北部エリアでは、女性部手作りの減塩みそで作ったみそ汁の試飲を実施しました。JA女性組織のみそづくり活動は全国どの地域でも人気だと聞きます。そうした女性部の一番の強みを一般の女性たちに知ってもらえるチャンスとなり、数名の加入者を得ることができました。
 エリアごとだけでなく、複数のエリア合同の活動にも取り組みが広がっています。昨年末には、北部・東部・永平寺の3つのエリアが1ブロックとなって、直売所「愛菜館」で、ハンドベルの生演奏を披露し、好評を博しました。

美しい音色が来客者たちを魅了したハンドベルの生演奏

5. JAの施設を利活用することで、JAとJA女性部の両方のアピールに

 女性部員増強運動の日は、主に各支店と「喜ね舎愛菜館」で実施しています。JAの施設を舞台に女性部が活動することで、JAと女性部の両方を同時にアピールすることが可能となっています。各エリアの活動費用は、女性部から1回につき1,000円が補助されますが、JAの施設を利活用することで、活動費用を抑えられることもポイントです。
 女性部員増強運動に取り組んだ結果、部員数が格段に増えたことはもちろんのこと、女性部の団結力が高まったと、角野支部長は話します。「目標値を定め、活動日も設定したことで、目標を達成するには何ができるかを、エリアの中で顔を突き合わせて話し合う習慣ができました。みんなで同じ方向を向いているという実感から、女性部全体の一体感が生まれたと思います」(角野支部長)
 このように、女性部員増強運動の取り組みは、新たな仲間づくりという物理的な成果だけでなく、女性部内の再団結という精神的な成果も生んでいるようです。後編では、これらの取り組みが、一部のリーダーだけでなく、末端の部員にまで浸透するための工夫について見てみることとしましょう。

小川理恵 おがわ・りえ

1997年にJCAの前身である社団法人地域社会計画センターに入会。総務課長、企画調整室長を経て研究職に職種転換、現在に至る。研究分野は地域づくりと女性活動。著書に『魅力ある地域を興す女性たち』(農文協、2014年)、『実践事例に学ぶ、これからのJAファンづくり』(共著、家の光協会、2026年)、『JA女性組織の未来 躍動へのグランドデザイン』(共著、家の光協会、2021年)他。博士(農学)。

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