地域の元気を生み出すJA
組合員の起業を生み出す協同組合の力
2023年の11月、国連総会は2012年に続き、2025年を2度目の国際協同組合年にすることを宣言しました。
JAグループは、持続可能な地域社会をつくる日本の協同組合の取り組みについて、認知を高めていく絶好の機会として捉えてまいります。
今後、「協同組合」についての関心が高まることが想定される中、全国各地で「協同組合の力」を発揮しているJAの取り組みを紹介します。
1. 女性が経営する食堂
「笑輪咲」
沖縄県豊見城市に、JAの農産物直売所である、JAおきなわ食菜館「とよさき菜々色畑」があります。この「とよさき菜々色畑」に併設されている食堂が「笑輪咲」です。「笑輪咲」では、JA女性部の女性たちが作る「沖縄そば」や「ちゃんぷるー」など、沖縄のおふくろの味を、手頃な価格で楽しむことができます。
沖縄の食文化は、琉球王国時代に中国など海外との交流から育まれた宮廷料理と、戦後のアメリカ統治下でのアメリカの食文化など海外の食文化が幅広く融合していることが特徴です。小麦粉100%で作られる沖縄そばは、宮廷料理がルーツで第2次世界大戦後に広く食卓に上るようになりました。ちゃんぷるーは沖縄の言葉で「ごちゃまぜ」という意味で、豆腐といろいろな野菜などの具材を炒めた料理です。ちゃんぷるーに使われる豆腐も、島豆腐と呼ばれる沖縄の特徴的な食材です。島豆腐は、絹ごし豆腐や木綿豆腐と作り方に違いがあります。大豆をふやかし、すりつぶして絞ってから火を入れて作ります。手間暇かかる作り方ですが、島豆腐ならではの大豆の風味を味わうことができます。「笑輪咲」では、この島豆腐を揚げた「揚げ豆腐」が人気商品となっています。
食事はもちろん、さっくりした口当たりが特徴的な「さーたーあんだぎー」もおすすめですし、マンゴーをそのまま搾った「生マンゴージュース」は生産地である沖縄ならではの逸品です。むせかえるようなマンゴーの濃厚な香りと甘さを味わうことができます。
「笑輪咲」では、40歳代から70歳代までの幅広い年代の女性9人が、和気あいあいとにぎやかに食堂を切り盛りしています。

朝は当番の3人が4時30分に出勤して仕込みを始めます。仕込みの時間がこれほど早いのは、「笑輪咲」だけでなくJAおきなわ本店の職員食堂も経営しているからです。「笑輪咲」で作られるお弁当は、JA職員にも大人気です。
6時になるとさらに2人が加わって、仕込みが続けられます。「笑輪咲」のオープンは10時。入り口を入ると食券機があり、沖縄のさまざまなメニューが並んでいます。地域に住んでいる方々や、近隣で働いている方々だけでなく、旅行者にも人気の「笑輪咲」はお昼時には満席です。14時の閉店時間までに多くの利用者が訪れます。
2. JAおきなわ食菜館「とよさき菜々色畑」の開業から「笑輪咲」の開店へ
「笑輪咲」が併設される、JAおきなわ食菜館「とよさき菜々色畑」は、豊見城市のJAの農産物直売所(JAファーマーズマーケット)です。豊見城市は、沖縄県下でも有数の野菜産地で、近年ではマンゴーやトマトの産地としても有名となりました。豊見城市で生産されたマンゴー(2000年拠点産地認定)とトマト(2012年拠点産地認定)は、完全空調設備の選果場を通じて出荷されます。

約120名の部会員が丹精込めて生産した豊見城産のトマトは高品質で、特に「ちゅらとまと」や「ちゅらとまとミニ」は絶品の味わいです。豊見城産のトマトが出荷されるのは、11月から5月までです。ぜひ、冬場の豊見城産トマトを味わってみてください。

また、豊見城市は「マンゴーの里」を宣言するほどのマンゴーの大産地で、主にアーウィン種とキーツ種が栽培されています。夏場の盛期には、地域はマンゴーの豊かな香りに包まれ、「とよさき菜々色畑」にも数多くのマンゴーが並びます。
取材した4月末の「とよさき菜々色畑」には、豊富な葉物野菜や沖縄特産の野菜と並んで、特産のパイナップルが並んでいました。沖縄県産のパイナップルは、外国産のパイナップルと比べて、優しい酸味と強い甘み・香りが特徴です。

「とよさき菜々色畑」は、こうした豊見城市の豊かな農産物の直売所として、2008年12月に開業しました。「とよさき菜々色畑」の特徴の一つは、「農村の女性が活躍するお店」をコンセプトとして開設されたことです。開設当時、出荷者である利用者会の会員は女性に限定されていました(現在は男性も会員登録が可能です)。
「とよさき菜々色畑」は沖縄県の玄関口である那覇空港から車でおよそ10分と近く、レンタカーステーションが隣接しています。地元の方々だけではなく、レンタカーステーションを利用する多くの旅行者も訪れることから、「とよさき菜々色畑」の開業と同時に店舗内にラーメン屋・沖縄そば屋・生ジュース屋の3つの飲食店を設け、JA女性部の加工部の女性グループで手を挙げた方々がそれぞれ運営することとなりました。当時の豊見城村が実施した女性の自立を目指した起業セミナーがきっかけとなり、女性たちの飲食店ができたのです。「農村の女性が活躍するお店」という「とよさき菜々色畑」のコンセプトが生かされた取り組みと言えるでしょう。
ところが、開業から1年後にこのうちの一つの店舗が都合によって退店しました。退店によって暗くなってしまったスペースは、利用者にとって、そして飲食店を経営する人々にとっても寂しいものです。そこで3つのスペースを結合して一つの店舗とすることとしました。こうして新たに開業した食堂が「笑輪咲」です。