5. 組合員との接点は「ふれあい担当」
組合員がJAに結集して、組合員の声でJAの方針が策定される背景には、JAきたみらいの「ふれあい担当」という職員が存在しています。
ふれあい担当は、経営支援部に所属する28名の職員です。JAきたみらいの管内は大きく3つのエリアに分かれ、このエリアの中に合計で8つの地区があります。ふれあい担当は、それぞれのエリアに所属して、いずれかの地区を2人1組で担当します。ふれあい担当1人当たり20戸前後の耕種農家を担当しています。
ふれあい担当の業務は多岐にわたっており、大きく「経営相談」「技術相談」「業務連携」に分かれています。このうち、技術相談と業務連携は、同じ経営支援部に設置されている技術開発グループ(主に営農技術に関する専門部署)、振興会の事務局や施設を管理する販売企画部、産地振興や制度対応、企画を行う営農振興部など、専門家である各部署と組合員とをつなぐ役割を果たしています。さらに、農業改良普及センターなど行政機関とのつなぎ役もたいせつな業務です。
業務連携には組合員の意思反映の場である地域運営委員会などに関わる業務から、組合員の冠婚葬祭への対応まで、幅広く位置づけられています。金融共済部の推進など組合員訪問の際には、担当職員と組合員をつなぐ役割も果たしているとのことです。
すなわち、ふれあい担当の業務は、JAの事業や活動と組合員をつなぐハブ機能と言えるでしょう。ハブとは、複数の事柄をつなぐ結節点の機能を表す言葉です。
一般的にJAでは営農指導員という職種があり、営農技術指導や経営指導、さらに組合員との結節点としての機能が期待されています。しかし、JAきたみらいでは、営農指導員という職種ではなく、ふれあい担当です。指導ではなく、組合員との接点となることが期待されているのです。ですから、ふれあい担当の業務は、JAと組合員に関することの全てが対象となるのです。

6. 営農計画の策定支援から始まるふれあい担当の業務
こうした多岐にわたるふれあい担当の業務の中で、たいせつな役割が経営相談です。経営相談の出発点は、営農計画の策定支援です。農業者は12月に翌年度の作付け計画を策定します。これが営農計画です。輪作体系が求められ、また経営規模が大きい農業者は、計画的な作付けが必要となります。
また、北海道のJAには経営管理支援の仕組みとして1年間の資金繰りや農業機械などの投資を計画して管理する「 組合員勘定 =クミカン」と呼ばれる仕組みがあります。営農計画と資金繰りの計画をしっかりと行うことで安定的な経営を可能とする仕組みです。組合員は、クミカンに集積された経営データを参考に営農計画を策定しますが、その際にふれあい担当は1軒ずつ農家をサポートします。
営農計画を策定すると、いよいよ農作業が始まります。2~3月に苗づくりから始まり、4月に入ると玉ねぎ、てん菜、じゃがいも、豆類、春小麦と次々と播種・植え付け作業が始まります。ふれあい担当は、農家を巡回して作業の進捗を確認します。その後、育成時期の6~7月は圃場を巡回して育成状況の確認や病害虫対策などに対応します。
7月には玉ねぎ、麦類、じゃがいもの収穫が始まり、10月まで続きます。組合員が収穫した農産物を運ぶトラックの配車は、入庫・配送計画に基づき販売担当が行います。販売担当からの指示に基づき、配車・集荷進捗状況を見ながら、組合員と集荷期日等を調整し決定しているのがふれあい担当です。ふれあい担当は、全ての畑と作物の状況を頭に入れながら、農家の作業状況を把握して管理することが求められています。このように、ふれあい担当は、組合員の1年間の農業経営に寄り添って、組合員を支えるたいせつな役割を果たしています。
7. 組合員の声から始まるJAの農業振興
JAきたみらいでは、組合員が結集して話し合い、また組合員の声から未来の地域農業のビジョンを描いています。そして、このビジョンをもとに振興方策が策定されていることが分かりました。そして、組合員の声をJAの事業や活動に結びつけるたいせつな役割を担っているのが、ふれあい担当というハブ機能を果たす職員です。
組合員の願いや困りごとを、事業を通じて解決するという点が協同組合の特徴であり、強みと言えるでしょう。そこで重要な役割を果たすのがJAの役職員です。組合員の声に耳を傾け、専門家として解決策を提案するプロフェッショナルが求められています。
こうしたプロフェッショナルの仕事の一つとして、農事組合法人勝山グリーンファームの取り組みを紹介しましょう。農家の高齢化や離農が課題となる中で、JAきたみらいでは地域の複数の農家が協業する仕組みとして協業法人の設立を進めています。その一つが勝山グリーンファームです。13戸の農家の協業組織から始まり、現在9戸の農家で約500haの農地を経営しています。いわゆる集落営農の取り組みですが、若い職員を雇用するなど経営の高度化も進んでいます。畑作地帯では珍しい集落営農を新たに組織化したことも、組合員の声に応えるJAきたみらいだからこその取り組みと言えます。
組合員の声から新しい事業を提案し組み立てる、というJAきたみらいの取り組みが全国のJAに広がることで、地域の農業はより発展するでしょう。そして、その核には、ふれあい担当に示されるようにJA役職員の働きがあります。ぜひ、JAきたみらいの取り組みに学んでいただきたいと思います。
