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食・農・地域の未来とJA

日本の食・農・地域の将来についての有識者メッセージ

料理の楽しさを知ってほしい!
そんな思いでレシピ動画を発信しています

馬場裕之 お笑いタレント

小学生で目覚めた「料理って楽しい!」

 僕が最初に料理に興味を持ったのは小学生の頃です。実験みたいなことが好きな子どもだったので、料理も実験感覚で始めました。子ども時代は、冷蔵庫の食材を自分の好きなようには使えませんでしたから、限りある材料で色々工夫したりアレンジしたりしていくうちに料理にハマっていったんです。
 それに、自分で作ったものを眺めるだけじゃなく、食べられるのもうれしくて。自然と「料理って楽しいな」と思うようになりました。

実験感覚で料理の楽しさに目覚めた少年時代。写真は小学校6年生の頃

 芸人になってからも基本は自炊。若手時代は収入もあまりなかったので、好きなものをたくさん食べたいと思ったら外食するより自分で作ったほうが安上がりですからね。
 あるとき北九州市の実家に帰ったら、母から「ぬか漬けを作るのをやめた」と言われたことがあって。「あの味はもう食べられないんだ」と残念に思ったけれど、それならばと自分でぬか漬けを始めました。白菜の漬物も、東京で売っているものは浅漬けばかりだけれど、僕は発酵して酸っぱくなった古漬けが好きだから、道具を買ってきて漬けてみたりして。そんなとき、テレビのバラエティ番組で明石家さんまさんと共演させていただく機会があり、自分で漬けたぬか漬けを持っていったんです。それがきっかけで料理が仕事につながっていくようになりました。

大好きな料理が、今では仕事に繋がっている

簡単に作れる料理を楽しんでほしい!

 とはいえ、僕がYouTubeチャンネル「ばばっと! 馬場ごはん」で紹介しているレシピはシンプルなものばかり。手に入りやすい食材を使って、工程的にも「特別な調理器具がないと作れない」ということがないようにしています。
 誰でも簡単に作れる、アレンジすればどんどんバージョンアップできるレシピ。実際、動画を見て作ってくれた方から「こんなふうにアレンジしてみました」というメッセージをいただくことも多いので、アレンジのベースとなるようなレシピを意識しています。
 まずは皆さんに料理の楽しさを知ってほしい。だからわかりやすく、伝わりやすく。そんな思いで発信しています。
 もちろん、おいしく作れるレシピであることも大切ですよね。せっかく作るんだったらおいしいほうがいいじゃないですか。自分が食べるにしても嬉しいし、人に食べてもらえば「おいしい」と喜んでもらえるし。でも同じ料理を作っても、毎回同じようなクオリティにはできるけれど、まったく同じものはできない。そこが料理の難しさであり、おもしろさだと思うんです。素材によって味が全然変わるし、調味料によっても違ってきますから。レシピを考えて皆さんに発信している今も、子ども時代に感じたのと変わらず、料理ってホント、実験みたいで楽しいなと思っています。
 僕自身が日々の食生活で心がけているのは、買ってきた食材を使い切ること。もし余りそうだったら、1つの食材で何パターンかの料理を作ったり冷凍するなど、捨てずに済む保存方法を考えたりします。とにかく残さず使って、おいしく食べたい!だって、もったいないですからね。

誰でも簡単においしく作れる、アレンジのベースとなるようなレシピを発信

おいしい料理はおいしい食材から

 僕は仕事柄、ロケなどで日本各地へ行きます。そんなときの楽しみは、やっぱり食。
 テレビ番組で、キャンピングカーに乗って各地の直売所などに行く機会があるときは、その土地ならではの野菜を買って料理をしたりもしています。福岡では「蕾菜つぼみな」というアブラナ科の野菜をぬか漬けにしたらすごくおいしかったし、大分では味噌みそ汁にも焼酎にも「かぼす」を入れて堪能しました。山形の伝統野菜「山形青菜せいさい」はちょっと辛味があっておいしく、漬物にすれば冷凍保存もできる。全国に流通していないものや食べたことのない食材がたくさんあるので、その土地その土地の食に触れるのが一番の楽しみです。
 何より国産の農畜産物って、新鮮で本当においしいですよね。だから、「私たちの国で消費する食べものは、できるだけこの国で生産する」という「国消国産こくしょうこくさん」の考え方には僕も大賛成です。

日本各地を訪れる仕事では、その土地ならではの食材に出会うのが楽しみ

 実は僕、昨年5月から北九州市で畑をやっていて、「コブミカン」という食材を作っているんです。トムヤムクンなどに入っている柑橘かんきつ系の葉なんですけど、日本で売られているのはほとんどが輸入品。でも、僕が東京でやっている飲食店では国産のコブミカンにこだわっているので、いずれは自分の畑で採れたものも使いたいなと思っているんです。とはいえ自分で育ててみると、雪など天候の影響を受けることもあって、改めて農業の大変さを実感しているところです。

(左)(中央)農業の楽しさと大変さを実感しながら、コブミカンを大切に育てている
(右)東京で営む飲食店にて。いずれは自分の畑で採れたコブミカンを使いたい

 以前はバケツで稲を育てて収穫する「バケツ稲」にも挑戦していたんですけど、都会だとスズメに狙われて、全部食べられちゃうんです。小さなバケツでも米を作るのはめちゃくちゃ大変だし、野菜だってプランターで形よく同じサイズのおいしいものを作るのって難しい。やっぱりプロの生産者さんが作ったものはすごいなと思います。
 番組のロケなどで生産者さんやJAグループの役職員の方とお仕事をさせていただく機会も多いのですが、お話ししてみると皆さん熱い思いを持っていらっしゃるのが伝わります。異常気象とか気候変動とかいわれている中でご苦労も多いと思いますが、多くの生産者さんがおいしいお米や野菜、お肉などを作ってくださり、JAグループの役職員さんが生産者さんと僕たち一般消費者を繋いでくださっているのは本当にありがたいことです。おいしい食材がないと、おいしい料理もできませんからね。
 そして、これからもおいしい食材の魅力を存分に生かしたレシピを発信して、たくさんの方に「料理って楽しい!」って感じてほしいなと思います。

北九州で一緒に畑仕事をしてくれる地元の方々と。
地域との繋がりを大切に、これからもさまざまな形で料理の楽しさを発信したい

馬場裕之

馬場裕之 ばば・ひろゆき

1979年、福岡県生まれ。1998年に秋山竜次さん、山本博さんとともにお笑いトリオ・ロバートを結成。2011年、TBS系列「キングオブコント2011」王者となる。料理好き芸人としても知られ、料理番組でその腕前を披露するほか、登録者数125万人超を誇るYouTubeチャンネル「ばばっと!馬場ごはん」で料理動画も公開中。2022年に沖縄・宮古島に飲食店「宮古冷麺」を、2024年には東京・目黒区に「マツミサカバ」をオープン。著書に『馬場ごはんベストレシピ ロバート馬場のばばっと作れて一生うまい!』(Gakken)、『ロバート馬場ちゃんのキッチンmemo いつもの料理が“パっと”おいしくなる魔法』(三才ブックス)など。

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