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本気で農業始めました

第6回 実りの秋に『コシヒカリ』
自然と闘うも感謝忘れず収穫

フリーライター 久米千曲

 米どころの新潟県といえば『コシヒカリ』や『新之助』などの産地として有名です。田上町にある山川仙六農園の後継者・山川敏幸さん(34)は今秋、父の敏昭さん(67)らと、代々受け継いできた米の収穫に汗を流しました。今年は天候の影響で生育・収穫時期が早まった一方で、記録的な猛暑により見た目などで格付けする等級検査の結果が振るいませんでした。自然との闘いがつきものの農業ですが、敏幸さんは実りの秋への感謝を忘れずに作業を進めました。

共助と分業での収穫 天気予報とにらめっこも

『コシヒカリ』の収穫を始めて実質2日目となった9月11日、敏幸さんは実家の農園から車で5分ほどの場所にある田んぼに向かいました。この日は約1haで刈り取りを計画。敏幸さんは、年間を通じて農作業を支えてくれる敏昭さんの友人と共にコンバイン2台をそれぞれ動かして刈り取りました。実家では敏昭さんが初日に収穫し乾燥させた『コシヒカリ』の籾摺もみすりをしたり、粒の大きさをそろえるために一定の網目のふるいで選別したりした後、米袋に詰めます。台風シーズンと重なることもあり連日、天気予報とのにらめっこが続きますが、この日は最高気温が30℃超えを記録、炎天下での作業が続きました。

コンバインを動かし稲刈りをする敏幸さん

袋詰めした米を運ぶ敏昭さん

栽培は「昔ながら」 味を求める消費者多く

 経営の柱でもある米は、8月下旬から始まる飼料用として栽培する『新潟次郎』を皮切りに主食用の『こしいぶき』、もち米の『こがねもち』を収穫します。その後、9月上旬から再び主食用の『コシヒカリ』『新之助』を刈り取りました。
 作付面積が全体(7.8ha)の4割超を占める『コシヒカリ』は、いもち病に強いとして県内に広がる『コシヒカリBL』ではなく従来品種です。栽培する理由の一つとして、敏昭さんは「毎年おいしいと言って長年買い求めてくれるお客さまがいるのです」と語ります。このため収穫した『コシヒカリ』のうち、半分は消費者に直接届けたり、道の駅の売り場で販売したりします。

売り場に並べた新米

等級など厳しい出来秋 経験を糧に未来への一歩を

 今年の米作りは厳しい闘いでした。肥料など生産資材の価格上昇で経費がかさむ。収穫してみると経営の柱となる『コシヒカリ』は猛暑の影響により米の等級で3等級の占める割合が高まるなど厳しい出来秋です。こうした傾向は新潟県内全域で見られました。『こしいぶき』『こがねもち』『新之助』はいずれも1等級だったものの、敏幸さんは「等級の低下が収入に直結するため非常に苦しい秋」と漏らします。
 とはいえ、地域農業の維持へ踏ん張り時でもあります。今春にはハンドルを自動制御し設定した経路を走るシステムを活用した耕運やしろかき、田植えに挑戦するなど新たな経験を重ねました。敏幸さんは「昔と今をつなぐ農業の形を考える機会につなげたい」と前を向きます。

自動操舵そうだシステムを活用し田植えをする敏幸さん

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