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本気で農業始めました

第8回 「囲い野菜」を原点に続く長ネギ
代々の縁を大事に新たな販路も開く

フリーライター 久米千曲

 冬野菜を代表する長ネギの収穫・販売が続いています。新潟県田上町にある山川仙六農園では昨年12月上旬から長ネギの収穫を始めました。得意先に直接届けたり、近くの道の駅で販売しています。雪国の家庭では、秋に収穫した葉物や根菜類などを雪の中で貯蔵する「囲い野菜」を置く習慣があり、長ネギは欠かせない品目です。囲い野菜需要への対応が原点となり続く長ネギ栽培を、後継者の山川敏幸さん(35)が受け継ごうと家族と共に作業に励みます。
 小春日和こはるびよりとなった昨年12月9日、山川仙六農園で今シーズン初めて、長ネギを収穫しました。耐寒性のある太ネギ『東京冬黒一本太』を約2.5aの畑で育てます。収穫した長ネギは自宅に運んでビニールハウスに並べて乾燥させます。乾き具合を見て翌日以降、皮をむいたり葉を切ったりして整えます。いずれも手作業で行われます。

猛暑で苦労、作業控えも ネギも農家も耐える我慢続く

 今シーズンは夏の猛暑に苦労しました。畑の脇に播種はしゅして育てた苗を昨年6月下旬に植えるまでは順調に推移。しかし夏になると最高気温が35℃を超える日が続きました。暑さで弱ったネギにダメージを与えないように畑の作業を控えた日も。敏幸さんは「思うように管理が進まず、ネギも農家も暑さに耐え、我慢の連続でした」と振り返ります。追肥をしたり、軟白部を増やすために土を寄せたりして育て続けました。

秋になっても異例の暑さが続く畑で長ネギの生育状況を確認する敏幸さん

振り売りから続く縁 根強いファンの支え大きく

 販売方法は大きく2種類ありますが、その一つが囲い野菜向けの販売です。「祖父母が鉄道を使って振り売りしていた」(敏幸さん)時代から続く縁を大事に引き継いでいます。新聞紙で包み、ひもで結んだ1束4㎏の長ネギを、注文に応じて届けます。時間を短縮するため、軽トラックで高速道路を走ることもあります。「毎年注文が入るのはありがたい」と話す父・敏昭さん(67)は30年ほど前、市場出荷分を含めて10aで長ネギを栽培していました。しかし少量多品目栽培の家族農業では作業をまかないきれないことから長ネギの取り組みを見直しました。囲い野菜を求める根強いファンの支えがあったからです。

1束4㎏の販売形態に整えた長ネギを手にする敏幸さん

新たな販路「道の駅」 ブランド化で知名度向上へ

 もう一つは「道の駅たがみ」での販売です。同店では2022年度から売り場に並べる長ネギを「がんばるねぎ」と位置付けています。寒さに耐えて育つネギへのエールと感謝を込めて名付け、ネギの出荷者と話し合い、基準も決めました。今年度は基準に満たない「ガンバレねぎ」も加え、ブランド化を図ります。生産資材価格が高値で推移する中、市場価格を踏まえた値付けの基準もありますが、敏幸さんは「例年に比べて収量が少なくても一定の売り上げを確保でき、知名度向上につながるのは大きい」と語ります。
 栽培し続けたい品目の一つに長ネギを挙げる敏幸さん。さらなる継続を目指し、省力化の実現に真正面から向き合う構えです。

道の駅での販売に向け、家族と共に包装形態を確認する敏幸さん㊧

昨年12月に展開した「ガンバレがんばるねぎ祭り」。1月中旬からはフードコートで新たな企画を予定している

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