文字サイズ

海外だより

グローバルな視点で日本農業やJAを見つめるために、全中ワシントン駐在員による現地からのタイムリーな情報を発信します。

日米若手農業者の交流

[March/vol.153]
菅野英志(JA全中 農政部 農政課〈在ワシントン〉)

 2024年1月19日から24日にかけ、アメリカ・ユタ州ソルトレークシティーにおいて、アメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(以下、「AFBF」という)の年次総会が開催された。AFBFは品目横断型のアメリカ最大の農業団体で、約600万人の農業者等の会員を有し、本年次総会には全米から約4,500人の会員等が参加した。

 例年であれば筆者が一人で参加して各種会合の傍聴等を行うところであるが、今回は日米若手農業者の交流の取り組みの一環として、JA全青協を代表して稲村会長と前原副会長に参加いただき、AFBFの若手農業者組織であるヤングファーマーズ・アンド・ランチャーズ(以下、「YF&R」という)の方々との意見交換を行うことができた。かつてもJA全青協とYF&Rの交流機会はあったものの、コロナ禍でそれがいったん途切れていた後、在米大使館の貞包参事官のご協力もあり、2022年より日米若手農業者の交流を再開し、これまで日本側からはJA全青協の理事の方々に参加いただく中で、2022年11月、2023年4月、同年11月にオンラインでの意見交換を行ってきた。

 こうした経緯の中、今回ようやく対面での意見交換を実現することができた。今回の意見交換では、ポリシーブックの作成・活用方法や、経営継承・農地の確保に関する支援措置、モチベーションを維持する方法、農外収入の重要性など、それぞれの関心事項等について率直に質疑応答を行い、両国の若手農業者が抱える共通の課題や、あるいは相違点について理解を深める機会となった。また、今後もこうした交流を続けていくことを確認した。

 今回の意見交換には、AFBFのジッピー・デュバル会長にも参加いただくことができた。デュバル会長からの歓迎あいさつでは、「若者は産業・組織の将来であり、AFBFとしても若手農業者組織の活動を支持し、力を入れている」「YF&Rの活動は、将来のリーダーになるために技能を磨く訓練の機会である」「YF&Rの皆さんには世界の農業者との連携や意見交換を進めてほしい」旨の話があった。実際にAFBFの年次総会では若手農業者が主役になるイベントも多い。各州の代表の若手農業者がプレゼンテーションやディスカッション等で競い合うイベントは多くの傍聴者で会場が埋まる人気イベントであり、それぞれの競技イベントごとに優勝者にはフォード・トラックの新車購入資金として3万5,000ドル(約517万円)、準優勝者にはケースIHの農機具購入資金として2万5,000ドル(約370万円)が贈呈される¹。

 AFBFの代議員によるポリシーブックの議論や農業政策に関する情勢報告などの真面目な会合もありつつ、現地ツアーや大規模な展示会などイベント要素が強いのもアメリカの農業団体の総会の特徴である。本号で紹介した意見交換に参加したYF&Rの女性若手農業者からは、こうした機会に子どもを連れてくることも次世代の育成に重要であるとの話があったが、実際に総会会場は家族連れの参加者も目立ち、和気あいあいとした雰囲気に包まれている。

 農業分野は、気候変動対策など1か国では対応できない課題、あるいは後継者確保対策など共通の課題を抱える中、国境を超えて若手農業者が交流し、理解を深め、知恵を共有し、共に課題を解決していくことは非常に重要な取り組みであり、今回のような機会をさらに多くの若手農業者の方々に提供できるよう本会としても努力していきたい。

1 円換算額は2024年1月25日の日銀外国為替市況中心相場の147.75円/ドルを使用。


2024年1月21日、日米若手農業者の意見交換の参加者による記念撮影。右から在米大使館の貞包参事官、JA全青協の前原副会長、稲村会長、AFBFのデュバル会長、YF&Rのグラハム氏、カウソーン氏、グリソード氏、ルシェ氏、ファイモン氏、サンド氏。(筆者撮影)
記事一覧ページへ戻る