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若者がみつめる食・農

農・食の未来を拓く高校生・大学生の研究

「名古屋コーチン」に並ぶブランド形成を目指す

~愛知県立安城農林高校 エグプロ研修班の挑戦~
JA全中

「全国高校生 農業アクション大賞」について
 
 JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
 農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」を贈ります。

準大賞
愛知県立安城農林高校 エグプロ研修班

 愛知県安城市は「日本のデンマーク」とも呼ばれる農業の先進地として知られます。もう一つお話ししたいのは、同市が位置する愛知県西三河地方の「岡崎おうはん」は、全国に2%しかいない純国産鶏だということです。
 尾張・那古野なごのの「名古屋コーチン」と三河・岡崎の「岡崎おうはん」。戦国時代のファンならば信長と家康をイメージするかもしれませんが、知名度では「名古屋コーチン」の「一強」です。おうはんの名前を広めて「二大ブランド」にすることが、生徒たちの目標です。
 話は少し飛びますが、安城市の特産にイチジクがあります。この剪定せんてい枝が産業廃棄物になり、問題化していました。生徒たちはこれを有効活用できないかと考えました。
 これには伏線があります。安城農林高では2018年に、竹炭をおうはんの餌に加えることで、卵の低脂質・低コレステロール化に成功した実績がありました。この技術を応用し、裁断した枝をもみ殻に混ぜてイチジク炭にし、餌に添加しました。こうして産まれたのが「イチジク炭卵」です。100gに含まれるたんぱく質は13.4g、脂質は9.1gです。標準的な卵はそれぞれ12.3ℊ、10.3ℊですので、「高たんぱく・低脂質」であることが実証されました。
 こうした取り組みが地域に浸透し、「『健康卵』としての信頼を獲得したい」という声が岡崎市から届きます。このプロジェクトがSDGsに結び付く可能性が生まれました。2020年8月、安城農林高は岡崎市と官学連携協定を締結。岡崎おうはんを全国PRする態勢が整いました。
 「消費者の共感を得られるストーリー」と「持続可能な養鶏モデル」――。この2つが、活動の軸です。炭卵の成分分析は東京農業大が全面的にサポート。幅広い世代に喜ばれ、お土産にも最適な商品として、「健康卵」を加工した「岡崎おうはんプリン」を開発しました。2021年に開催された中部地方最大のSDGsイベント「SDGs AICHI EXPO 2021」に出展、プリンの人気とも相まって、出展1位を獲得。同年の第8回「ディスカバー農山漁村むらの宝」(農水省および内閣官房主催)では、同市と同校の取り組みが全国の選定地区に認定され、奨励賞も獲得しました。知名度向上に向け、確かな手応えを感じています。
「『岡崎おうはん』を通じて、三河が一体になった。そのことがうれしい」。生徒らは喜びを語りました。

竹炭を混ぜた餌を「岡崎おうはん」に与える

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