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若者がみつめる食・農

農・食の未来を拓く高校生・大学生の研究

アグリカルチャーコンペティション 学術的研究分野 最優秀賞受賞 小売店における有機野菜の販売に関する研究
~有機食品の購買行動に関わる価値観を意識した店頭コミュニケーション~

~大阪成蹊大学経営学部 フードコミュニケーション研究室(伴ゼミ)
JA全中

アグリカルチャーコンペティション」について
 
「アグリカルチャーコンペティション」は大学生が「食」「農」「地域」「JA」等のテーマについて考え、発表する機会を創出することを目的とするコンペティション大会で、チームでも個人でも参加が可能です。平成29年度からスタートし、令和4年度(第6回)は14大学から50チームの参加がありました。
 JA全中は「アグリカルチャーコンペティション」準備委員会が主催する本事業に協賛し、「食」「農」「地域」「JA」等に関心を持つ大学生たちの取り組みを応援します。

研究の背景と目的

 このたびは、アグリカルチャーコンペティション第6回の学術的研究分野で最優秀賞をいただき、お礼申し上げます。表彰いただいた研究「小売店における有機野菜の販売に関する研究~有機食品の購買行動に関わる価値観を意識した店頭コミュニケーション~」は、当ゼミナールの学生が卒業研究テーマの一環として取り組んでいます。有機農産物を普及させることによって環境保全につなげることをテーマとしたものです。
 日本では2050年までに、オーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取り組み面積の割合を25%(100万ha)に拡大することを目標に掲げています。しかし、世界の国々と比べると、日本の状況は、有機食品市場も有機農業の取り組み面積も到底及びません。このような背景の中、学生たちが注目したのは、近年、有機JAS認証を受けている農地の面積が拡大傾向にあったことです。
「平成29年度有機食品マーケットに関する調査」によると消費者の17.5%が、週に1回以上有機食品を利用(購入や外食)し、約9割が有機やオーガニックという言葉を知っているものの、表示に関する規制の認知度は低く、有機農産物に対するイメージは「安全である」「価格が高い」「健康によい」が主でしたが、「環境に負荷をかけていない」との回答が6割もあることが分かりました。
 そこで有機食品市場を少しでも拡大するためには、有機JASマークをもっとお客さまに知っていただき、国産標準品(慣行栽培品全体)より高価格帯で売られている有機栽培品を、高くても買いたいと思っていただけるようにするため青果売り場でのPOP(Point Of Purchase:購買時点)広告を中心に、さまざまな工夫を試みました。この取り組みにより、消費者との接点である小売店での有機野菜の認知度を上げ、消費者の購買行動を変えていくことをめざしました。

最優秀賞を受賞したチーム「#おしゃアグ」(左から小嶋奈穂さん 渡邉結衣さん)

販売実験で明らかにできたこと

 大阪府の郊外型百貨店にご協力いただき有機野菜(有機JAS)コーナーにて3回の販売実験を行いました。2021年の夏期と冬期の販売実験では、自然環境を保全する視点と有機食品の購買行動との関連性がある価値観を伝える手書きPOP広告を作成し、POP広告の掲示のみを行いましたが、有機野菜の売上個数と金額においては、国産標準品の価格動向に伴う季節による違いはあるものの、POP広告による効果は認められませんでした。
 2022年夏期の販売実験では、一部の野菜の説明POPを作成し、POP広告の掲示と同時に学生による対面販売を行ったところ、有機野菜の売上個数と金額が上がり販売促進効果が認められました。しかし、非対面販売でのPOP広告による効果は認められませんでした。

売り場の様子

今後に向けて

 このように学生による対面販売を行ったことによって有機野菜の売上が上がり、学生がお客さまと会話することによって有機野菜を知っていただける良い機会となりました。今後も、有機野菜を買っていただくことが温暖化ガス削減などの環境保全につながることを広く啓発していくために、お客さまへの情報提供のさらなる工夫に取り組んでいきます。

大阪成蹊大学経営学部 フードコミュニケーション研究室(伴ゼミ)

現在、当研究室には3・4年生の計20名の学生が所属しています。食ビジネスを通じて社会に喜びと豊かさを実現するため、日本の農業が抱える問題を学び、多様なライフスタイルを支えてきたミールソリューションのように、多様なニーズに対応できるようなさまざまな課題に取り組んでいます。

ゼミの風景

令和4年度 伴ゼミナールの所属学生

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