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若者がみつめる食・農

農・食の未来を拓く高校生・大学生の研究

アグリカルチャーコンペティション 学術的研究分野 優秀賞受賞 消費者視点から見る、家庭系フードロスの研究

~日本大学商学部 黒澤ゼミ~
JA全中

アグリカルチャーコンペティション」について
 
「アグリカルチャーコンペティション」は大学生が「食」「農」「地域」「JA」等のテーマについて考え、発表する機会を創出することを目的とするコンペティション大会で、チームでも個人でも参加が可能です。平成29年度からスタートし、令和4年度(第6回)は14大学から50チームの参加がありました。
 JA全中は「アグリカルチャーコンペティション」準備委員会が主催する本事業に協賛し、「食」「農」「地域」「JA」等に関心を持つ大学生たちの取り組みを応援します。

研究の背景と目的

 このたびは、アグリカルチャーコンペティション第6回の学術的研究分野で優秀賞をいただき、お礼申し上げます。
 私たちは食について調査を進める中でフードロスが日本に深刻な影響を与えていると知り、フードロスに関心を持ちました。その中でも食べ残しが家庭系フードロスの45%を占めていることから、家庭系フードロスに着眼し、食べ残しに関しての調査を行いました。
 また、その発生要因を衝動買いに絞り、食べ残しの根本的な発生要因を明らかにしようと考えました。

アンケート調査とインタビューから見えたこと

 最初に、衝動買いの発生要因を10個の変数に分け、幅広い年代を対象にしたアンケートを実施し、重回帰分析と単純傾斜検定による交互作用効果の分析を行いました。
 重回帰分析では、安売りへの関心は衝動買いを防ぐ要因になっているという結果を得ることができました。しかし、単純傾斜検定による交互作用効果の分析を行ったところ、先ほどの分析に、「忙しさ・食料品を他者からよくもらう・珍しい食品を扱う店舗・食品内容量の多さ」といった要因が加わることによって衝動買いを誘発するという重回帰分析の直接効果とは逆の結果となることが分かりました。
 次に「なぜ4つの要因が衝動買いを誘発するのか」に疑問を感じたため、調査を行いました。調査の方法として、前回アンケートの回答者にインタビューを行い、その結果を定性分析手法のSCATにより分析しました。
 安売りに関してのSCAT分析では、チラシや広告から情報を得ることが多く、チラシを見ることに楽しさを感じていることが分かりました。また忙しさに関してのSCAT分析では、忙しさを感じた際は割引シールが貼られたものを購入し、安さより手間を惜しむことが分かりました。
 これらのことから忙しさを感じた際に購買の判断基準がチラシから割引シールに変化し、安さへの優先度が手間のかからないものに変化したため衝動買いに結び付いたと考えました。
 さらに、それぞれの結果に共通してチラシ等の情報利用の低下や安さへの関心の低下が見られました。結果として4つの要因が安さへの関心の低下や情報媒体の利用減少を引き起こす性質を持つため、衝動買いを誘発したと考察しました。
 今まで一般的に、安売りへの関心やそれを促すチラシや広告は無駄遣いや、つられた購買を促す要因とされていました。しかし調査の結果、安売りへの関心は衝動買いを抑制し計画的購買を促進していました。そのため、チラシ等の情報媒体は買いすぎを抑制する重要な要因であったということが分かりました。

調査結果を分析中

今後の展望として

 近年、デジタル化の促進により店内のPOP広告や広告が徐々に少なくなるとともに、それらが無駄遣いや衝動買いを促す要因と考えられてきました。しかし、私たちの発表に基づいた提案の通り、POP等の情報媒体は、買いすぎを抑制する重要な要因であることが分かりました。私たちは、この結果をさまざまな食料品店と共有し、検討することで、私たちの研究をフードロス削減に貢献するためにも活動していきたいと考えています。

日本大学商学部 黒澤ゼミ

 黒澤ゼミは「イノベーションを生み出す組織マネジメント」というテーマで活動しているため、イノベーション、組織マネジメント、経営戦略論の理論やケースを中心に学んでいます。その他にもビジネスプランの作成、グループ研究による論文執筆など精力的に活動しています。
 アグリカルチャーコンペティションへは有志による参加ですが、毎年参加希望のチームが立ち上がっています。

 今回参加したメンバー
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