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若者がみつめる食・農

農・食の未来を拓く高校生・大学生の研究

第5回(2021年度)全国高校生 農業アクション大賞 準大賞受賞
ふるさとを守るため、水を制す

~熊本県立南稜高 球磨くまモンの水土林みどりんProject☆~
JA全中

「全国高校生 農業アクション大賞」について
 
 JA全中は毎日新聞社と連携し、農業高校(農業系学科があるなどの関連高校を含む)の生徒たちがグループとなって取り組む「農」や「食」に関するプロジェクトや課題研究を「全国高校生 農業アクション大賞」として支援・顕彰しています。
 農家の人たちなど地域と連携して実践する3か年の計画を募集し、毎年度15グループを認定。優れた実績を残したグループには、3年目に「大賞」や「準大賞」を贈ります。

研究の背景と目的

 2020年7月4日未明、日本三大急流の一つ、熊本県の球磨川流域を豪雨が襲いました。24時間の雨量は7月の平均雨量に相当し、同県人吉市の総合防災マップが想定する雨量を突破。流域だけで約50人が亡くなりました。災害に強い森林造りや、水田の持つ治水機能の重要性が改めて浮き彫りになりました。
 プロジェクトの目標は3つです。▽人吉・球磨地域にクヌギの苗6,000本を植栽すること▽水田の貯水機能を使った「田んぼダム」により、地域で270haの貯水面積を目指すこと▽災害に強いコミュニティーを築き、災害時の意識を高めること――。
 クヌギは落ち葉による地表被覆効果が高く、水害抑止に効果があります。ただ、生徒の努力による植栽だけでは限界があります。将来を担う地元の児童らに森林の大切さに気づき興味を持ってもらうため、ドングリの種まき教室を開催しました。発芽したドングリの苗を高校の圃場ほじょうで数年かけて育て、その過程を児童らに見続けてもらう苗木オーナー制度も作りました。
 田んぼダムは、「せき板」を差し込むことで水田の排水量を調整する仕組みです。県農林水産部や約10市町村、土地改良区との協力を得て、流域の農家に約4,300枚を配布しました。熊本県のキャラクター「くまモン」を招いた中学生との交流会などでこの取り組みをアピール。人吉・球磨地域の計約270haの水田で始まりました。実際に大学や企業と共同で行った雨庭実験では、1時間で4tの貯水に成功しました。2022年9月に襲来した台風の際は、田んぼダムに据えた水位センサーが流量抑制に効果をもたらしたことを実証しました。取り組みに協力してもらった456世帯へのアンケートでは、約7割がせき板をつけたと回答しています。同校の雨庭あめにわは、田んぼダムの研究者や公務員らを対象にした「緑の流域治水スタディツアー」の見学地になりました。生徒らは「ふるさとを守ろうという地域の皆さんの思いは一つです」と話しています。

圃場に水位センサーを設置する
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