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地域の元気を生み出すJA

第29回JA全国大会決議をふまえた全国各地の創意工夫ある取り組み

合格祈願のお守り作りに学ぶチームワークの要点とは

JA会津よつば(福島県)の取り組み
藤井晶啓 一般社団法人日本協同組合連携機構(JCA)常務理事 

 JAグループは、一昨年開催の第29回JA全国大会において「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」を決議し、令和5年はその実践2年目となります。食と農の未来、国消国産運動の推進、地域の元気づくり、農福連携など、消費者の皆さまにも身近に感じられるテーマについて、全国各地のJAの取り組みを紹介します。

<福島県:JA会津よつば>
 JA会津よつばは、福島県の西側に位置する会津地方2市、11町、4村を管内とするJAで、職員数は1,070人。本店2か所(金融、経済)、支店38か所、営農経済センター23か所、さらに子会社、関連法人を有します(令和3年度末現在)。
 管内の会津美里町に事業所がある高田支店、永井野支店、本郷支店、新鶴支店、美里営農経済センターの職員は、同町の中学3年生に対して、合格祈願のお守りを手作りし、贈呈する活動を12年間、続けています。

はじめに

「和をもって貴しとす」を美徳としてきた日本人ですが、協同組合であるJAにおいても実際のチーム運営が苦労の連続である点では、他の株式会社と変わりません。
 3年間に及んだコロナ禍の中でJAの現場で組合員と直接つながり、共に協同で取り組んできたJAの支店を核に行う協同活動(支店協同活動、地域貢献活動とも言う)は自粛せざるを得ませんでした。そうでなくとも、JAの現場は慢性的な人手不足の状態にあり、どこの部署もてんてこ舞いです。
 福島県にあるJA会津よつばでは「中学3年生に贈るお守り作り」という、子どもたちの未来にエールを送る取り組みを行っています。業務多忙の中でどうやってお守り作りにチームワークで取り組んでいるのか、考えていきます。

今年も心のこもったお守りが完成した

最初は一部の職員だけでスタート

 受験を控えた中学3年生たちに手作りのお守りを渡そうという取り組みは、12年前の平成23年に始まりました。当初は、高田支店の金融課で一部の職員によるものでしたが高田支店全体へ、さらに、同じ会津美里町をエリアとする支店と営農経済センターの職員の合同の取り組みに拡大し、現在に至っています。
 この取り組みについて、令和4年度の統括リーダーを担当された高田支店(当時)の坂内ばんない一仁さんとその上司である支店長の田尻昭博さんに話を伺いました(なお、坂内さんは活動当時は係長で、その後、令和5年3月に永井野支店の支店長に着任)。
「お守り作りは、受験生にお守りを配ったら喜ばれるのではないか、という純粋な思いから始まったと聞いています」と坂内さんは話します。

田尻支店長(左)と坂内支店長(右)

コロナ禍でも学校からの要望が

 お守り作りのスケジュールは、1月に材料を確保し、作り方を共有する説明会を開催。2月初旬には必要な数のお守りを完成させ、おはら祈祷きとうを受けた上で、管内の3つの公立中学校(高田中学校、本郷中学校、新鶴中学校)に贈呈します。
 統括リーダーのもとには4つのグループがあり、それぞれにリーダーがいます。高田支店や永井野支店、美里営農経済センターでは支店力強化として壁新聞作りに取り組んでいて、この壁新聞を発行する当番として各グループが編成されていますが、このグループ編成がお守り作りに活用されています。
 また、贈呈先である中学校との連絡・調整は支店長の役割になります。
 受験生にとっては大事な時期なので、コロナ禍で他者との接触を危惧する声もある中「今年はどうしましょうか?」と学校側に確認すると、校長先生からは逆に「作っていただけるんですか? ぜひ、お願いします」ということでした。
 参加は、高田支店が22人ほど、永井野支店で4人、美里営農経済センターから14人ほど、さらに、本郷支店と新鶴支店もそれぞれ10人ほどが加わり、合計約60人と、職場のほぼ大部分の方が参加しています。この体制で令和4年度は196個のお守りを用意しました。

手間のかかる作業をみんなでやり遂げる

 職員によるお手製とはいえ、作り方はかなり凝っています。ひもは「二重叶にじゅうかのう結び」。ひもの表側が「口」、裏側が「十」という漢字を表し、合わせると「叶」となり、願いがかなう縁起の良い結び方です。
 和紙に「合格祈願」の文字を入れてお守りの形に折り、ラミネート加工した上で、カラフルな小鈴と共に二重叶結びでお守りにわえる。また、縁起担ぎのキットカットとあわせて干支えとのイラストを入れた合格祈願のシール(小さくJAの名を記載)を貼ったビニール袋にお守りをまとめます。
 かなり、手間のかかる作業の連続です。

 約60人での作業ですから、単純計算では1人当たり3個になりますが、実際はそういうわけにはいきません。「二重叶結びは、手先の器用さと経験が問われるので、ちゃんと結べる人は10人程度になります。それ以外の方には折り紙を担当してもらいます。1月の説明会では作り方を説明するとともに、実際に折る作業はほとんどその場で終わらせます。ひもは時間がかかりますが、完成品をまとめる最終作業は作業負荷が少ないので少人数で可能です。そのときも協力してくれる方が6人ほどいますし、ラミネート加工が上手な方が支店にいたので助かりました」と坂内さんは話します。

合格祈願の祈祷をする 写真提供:JA会津よつば

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